コラムトップ
2011. 2.25.Up Dated.
増資ラッシュ

 今年に入って立て続けに5件の増資がありました。 昨年の増資実績が10件(第3者割当増資を含む)でしたから、公募増資で昨年実績の半数が消化された訳です。
これは、昨年発表された日銀の資産取得によって投資口価格が上昇したことで、増資可能な水準まで回復したことが大きな要因になっています。
それにしても短期間に増資が集中していますので、恐らく現在の水準が必ずしも長続きはしないという危機感があるのかもしれません。
この後にも増資を行いそうな銘柄が控えていますから、投資口価格が今の水準に維持されれば今年は増資ラッシュになる可能性があります。

ここで気になるのは、増資が以前と同じ手法で行われていることです。
ブックビルディングでの増資は証券会社にとってやり易い手法で、今の投資口価格の水準であれば自分たちの顧客へのセールスも可能なので、当然この手法を提案します。
一方、金融庁が株主割当増資の環境を整えつつありますが、この手法は証券会社にとって手間が掛かる上に、利が薄くなるということで人気があまりないようです。
日本ビルファンド投資法人の投資主数は約1.5万人、ジャパンリアルエステイト投資法人が約1.4万人ですから、これら既存投資主に引受の有無を確認する作業がネックのようです。
勿論、保管振替機構を活用するのでしょうが、個々の意思を確認する作業をどうスムーズに行うか等の問題もありそうです。
それでも、証券会社サイドも検討を開始しているようですので、今年の上半期には実例が出るかもしれません。
REITの何れかの銘柄が行えば、REITでは株主割当増資が主流になる可能性がありますから、こういう事に積極的な日本リテールファンド投資法人あたりに期待したいところです。
投資主にとっても、株主割当増資の方が分かりやすいですし、予め配当率を想定しての増資になりますから、引受判断もし易いと思いますが、銘柄側は増資価格の決め方に悩むかもしれません。
基準は投資口簿価になりそうですが、過去に第3者割当増資によって大きく引き下げてしまった銘柄は希薄化の問題をクリア出来なければ、この基準は使えません。
それにこのような銘柄は投資口価格も低迷していますから、株主割当増資でも難しいかもしれません。
結局は、まともなREITしか使えない方法なので、やはり淘汰は避けられませんから、今年も上場銘柄数は減少するのではないかと思います。


Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved.