芭蕉の足跡〜
芭蕉の現在
平成12年(2000)6月21日「朝日新聞」紙上に発表された「この1000年“日本の文学者“読者人気投票」によれば、一位夏目漱
石、二位紫式部、三位司馬遼太郎、四位宮沢賢治、五位芥川龍之介、六位松尾芭蕉、となっている。
現大臣とは馴染みの薄い古文で書かれた文学の作者としては、芭蕉の名は現代人にとって断トツに親しみ深い存在として心に刻
みつけられている。
一方、同年の夏、ロンドンとオックスフォードを中心にイギリス各地で「世界俳句フェスティバル2000」が開催されたが、その実行
委員長で英国俳句協会副会長の滝田進氏が、1997年の秋、その下準備を兼ねて来日した折、次のような話を聞いたことがある。
〜イギリス人の俳句は、思想的・哲学的なものが入ってないと満足せず、論理とか思考とかを入れない単なる感性の詩として完結
することの多い日本の俳句に対しては、とかく反論を提出したりすることもあるが、その場合、芭蕉がこう言ったというと、黙って引
っ込む。つまり、彼ら英国ハイジンにとって、芭蕉という名は絶対的権威を持って受け止められている。云々〜
このことは、英国人の間における芭蕉に対する高い評価の一端を示すものといえる。
海外におけるハイク事情に詳しい佐藤和夫氏によれば、芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水の音」 の句の外国語訳は百種以上に上
るとのこと。同じく星野恒彦氏によれば、「おくの細道」についても九種の英語訳の他、露・仏・独・スペイン・ポルトガル・イタリアの
各国語訳があり、私自身もドイツ語訳や中国語訳などにかかわったそれぞれの国の研究者達から、翻訳の苦心について聞かされ
たことがある。イギリスのみならず広く世界各国における、「芭蕉の文学」に対する深い関心と高い評価のほどを物語るものといっ
ていいだろう。
参考文献;尾形仂・著「芭蕉ハンドブック」
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