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2009.12.18.Up Dated.
REITのポートフォリオデータと期末価格の考え方

 
セクター 投資法人名 (a)期末価格比NOI利回り 乖離率
(1-a/b)
(b)取得価格比NOI利回り
オフィスビル専門銘柄 日本ビルファンド 5.07% 7.98%
5.51%
ジャパンリアル 5.06% 5.95%
5.38%
商業施設専門銘柄 日本リテール 5.49% 3.00%
5.66%
フロンティア 5.52% 9.80%
6.12%
レジデンス専門銘柄 日本レジデンシャル 4.51% -0.22%
4.50%
プロクペクト 5.18% -4.23%
4.97%


上の表は、REITのセクター別に2つの投資法人を抽出して、過去の決算期のポートフォリオNOI利回りデータの平均値を取得価格比と期末価格(不動産鑑定価格)比で表示したものです。別の言い方をすれば、各決算期のNOI(建物減価償却費控除前賃貸利益)を分子にして、その期の取得価格合計額と期末価格合計額を分母にして算出した利回りです。

従って、期末価格比NOI利回り<取得価格比NOI利回りであれば、所謂、仮想含み益があり、逆であれば含み損という事も言えます。
仮想と表現したのは、取得価格は実際に不動産市場から調達した価格ですが、期末価格は不動産鑑定価格なので、飽くまでも不動産鑑定士が独自に算出した価格という前提がある為です。
早合点しない為に敢えて説明しますが、会計上はこの期末価格が重視されていますが、この価格は時価(不動産市場価格)ではなく、又、その実現性は何ら保証されていないという点を理解しておいて下さい。
それでも会計上重視されているので、不動産鑑定価格が独り歩きして、あたかも期末価格がその時点の不動産市場価格のように捉えられている面があります。
従って、取得価格に対して含み益のあると考えられる投資法人の投資口価格と含み損になっている投資法人の投資口価格には大きな格差が生じています。

元々前提が曖昧な価格に対しての含み損益ですから、これをストレートに投資判断に使うのは拙速なのですが、他に参考となる指標が見つけられないという事によって投資市場で独り歩きしている感があります。
投資法人によっては、期末価格:取得価格での含み損の解消策を求められたりもしていますが、果たしてこれが投資法人及び資産運用会社の義務なのかは疑問です。
勿論、期末価格算定は投資法人の費用を以って算出している訳ですから、無視するのも問題です。

ではどのように考えれば良いのかですが、私はこれは国土交通省が投資家に説明すべきだと思っています。
元々期末価格を半年毎に算出することをREITに義務付けたのは旧国土庁の要望であったと仄聞していますので、これが事実であれば国土交通省が答えるべきなのです。 投資家が抱く素朴な疑問でもある「期末価格を投資家がどのように利用すべき」かは、国土交通省が答えるのが筋ではないかと考えます。

 
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