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2006.12.28.Up Dated.
異色の決算発表


 JREITでは10月決算の銘柄の数が最も多く、12月には8銘柄の決算発表がありましたが、これらの決算発表の中で、クリード・オフィス投資法人の決算情報を見て驚きました。
この銘柄では、保有物件の個別収支を開示しておらず、期末稼働率と年間賃料収入のみを開示しています。 保有物件の個別収支については、過去にもテナントの同意を得られない等の理由で開示されないケースはありますが、保有全物件について開示しないというケースはJREITでは初めての例です。
クリード・オフィス投資法人以外の銘柄は、シングルテナントで賃料収入の開示同意が得られないケースでも賃貸損益やNOIだけは開示していますが、これは賃貸損益等の情報は投資家にとって知り得る権利の一つだという考え方からだと思います。
又、JREITの仕組みを考えれば、投資家に対しては最大限の情報を提供する事は投資法人及び資産運用会社へ課せられた信義則だとも言えます。
勿論、これらの事は、先発銘柄の決算発表や情報開示を参考にしていれば、後発銘柄であるクリード・オフィス投資法人も充分に承知しているはずですから、敢えて他の39銘柄と異なる情報開示を行なった事に大きな疑問が残ります。
投資の視点でみれば、情報を開示しないのはマイナス要素と判断されますから、自己の銘柄にとって不利益になる事を敢えて行った事で投資家の利益を損なう形にもなります。
更に、クリード・オフィス投資法人の株価は上場時の公募価格割れを続けていましたから、普通に考えれば、投資家の為に出来るだけ市場評価を得られるような努力をするはずですので、今回の異例な決算発表はJREITの常識から見ても合点が行きません。
まさか、クリード・オフィス投資法人の執行役員が私募ファンドとJREITを同一視しているとは思いたくはありませんが、今回の決算発表を見るとこのような不信感も抱きます。
又、私のように投資情報として分析している立場から見ると、クリード・オフィス投資法人も上場時の目論見書では過年度の賃貸状況として個別収支を発表していましたから、これと比較すると投資法人取得後の決算数字とはかなりの相異が生じたのではないかとの勘繰りもしてしまいます。
何れにしても、今回のクリード・オフィス投資法人の決算は投資家の不信を増幅すると伴に、JREIT銘柄としては常識を欠いているとも言えます。
本来であれば、敢えてこのような措置を取った理由を開示する等して、投資家及び市場へきちんと説明すべきですが、それすらも行ないませんので、市場ガバナンスの働く余地がありません。
この状態を上場時の引受主幹事証券会社(大和証券SMBCとモルガン・スタンレー証券東京支店)がどのように見ているかは分かりませんが、少なくとも公募価格割れをしていた銘柄の投資口を売った責任として何らかのアピールも欲しいところです。
今回のケースを考察すると、単に決算発表情報の問題というよりは、クリード・オフィス投資法人と資産運用会社であるクリード・リート・アドバイザーズの体質の問題だとも思われますので、投資家は今後とも充分なる注意力を以ってこの銘柄を見ていく必要がありそうです。
又、JREIT市場の発展を考えれば、今後も同様なケースを生まないために、監督官庁の行動も期待したい所です。

 
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