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2013. 7.19.Up Dated.
ケネディクス系投資法人の資産運用会社の合併について
 
 5月28日にケネディクス・レジデンシャル投資法人(2012/4上場)の資産運用会社であるケネディクス・レジデンシャル・パートナーズの組織再編が発表され、7月10日にその合併契約が締結されました。
発表された内容を読んでもやや分かり難いですが、要旨は次のとおりです。

@ ケネディクス・レジデンシャル・パートナーズを存続会社として、ケネディクス不動産投資法人(2005/7上場)の資産運用会社であるケネデイクス・オフィス・パートナーズを吸収する。
A 同じくケネディクス・レジデンシャル・パートナーズを存続会社として、スポンサーのケネディクス系の私募ファンド運用会社であるケネディクス・アセット・マネジメントを吸収する。
B 存続会社となるケネディクス・レジデンシャル・パートナーズをケネディクス不動産投資顧問(株)へ商号変更する。

簡単に言うと、スポンサーであるケネディクス系の資産運用会社を一本化するようです。
そして、新たに誕生するケネディクス不動産投資顧問(株)がケネディクス不動産投資法人とケネディクス・レジデンシャル投資法人の資産運用を行い、併せて、私募ファンドの運用を受託することになります。
複数のREITと私募ファンドの資産運用を受託しているケースは他にも例がありますので、目新しい事ではありませんが、この発表後に、ケネディクス・レジデンシャル投資法人の増資と60件の物件取得が発表されました。
この取得予定の60件(合計取得予定価格は約686億円)のレジデンスは何れもケネディクス系の私募ファンドからの取得となっていますから、合併に伴うシナリオの一環だと言えます。
そして、増資は取得予定価格の約50%程度の資金を調達する形になっていますから、その規模は約340億円程度になります。
今年の増資では、日本プロロジスリート投資法人(6月実施)・日本ビルファンド投資法人(1月実施)に次ぐ大型増資になりますから、新興の投資法人としてはかなり思い切ったとも言えます。
単にケネディクス・レジデンシャル投資法人が増資に併せて60物件を取得するという内容では、増資の成功は難しいですが、合併によって今後の軸になりそうな投資法人だと言う点がポイントだと思えます。
増資価格の決定は今後の市場価格次第になりますが、現在のREIT市場の状況ならば従前の投資口簿価(182,575円/口)前後の増資価額が確保されると見込んでいるのだと思います。
然しながら、果たしてこの見込みが成立するか否かは分かりません。 漠然とした期待感だけで増資が成功するのか、それとももっと具体的な数字を挙げた説明が必要なのかという見方が出来ます。
ケネディクス・レジデンシャル投資法人の増資前のポートフォリオNOI利回り(取得価格比)は保有20物件で6.18%/年とREITの中ではトップグループに位置していますが、これに60物件を加えるとどの程度になるのかは発表されていません。
300億円程度の資産規模の投資法人がいきなり1,000億円規模になるのですから、パフォーマンスの推移は重要な情報です。
仮に、このような情報が出ないとすれば、恐らくポートフォリオ利回りは下がるのだと予想されますから、増資価格決定前の市場価格はそれによって下がる可能性もありますが、元々時価総額が相対的に小さいですから、市場取引によってはそれ程下がらないかも知れません。
こうなると、投資家は判断に迷いますが、現在発表されている内容では判断出来ないというのが率直な感想です。
株式市場ならばいざ知らず、REIT市場では期待感より確実な見込みが求められますので、これを資産運用会社がどう受け止めているかです。
増資後の予想収益は2期分に亙って発表されてはいますが、取得年度の固定資産税効果を考慮すれば、巡航ベースでの予想分配金見込みも知りたい所です。
確かに、今回の合併は方向としては理解出来ますが、ここまでするならばもっと投資家に分かり易く説明するのと、投資家メリットは具体的に何なのかを説明する位の努力が必要だと考えますので、今後の発表に期待したいと思います。

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