朝日俳壇4/24
選者の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。これらから選者の力と俳風も見えてくる。
長谷川櫂・選
@原発の屋根吹き飛ぶや涅槃西風
寸評)あっけなく吹き飛んだ原子炉建屋。三月十一日は「原爆忌」と呼ばれるだろう。
・原発事故と涅槃会との取合わせが不適切。
A南風戸叩く春の訪問者
寸評)うるわしい南風よ。漢詩の一節のような一句。
・工夫は見られるが季重ねまで犯したほどの価値はない。
B駄句なれどふと浮かびきし春の宵
寸評)「駄句なれど」のつつましい味わい。されど捨てがたい。お気持ちよく分かる。
・おねだりに同情は良し。されどこれが作句者を導くことになるのか?。
C重力とこんがらがつてゐる蝶々
D紬糸織るおとめたち花の陰
Eこれほどに春待ちわびる年もなく
F岩ありて砂を流せり春の水
Gどの凧か分からなくなり凧の空
H新聞を泣きつつ読んだ春ゆきぬ
I草の香の餅一升を祝ひたる
★10句の中の私の眼
☆C重力とこんがらがつてゐる蝶々
〜「重力」の発想は、写生+主観=詩 をなしている。
☆Eこれほどに春待ちわびる年もなく
〜被災者の心理そのもの。
☆なし
大串 章・選
@天職を天へ返して老の春
寸評)仕事を全うした人の感慨。「天へ返して」に感謝の思いと充足感が感じられる。
A楽鳴らすチマやチョゴリの花見かな
寸評)チマもチョゴリも朝鮮の民族服。苦難に耐えてきた人たちの花見である。
Bエイプリルフール今年は慎みて
寸評)風評の飛び交う中、軽い嘘でもつきたくない。
C四月馬鹿より三鬼忌とおもひけり
D花に征き花に集へり同期会
E震災の奥の細道草萌ゆる
F大震災新入社員固きかな
G山桜より山の色湧きあがる
H満開の桜の如き朝日かな
I遠足の列に隣の女の子
★10句の中の私の眼
☆@天職を天へ返して老の春
〜「天へ返して」の発想の手柄。
☆A楽鳴らすチマやチョゴリの花見かな
〜今は昔、かつての歴史を省みた心情。
☆Bエイプリルフール今年は慎みて
〜他人事とは思えない被災地への心遣い。
稲畑汀子・選
@春炬燵避難の一家迎へけり
寸評)被災された一家を迎えた作者の心遣い。春炬燵という季語が語る。
A悲しみに寄り添ふ桜咲きにけり
寸評)悲しみにある人々に慰めとなる桜が咲いた。「寄り添ふ」に配慮を見た。
B平凡といふあたたかき一日かな
寸評)平凡で温かい一日と感じる幸せを大事にする。
Cあたたかや悲しみ秘めしボランティア
D連翹に忌日の庭の暗からず
E落椿残し箒目立ちにけり
F哀しみを万朶の花にほどきゆく
G霾やけぶる河口へ夕日落つ
H洋風も和風の庭もタンポポ黄
I今日よりもあかるき明日チューリップ
★10句の中の私の眼
☆A悲しみに寄り添ふ桜咲きにけり
〜桜にも生き残りがあった。
☆@春炬燵避難の一家迎へけり
〜はた迷惑、などと言ってはいられない。
☆なし
金子兜太・選
@福島は暗黒大陸桜咲く
寸評)放射能被害はとくに福島県の人たちに深刻。まさに「暗黒大陸」。
A捜しゐる流されし家つばくらめ
寸評)悲惨な現況を軽やかに活写。
B白蟻のごと液状化の家に籠る
寸評)作者は液状化現地の人。実感十分。
C青霞会津は深き光芒に
寸評)作者にとって会津は山深き内陸。
D相馬よりいま沈黙の葱坊主
E東風吹けば吹くほど暗くなる山河
F花咲けど人の戻らぬ山河かな
G避難所の子等春眠を貪れる
H大津波瓦礫の浜の春霙
I春うららてふ馬今はどのあたり
寸評)いまの時懐かし。
★10句の中の私の眼
☆@福島は暗黒大陸桜咲く
〜「暗黒大陸」が絶対。
☆A捜しゐる流されし家つばくらめ
〜去年の古巣を探すけれど目印さえ消えてしまった。
☆B白蟻のごと液状化の家に籠る
〜傾いた家からも外へ出られない現実。