朝日俳壇10/3




選者
の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
掲載する以上、学ぶ値打ちがなければならない。7/18号より俳界の力量を誇る金子氏、大串氏に学んでゆく。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席、次点 の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。

金子兜太・選

@地荒ぶる天荒ぶるも共白髪
寸評)老夫婦のわれら、記紀の神々のごとく、大災害の天地と向かい合わん。


A原発の廃墟に凝らす望の月
寸評)明月の光までも、原発のこの残酷な廃墟には緊迫。


B尾を止めて金魚もすなり大欠伸
寸評)金魚も主も。


Cみちのくの海に曼荼羅鰯雲


D酸つぱさは妻の右の目青蜜柑


E深淵の青とて夜の扇風機


F快方に向ふ実感小鳥来る


G利尻昆布空路廃止の島に干す


H被災地の気力漲る新酒かな


I禿頭の物知りなるや敬老日
寸評)初めて気づいたような表情に諧謔。


★10句の中の私の眼

☆@地荒ぶる天荒ぶるも共白髪
   〜住み家を失って、空気も大地も汚染され逃げる場所もない。共白髪の余生。
  
☆A原発の廃墟に凝らす望の月
   〜望月が光の眼で廃墟を照らしている。成りゆきを見つめる「凝らす」がポイント。

☆B尾を止めて金魚もすなり大欠伸
   〜思えばあるある、の光景。作者も一緒に・・・。「すなり」→「ひとつ」では?

大串 章・選

@チェロの音や夜霧の街のいづくより
寸評)夜霧の中から聞こえてくるチェロの音。心にしみいる音である。

A蝉時雨この世この世と鳴きにけり
寸評)「この世この世」がせつない。生きている今が大切なのだ。

B西行の月は木の間に今もあり
寸評)「望月のころ」と西行が詠んだ月。歳月を隔て季節を異にした今も輝いている。

C遙かなるものに応へて鵙高音


D絶へ間無き離着陸見ゆ花芒


Eコスモスを生け風の間となりにけり


F善戦の草木尊し野分晴


G虫しぐれ今日の家路を囃しけり


Hみちのくの蚯蚓なくことやめにけり


I縄文の火炎のさまに曼珠沙華


★10句の中の私の眼

☆B西行の月は木の間に今もあり
   〜西行が眺めた月を、その四百年後に芭蕉が見た。その月を自分が見ている。「月」はすべてを知っている。
  
☆A蝉時雨この世この世と鳴きにけり
   〜地中の蛹時代もこの世だろうが、成虫の華やかな期間は一週間。

☆@チェロの音や夜霧の街のいづくより
   〜まるで歌謡曲の一節みたい、やや観念臭が嫌味だが思わず「チェロ」に惹かれる。@席の句ではない。