朝日俳壇12/26




選者
の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
掲載する以上、学ぶ値打ちがなければならない。7/18号より俳界の力量を誇る金子氏、大串氏に学んでゆく。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席、次点 の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。

金子兜太・選

@耳掻きやふわふわふわと夫は泣く
寸評)場面の設えも旨いが、擬態(擬声)語の働かせ方も上々。マンネリ感乏し。
・泣く事情が連想できない。


Aよく匂ふ歓喜や母の冬林檎
寸評)りんごに喜ぶ母と子。「歓喜」の語美し。


B身の重さ痰の重さよ冬の蝿
寸評)冬の蝿との比較鋭し。


Cどこかしこ落葉掃かねばならぬのか


D起きていて欲しき山あり山眠る
・意外性。


E狼やむかしの村は海の底


F黙(もだ)続く冬の金魚の二人かな


G手作りと問われて大根献上す


H義士の日や蕎麦に寸酌許されよ


I年暮る拉致被害者の音絶えて
寸評)忘れてはいけない、との重い警告。


★10句の中の私の眼

☆Aよく匂ふ歓喜や母の冬林檎
   〜漢語「歓喜」を極めて有効に使った一句。
  
☆B身の重さ痰の重さよ冬の蝿
   〜不自由な身にむち打って生きる状況が見える。

☆F黙(もだ)続く冬の金魚の二人かな
   〜老いた夫婦かそれとも不仲の夫婦なのか、想像が広がる。

大串 章・選

@摩天楼はるかに山は眠りけり
寸評)高層建築の向こうに冬山が聳えている。現代の大景を描いて静かな力あり。

A吊革の一人一人の師走かな
寸評)そこには「一人一人の師走」があり、一人一人の人生がある。

B返り花ふと見上げたる目の先に
寸評)「目の先に」が眼目。何気なく見上げたところに咲いていたのだ。

C耐へ難き容となりて蓮枯るる


D雑踏を大河としたる師走かな


E日向ぼことも魚釣りとも見ゆる


F年忘れ昼の蕎麦屋の老いふたり


G大鍋に凩の音消えにけり


H平成の風に雨情の枯すすき


I霜月や白髭伸ばすサンタ役


★10句の中の私の眼

☆A吊革の一人一人の師走かな
   〜都会生活の普通の生活の中でもすぐれた俳句ができる。
  
☆@摩天楼はるかに山は眠りけり
   〜喧噪の高層ビル越の山は静かに眠っている。

☆D雑踏を大河としたる師走かな
   〜都会の雑踏を「大河」とみなした手柄。