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2013. 8. 2.Up Dated.
賃料情報の開示
 
 オフィスビルの賃料が契約更改によって減額されるケースが増えており、この傾向はもう暫く続きそうです。
本来、賃料というのは客観的合理性が求められるものですが、日本の不動産慣習では、賃料情報を開示しない為に、合理的水準を検証できる環境にはありません。
不動産の貸主側の事情と思惑によってこういう状態になっている為であり、仮に賃料訴訟が起これば、概して貸主側に不利に働きます。
不動産の貸主側が賃料情報を開示しないのは、それが自己の不利益に繋がると考えている為であり、開示しない事で自己の利益の最大化を図っているとも言えなくはありません。
このような不動産慣行が温存される限り、賃貸者契約において借主保護の原則が採られるのは当然だとも言えます。

一方、REITでは保有不動産の賃料情報が開示されていて、日本では唯一信頼出来るデータだと言えます。
昨年の話になりますが、ユナイテッド・アーバン投資法人保有の「心斎橋OPA本館」と「心斎橋きれい館」(何れも合併した旧日本コマーシャル投資法人が保有していた物件)のテナントである(株)OPAから賃料減額訴訟がありました。
その内容は、
「心斎橋OPA本館」を現行賃料から20%減額
「心斎橋きれい館」を現行賃料から18%減額
というものですが、仮に賃料情報が開示されていないと、恐らくテナント側に理があると見做されてしまうと思います。
然し、REITの保有物件は決算期毎に賃貸収益が開示されているので、そのデータから現行賃料を計算すると、
「心斎橋OPA本館」: 14.25千円/坪/月
「心斎橋きれい館」: 9.84千円/坪/月
と推定されます。
テナントはこの賃料水準を20%、18%を減額し、それぞれ11.4千円/坪/月と8.07千円/坪/月に下げろと要求しています。
概してこのような都心型商業店舗の賃料は高めに設定されているケースが多いのですが、この2物件の現行賃料は同地域のオフィスビル賃料より低い水準になっていると考えられます。
REITが保有している他の物件を見ると、日本リテールファンド投資法人が保有している「心斎橋01」の賃料が35.72千円/坪/月(定期借家契約賃料)ですから、これに比べてもかなり低い賃料水準だと言えます。
尤も、商業店舗ビルの場合は僅かな立地差で賃料が大きく変わるのが常識ですから、単純な比較は出来ませんが、ユナイテッド・アーバン投資法人の発表内容では総じてテナントの要求に無理があるとも思えます。
このような第三者の見方が出来るのは、賃料情報を開示している為であり、仮にこの2物件の賃料が非開示となっていれば逆の見方になり、テナントに理があると考えるのが普通です。

このように賃料情報と言うのは、客観的合理性を検証するのに必要不可欠のデータですが、この開示を長年忌避してきた不動産会社によって社会からは色眼鏡で見られてしまいます。
REITでも、テナントからの要望と称して賃料を非開示とする物件も数多くありますが、テナントにとって賃料情報の公開は賃料水準の合理性を知るための不可欠なデータなのです。
REITはこのような不動産業界の悪しき慣行に染まることなく運営されるべきなのですが、不動産会社の悪しき慣行の片棒を担ぐ投資法人も見受けられるのが現状です。
本来合理的な運用が求められる投資法人では、改めるべき事だと言えますが、中々進捗しないのがREITの実態だとも言えます。

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