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2012.10.12.Up Dated.
REITは良くなっているのか?
 
 REITの動きを東証REIT指数でみると1,000ポイント超えが続いていますので、上昇機運に入ったのではないかと感じられますが、果たしてそうなのでしょうか。
確かに投資口価格の上昇はREITにとってプラスですし、今までが低過ぎたとも言えますから、多少戻すのは自然だとも言えます。
しかし何故上昇しているのかを考えないと、この先が読めませんので、その点について考察してみると、

1. 理論的な考え方が少しずつ普及して価格調整が行われている→×
市場での価格の動きが理論的背景によって動いているとは考えられませんので、これが理由ではなさそうです。

2. REITを取り巻く環境が好転してきた→△
金融庁によるREITの制度改革は注目ですが、これは未だ結論が出ていませんし、 仮に成案になったとしてもその具体的効果が検証はされていませんから、現段階では未知数です。又、オフィスビル賃貸市場等の状況は、依然として厳しい状況が続いており、今後もテナント異動によるフリーレントの発生が想定されているので、賃貸収益の下振れリスクが残っています。

3. インカムゲイン投資商品としての特徴の理解が進み、高配当率に注目が集まり始めた→△
REITの予想分配金利回りは上場銘柄平均で5.5%/年程度になっていますから、その配当率の高さが注目され始めているという見方は出来ますが、REITの配当率の高さは昨年から続いていることでもあるので、これも根拠としては弱いと言えます。
但し、一般投資家の関心が高まっているのは事実のようで、先日開催された個人投資家フォーラムも予想以上の出席率で席がなくなる程でしたから、昨年に比べると関心の高さが窺えます。

4. 日銀のREIT取得→○?
日銀のREIT取得は昨年から実施されていますので、これも今更の感がありますが、最近は証券会社関係からかなり詳しい話が伝わってきています。
日銀のREIT取得は実施日と取得概算額が後付けで発表されていますが、それ以外の情報は公表されていません。 然しながら、個別銘柄の取得状況等の話や5%上限枠にどの程度の余裕が残っているかという事まで言われています。
日銀のREIT取得は日本トラスティ・サービス信託銀行を通じて行われていますから、日銀だけの取得を特定することは出来ませんので、公表されている情報ではそこまでは分かりません。又、年内は政策的観点から取得が加速されるという見方もされていて、キャピタルゲイン狙いの大口投資家にとっては、プログラム売買で利ザヤが取れると踏んでいる可能性があります。

どうもこれが昨今の投資口価格の上昇の主要因のような気がしていますから、REITのファンダメンタルとは関係がなさそうです。
以上の事から、現在の状況は流動的だと考えた方が良さそうですが、理由はどうあれ上昇機運入ったのであれば、個別銘柄の状況や相互比較を行い、銘柄選別判断の準備が必要かも知れません。
但し、私のREITへの見方は、以前から、お祭り騒ぎ的に投資口価格が上昇するのは良くないと考えています。 REITのようなインカムゲイン投資商品は、その特徴によって漸増したり漸減したりするのが本来の姿です。又、キャピタルゲイン狙いの投資家の動きは現象だけを根拠にして相場を動かしますから これに乗るのも危険です。
そういう意味でも、暫くは冷静にウォッチしているのが賢明だと言えると思います。

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