朝日俳壇5/16
選者の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。これらから選者の力と俳風も見えてくる。
金子兜太・選
@地震津波棄郷の民に花吹雪
寸評)「花吹雪」はいささか歌いすぎだが、「棄郷の民」の語感適切。
A穀雨にも豆に割込む余震かな
寸評)この諧謔が大事。
B仮の世と言わせぬほどの山桜
寸評)最盛りの盛り上がる山桜。これも余裕。
C春暁の美しき厠にまた地震
寸評)春暁の静けさ明るさの厠。
D菜の花や月も日もなき夕間暮
Eテレビてふ惨の結界四月尽
F避難所に四月尽きぬと友の文
G春の星瓦礫地獄に咲くといふ
Hこの春は笑ふ松島見にゆかな
I十連休五人家族の五月来る
寸評)数字遊びの明るさ。
★10句の中の私の眼
☆A穀雨にも豆に割込む余震かな
〜「豆に割り込む」の捉え方、俳諧のハイレベルを見せつけられた。
☆@地震津波棄郷の民に花吹雪
〜ちりじりになってしまった民と花吹雪の交響がピッタリ。
☆C春暁の美しき厠にまた地震
〜仮のトイレを「美しき厠」の措辞で成功した。
長谷川櫂・選
@来年は筍のやうな国であれ
寸評)すくすくのびる玉のような筍。来年と言わず、すぐにでもといいたいところだが。
A一村は揺すらば鳴らむ柿若葉
寸評)つややかな柿の若葉。家ごとに柿の木がある。
B落第にまさる経験なかりけり
寸評)挫折が人を大きくする。ただならぬ世だが、それぞれの春が動き出した。
Cわたつみのいろこの宮へ結ふ粽
D伊勢海老の孫か曾孫か桜蝦
Eなつかしや叺に詰めし夏蜜柑
F春光寺花の和尚の座しけり
G茎立や乳を飲む豚眠る豚
H朧にも見えぬが怖き放射能
I考へはまとめずに置くシャボン玉
★10句の中の私の眼
☆なし
☆なし
☆@来年は筍のやうな国であれ
〜敢えて一句。並の願いごと。
大串 章・選
@春惜しむ言葉の海を泳ぎゆく
寸評)春を惜しみつつ句作に耽る。「言葉の海」から唯一無二の言葉を取り出す。
A花どきの日本列島千切れしまま
寸評)花見を自粛する人、あえて実行する人、「千切れしまま」が切ない。
B被災地に花人のなき愁ひかな
寸評)作者はいわき市勿来の人、「愁ひかな」に低頭あるのみ。
C花吹雪発車間際の扉より
D迷いなく水に乗りたる落花かな
Eふるさとの島に手を振り春惜しむ
F黄砂降る新燃岳の灰も降る
G軍馬みな霞のなかへ消えゆけり
Hこの墓に父の骨なし昭和の日
Iサッカーのボールの如く五月来る
★10句の中の私の眼
☆@春惜しむ言葉の海を泳ぎゆく
〜「詩を詠う」人々の共通の課題。「言葉の海を泳ぎゆく」準えの妙。春惜しむ→行く春や のほうが・・・。
☆A花どきの日本列島千切れしまま
〜数え切れない死者・行方不明者、家族が千切れ居住地を失った。「千切れしまま」の人々への支援を如何に早く効果的に実践するか、政治の真価が問われている。
☆Iサッカーのボールの如く五月来る
〜三月十一日の東北の大震災、加えて原発事故。政治家はすべて政局がらみ芬芬の対応。報道は専らこれだけに賑わい国民がはらはら心配するうちに、あっという間にもう五月。
稲畑汀子・選
@通る人皆立ち止る桜かな
寸評)有名ではないが通る人が皆立ち止まって見上げる見事な桜が描けた。
A子どもにはちよつと大きな柏餅
寸評)小さい子どもが大きな柏餅を食べるうれしそうな顔が見えるよう。
B径あるとみえぬ辺に駅山笑ふ
寸評)木々が芽吹きはじめた峡に埋もれそうな駅の存在に気づいた作者。
Cバス降りる花冷のこと口口に
D朝寝して朝の時間を間引きけり
E再開の涙怺えて落花浴ぶ
F静かさや一片残花散りしのみ
G明日といふ日を疑はず種を蒔く
H逝きし子の花の忌日に少し泣く
I踏み入りて若草の香に浸りけり
★10句の中の私の眼
☆なし
☆なし
☆なし
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