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2008.11.28.Up Dated.
不動産価格の動向

 分譲マンション市場の不振と、オフィスビル賃料の下落傾向及び稼働率低下によって、不動産市場の今後の動向に関心が集まっています。
これから不動産価格はどうなるのか? オフィスビル市場は? これらの見通しを聞きたいという声が高くなっています。
また不動産業界でも2009年も厳しい状況が続くという見方が大勢ですし、今のところ悲観的な見通ししかありません。
然しながら、詳細に見ると、今の状況は過去の変動とは様相が異なっていますから、単に経験則だけで判断するのは適切ではなさそうです。

不動産が過去と異なる最たる点は、エクイティ市場との連動性ですが、それも従来のようにマンションの販売状況に影響を与えるというだけでなく、不動産価格そのものを動かしつつあるという点です。
例えば、オフィスビルのキャップレートを考える場合、長期金利とのスプレッドも意識されますが、今はREITに対する要求利回りの方の関係が深そうです。
REITの投資口価格は日々の変動が大きくなっていて、市場が要求する利回りを掴みにくくなってはいますが、オフィスビル銘柄の代表銘柄である日本ビルファンド投資法人とジャパンリアルエステイト投資法人の予想配当利回りを見ると、5.3%〜5.5%前後で動いています。
この2銘柄には、特に懸念される材料もないことから、この利回りが比較的優良な不動産に対して現時点で投資市場が要求する利回りだと考えられなくもありません。

そこで、この利回りから不動産価格を推測すると次のような見方も出来ます。
LTV40%、調達金利1.5%(借入期間5年)という前提で計算すると、必要な不動産利回りは約3.9%となりますが、REITの利回りはNOIではなくFFOに対しての利回りだと考えれば、この数値をNOI換算しなくてはなりません。
そこで、REITのFFOとNOIの比率を調べてみると、売却を行った期を除くと、平均で約0.82になりますから、この数値で除すると約4.75%になります。
この見方では、エクイティ市場が求める利回りを得るには、不動産NOI利回りは4.75%が必要ということになります。
そして、日本ビルファンドやジャパンリアルの保有不動産を、現時点の不動産市場から調達すると4.35%程度になるとすれば(現時点の想定実勢価格)、エクイティ市場の求める利回りを実現するには約8%価格が下落する必要があります。

勿論、この計算にはいくつかの前提と変数がありますので、単純にオフィスビルが8%下落するという結論にはなりませんが、エクイティ市場が求める投資利回りを不動産投資利回りに置き換えて、不動産価格が形成されるようになる時代が来るかも知れません。
従来、不動産価格には明確な根拠がありませんでしたから、エクイティ市場との関連で動くようになれば、不動産価格に透明性と一定の合理性が付与されるようになりますから、こちらの方が良いのではないかとも考えます。

 
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