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2010.12.10.Up Dated.
PBRについて

 PBR=株価純資産倍率=株価÷(純資産÷発行済株式数)
この数値は株式投資で使われ、PBRが1倍を超えていれば市場評価が高く、逆に1倍以下になっていれば評価が低いと考えられます。そして、この倍率が低くなり過ぎると、株価反転(調整)期待から買いという考え方が台頭します。

では、このような株式投資の考え方でREITを見るとどうなるでしょうか。
私は、REITの指標として、PBRではなく、投資口価格と投資口簿価との比率を利用していますが、投資口簿価=出資総額÷発行済投資口数ですから、PBRよりは狭義の純資産になります。
この投資口簿価比率でREITを比較すると、
直近投資口価格が100%超の銘柄・・・10銘柄
直近投資口価格が90%台の銘柄・・・・6銘柄
直近投資口価格が80%台の銘柄・・・・4銘柄
直近投資口価格が70%台の銘柄・・・・2銘柄
直近投資口価格が70%以下の銘柄・・・13銘柄
となり、最も低い銘柄は33%程度まで落ちています。
株式投資の見方では、投資口簿価比率70%以下の銘柄に価格反転の期待を持つと思いますが、REITではこのような見方は成立しません。

<REITの見方>
REITが投資口簿価比率を低くしてしまうと、まともな増資は出来なくなります。
仮に無理して低い増資価格で増資を敢行すると、1口当たりの利益(配当金)の希薄化が進行してしまい、将来の回復が不可能になります。
また、投資口簿価比率が低いと、金融機関に増資不能と見做されて、リファイナンスが難しくなったり借入利率が大きく上昇したりして、配当金を大きく減じてしまいます。
即ち、REITでの投資口簿価比率の低さは、成長を止めてしまうことと、利益の減少をもたらすという負の回転に入っていることを示しています。
従って、株式投資のように投資口反転期待は持てません。
個人投資家の中には、株式投資の見方で、投資口価格が低く配当率が高くなっている銘柄を物色する動きもありますが、これはREITでは通用しません。
また、株式投資は株式の売買益で投資利益を捻出しますが、REIT投資では、債券投資のように配当利回りが投資判断の基準になります。
日銀の資産取得に信用格付けAA以上という基準が適用されるのも、債券投資と同じ見方でREIT投資を行うという考え方に他なりません。

このようにREIT投資を行う場合は、株式投資の見方や考え方では不具合が生じる事も多く、それがまたREIT投資を難しいと考えてしまう事に繋がっています。
逆に、シンプルにREIT投資独自の考え方を持てば、株式投資よりは分かり易いですし、リスクも限定的だというのが本質ですので、個人投資家の方は少し考え方を修正してREIT投資を行う事をお勧めします。

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