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2003.12. 4. Up Dated.
 REITの経済効果
  
2003年内にREITは10銘柄に達し、資産規模も1.2兆円になる見通しです。
更に、今後も年5,000億円ペースで拡大する見込みですので、日本の経済状況から見ればまさに成長株の筆頭にも挙げられますが、全体として地味な印象でマスコミ等の扱いも大きくはありません。
その理由は色々ありますが、何よりもREITの経済波及効果が限定的だからだと考えられます。
現在のREITは、最初の組成段階でオリジネーター等が保有している既存物件を収集し、その後も企業が保有している物件を追加取得しています。この方法では、既にある不動産を右から左に動かして、単に資金の付け替えだけを行っていることになります。 その資金も、REITの株主構成を見れば分かるように金融機関が多くを占めていますので、広く見れば、不動産を担保にして融資したお金を出資という形に付け替えた、いわゆる、デッド・エクイティ・スワップだとも言えます。その上、REIT関連業務のAMとPM業務の大半は、オリジネーターとその関連企業で受注していますので、内輪だけで仕事を回しているとも見られます。これでは、REITの社会的役割は小さいですし、経済波及効果も期待できません。
元々、不動産の経済波及効果は自動車産業の10倍にも達すると言われる程の高付加価値産業ですが、地価の値上りがない状態で既存物件を動かしているだけではGDPの押し上げ効果は微々たるものです。
本来、REITに求められていたのは、オリジネーターに資することだけではなく、新しい不動産業として経済効果をもたらすことと、それを後押しする資金を眠っている個人金融資産から調達することです。 そのために、上場という形で資金調達を認め、投資法人への課税を免除しているのですが、REIT関係者からこの原点の意識が遠のいているという印象を受けます。
行政当局も、現状を看過している感があり、取り敢えず、金融機関に恩恵があればという姿勢も見受けられます。不良債権の対象になっている不動産や減損会計圧力による不動産売却ニ−ズを充たす役割も必要ですが、後ろ向きだけの処理でREITを利用するというのは考えものです。
REITには、不動産業界の大手企業の大半が関わっていますが、このような後ろ向きの事業にREITを向かわせている危機感が乏しいようです。
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