俳句俳句ーその3
きまぐれ 一 句
〜ときどき更新〜
2011年
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冬・新年
初空を一人ひとりの一歩かな
初明り雲散霧消去年の塵
わたつみの雲はらひけり初日の出
筆始め墨摺る間(あわひ)の佛かな
一文字(ひともじ)に万感こもる筆始
年始先ず身をおこし目を閉ぢる
成人日晴れ着の人は去年の巫女
黴びるまで待たうぞパックの鏡餅
はや七日咳のひしめく控え室
しろがねの由布初空をほしいまま
皺の妻冷たいカップに角砂糖
はからずも鰤は煮物となりにけり
蝋梅や乙女の祈り夜半の雨
寒入りや浄瑠璃のごと人の形(なり)
ふりむけば上戸か下戸か千鳥足
嚔(くしゃみ)しつ臍のあたりに茹で卵
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春
2月5日次女嫁ぐ
草青む子は嫁ぎ行くさりげなく
嫁ぐ子の気性サバサバ猫柳
茎立やバージンロードの一歩二歩
子は嫁ぎ夕餉の春菜うすあかり
春寒や嫁ぎし吾子の部屋の前
うららかや頭(おつむ)の上の鳥の糞
山間の廃家の記念樹青嵐
芸術論高きに憂ふ春の鳶
大空が招いてゐるよシャボン玉
夫看取りわが世の春や未亡人
カラヤンのタクトは泳ぐ百千鳥
遍路道袖に纏はる天魔かな
犬ふぐりあはき星屑夕まぐれ
うぐひすを音痴と笑ふ音痴かな
啓蟄や鳥に追はるる蛇の夢
啓蟄や居間に煤けし皺と皺
啓蟄や微動だにせぬだんご虫
春だよね暦だけよねすずめ二羽
浮雲に乗りただよひぬ花宴
花宴ふはり赤鬼舞ひこみぬ
左脳完全冷凍花宴
花宴上戸の機嫌土産(つと)にせむ
セシウムと春の人災空と海
シーベルト春の星よりシーボルト
花の闇先は暗黒まつりごと
種袋百袋わづかに義援金
隣の座をどる赤鬼花吹雪
セシウムにまぎれ紛れて黄砂かな
雉子鳴くや寡黙に生きし父のこゑ
春愁を束ね盃重ねけり
深酒は毒よと注ぐ夜の蝶
刀鍛冶匠のまなざしつばくらめ
芯削り芯たくましく卒業す
山門をくぐりふんわり花の雲

夏
日盛や脳天つつくピカソかな
大ジョッキ女の権威生ビール
磯遊び地球に素足踏ん張つて
アトリエの岡本太郎夏来る
新茶注ぐ古りし乙女の小指かな
炎熱の間(あわひ)の原発作業員
炎天下メルトダウンは闇の中
華に生く美人薄命鬼虎魚
陵(みささぎ)につましき人家雲の峰
孕み女裳裾をけつて炎天下
この星の夏空焦がす島一つ
七夕のこよりの手並寝たきりの
里山のページをめくる夕焼け雲
弦月や地球の表裏知り尽くす
風鈴に宇多田ヒカルのつぶてかな
鎌の先かまきり捕へ釈放す
バス停の日傘もささぬつけ睫毛
蚊は不眠我も不眠の夜明け前
油蝉道後の甍うきうきうき
汗だくだく揚句の駄句のごみの山

秋
SLの音遠ざかり秋深む
秋の暮哀愁列車を口ずさむ
口開けしまま見つめ合ふ秋暑し
かまきりに捕へられたる犬の鼻
裏返す枕の裏の虫のこゑ
老骨を裏返しても秋暑し
母の灯の消えなんとする手をつかむ(無季)
セシウムの色無き風にまぎるるか
浮雲や烏の下の赤とんぼ
灼熱の道に死ぬるか秋の蝉
初秋の蚊仲睦まじきふくらはぎ
でで虫の全力疾走ゴビ砂漠
ころがされ半作に泣く案山子かな
陰膳に枝豆を添へ夕ごはん
柿盗りの木登り上手に送る柿
糊代のなき核の事故すでに秋
糸瓜忌や小ぶりのへちま二つ三つ

冬
冬初め類句の骸累々と
本能に尋ねてみやう薄氷
古稀ん古稀ん時間よ止まれ十二月
かのときの小指と小ゆび初しぐれ
木枯しや読経のこゑの揺れやまず
マスクしてひしめく命山手線
三陸のふくら雀の瓦礫かな
冬浅し枯死せる竹の凛として
立上がり齢の皮膚をかじかむ手
アルバムの銀杏落葉やおさげ髪
冬の蝶横断歩道にこときれて
木枯しや母の爪紅棺の中
大安の就活婚活神渡し
初しぐれ泣く子を歯医者のまな板に
九度三分お代わり上手玉子酒
