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2008. 4.25.Up Dated.
ニューシティ・レジデンス投資法人の増資

 4月22日にニューシティ・レジデンス投資法人(NCR)から第3者割当増資が発表されました。
JREIT投資法人の第3者割当増資は過去5銘柄で5回行われましたが、今回のNCRのそれは、過去の増資と異なった意味を持っていると考えられます。
過去の第3者割当増資は、オリジネーターの交代(イー・アセット投資法人、フロンティア不動産投資法人の例)やスポンサー企業として参画した上での物件供給(クレッシェンド投資法人、LCP投資法人の例)のための増資だったと言えます。 ビ・ライフ投資法人(シンガポールの不動産企業であるキャピタランド・グループへの第3者割当増資)の例は、アジア圏での不動産投資の戦略的な意味合いを感じとれるものでした。

一方、今回のNCRの例は、割当先がフィディリティ投信の運用するファンドですので、過去の例とは異なり純投資だと考えられます。
フィディリティは長期投資姿勢を持った運用方針が主流ですので、恐らく今回の投資も長期のスタンスでの判断によるものだと考えられます。引受額は285,579円/口×18,000口で、約51億円となりますので、フィディリティとしては小口投資なのかも知れません。
NCRの純資産価額は、537,859円/口(平成20年2月期)ですから、フィディリティは純資産価額の53%で投資口を買えましたので、見方によってはノン・リコースローンより安全だとも言えなくはありません。
また、次期予想配当率は約7%(年換算)ですが、発表された次期予想配当金10,050円/口とNCRとしては過去最低の金額ですから、インカム投資としてもかなり魅力的です。
このように考えると、フィディリティの今回の増資引受けは純投資として充分算盤に合うものだと言えます。
今のJREIT市場は、信用収縮の影響もあって合理的範囲を超えた株価になっているという見方に立てば、そこには投資チャンスが存在します。それを素直に実行したのがフィディリティだとも言えなくはありません。

一方、NCRの既存投資家は、増資による希薄化によって次期予想配当金が下がりましたので面白くはありません。しかし、このまま推移すれば、更に株価が下がる可能性もあり、銘柄自体の存続も危ぶまれますので、マイナス方向を少なくしてくれたという事で我慢する事になりそうです。
更には、フィディリティと同じ長期投資姿勢で見れば、今回の増資と今後の展開によっては株価が多少は戻す可能性もありますし、現在世界的に生じている信用収縮が収まればまともな株価まで上昇する可能性もありますので、当面生き残ることが出来れば将来の果実も期待され、必ずしも一方的に悪い訳ではありません。

現在のJREIT市場を見ると、国内大口投資家は勝ち馬に乗る投資しかしませんし、個人投資家は株価推移を見ての投資というスタンスしかありません。
それに比べると、フィディリティは銘柄の選別を行い、リスクを負って将来のリターンを得ようとしていますので、投資としてはこちらが本道です。
元々JREITのような導管体の仕組みは、投資家もそれなりの動きをする事で自らの投資利益を確保するという考え方も必要ですから、観客として見るのではなくサポーターとして行動するというのがJREIT投資の基本だと言えるのです。
 
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