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2007. 6. 8.Up Dated.
J-REITの市場取引の傾向


 東証が発表する投資部門別売買状況のデータから過去1年間の市場での主要投資家の取引単価(売買金額/売買口数)の推移を調べて見ると次のようになっています。


グラフを見ると分かるように、市場全体の平均取引単価(黒色実線グラフ)と比べると、証券会社自己取引、銀行の取引は平均を上回り、外国法人が平均よりやや上か近似という状態で推移しています。
一方、個人投資家は常に平均単価を下回っています。
投資の取引単価は平均値と言うよりは、中央値を表していると考えられますので、個人は比較的株価の低い銘柄を中心にした投資をしていると思われます。
これは、法人などに比べると投資の絶対金額の低い個人では、株価が高くなっている銘柄を避けて、中位の株価を付けている銘柄を選んでいると考えられのと、今後の株価上昇によるキャピタルゲインも狙っているものと思われます。
また、総じて中位株価の銘柄の予想配当利回りが高いことも個人の投資動機になっていると言えます。
配当金の絶対額が多く、保有資産の質が優れた銘柄は軒並み株価が上昇していて、 既に150万円/口以上にもなっていますので、個人から見ると投資分散を図るために中位株価の2銘柄を買うという選択になっているのかもしれません。

個人投資家のこのような選択もあながち否定は出来ませんが、中位株価の銘柄はそれなりの理由があってこの位置に留まっている訳ですので、投資銘柄の選定がその他の投資家に比べてより重要になります。
新興銘柄の中には、一時株価が低迷していた状態から上昇に転じた銘柄もありますから、これらを買っていた投資家はキャピタルゲインも得られた訳ですが、JREIT投資ではやはり長期の視点で投資銘柄を吟味することが必要です。
特に、最近の外部成長を見ると、概して、高株価銘柄は慎重な物件取得姿勢を堅持していますが、中低位株価の銘柄の一部には高値買いも辞さないという取得も目に付きます。
現在のように不動産価格が上昇している局面では、低い収益利回りで物件を取得すると、長期的なパフォーマンスを落とすことに繋がりかねません。
また、投資家から見れば、不動産価格高騰時に低い利回りで物件を取得し、その上増資をされてはマイナス面が大きくなります。
仮に、今後も不動産価格が上がると想定しても、保有不動産の価値上昇は投資家にとって必ずしも実現する利益ではありませんから、配当金の上昇余地が少なくなる方が問題です。
従って、中位株価の銘柄を見る際には、外部成長の仕方もチェックポイントになります。
凡庸な不動産を不動産価格の高騰を理由に高値買いしているような銘柄は、長期の視点で見れば大いに問題がありますし、投資家の将来の不利益に繋がる可能性もありますので、慎重に見極めて欲しいと思います。
 
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