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−J-REITを考える(その5)−    
J-REITの拡大に対する逡巡と恐怖感
JREIT関係者の話を聞いていると、どこかにJREITの拡大に対する恐怖感が潜んでいるようにも感じます。 その理由は一様ではないと思いますが、急激な拡大によるバブルへの怖れがあるようにも思えます。
かつてのバブルは根拠のない期待感の連鎖によって、すべてのたがを緩めてしまい、その修復に大きな犠牲と長い年月を必要としています。
不動産を扱うJREITで、その心配を持つことは当然でもありますし健全だとも言えますが、単に、慎重かつ保守的になることでその危険性を払拭できる訳ではありません。

私は、将来のバブル防止策としては、資産運用会社の情報開示機能が鍵を握っていると考えていて、情報ギャップや不透明性を小さくすることで、防御できると思っています。
例えば、JREITが不動産を取得する際に、価格の根拠や妥当性、そして将来の予測をファンド自らが表明することが必要です。 不動産鑑定評価によって、取得の妥当性を表面的に糊塗するのではなく、ファンドが取得を判断した全容を開示することが重要だと考えています。
そして、ファンドが発表する内容に対して、いろいろな視点からコメントや評価が出されるようになればファンドに緊張感が伴いますので、バブルのような根拠のない膨張は防げるのです。
現在は、客観評価者等が少ないことで、ファンド自らでセルフコントロールしなくてはならないような状況ですが、この状態の方が危険を伴います。
私は、ファンドの一挙一動に対して、様々な評価が出され、甲論乙駁するような状況がまさに市場監視機能だと考えていますが、現状ではこの市場監視機能が装備されているとは言えません。
市場監視状態は、ファンドにとっては必ずしも都合の良いことばかりではありませんが、少なくともセルフコントロールという呪縛からは解放されますし、自らの進むべき方向というのも、多くの視点からの切磋琢磨によって見出すこともできると思います。

JREIT関係者に見られる逡巡と恐怖は、一見ストイックで美徳のようにも見えますが、 いつまでもそれに頼るというのは現実的ではありません。 それよりは、一見すると奇怪にも思われますが、自らの対立軸となるような機能を創ることこそが 自分達の成長に繋がり健全な発展に寄与するという考えを持って欲しいと考えています。

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