朝日俳壇5/30



選者
の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。これらから選者の力と俳風も見えてくる。


大串 章・選

@被災地の土もて燕巣作りす
寸評)その巣で生まれた子燕が、やがて元気に大空を飛びまわる。

A少年の草笛めがけ来る電車
寸評)目の前を通り過ぎる電車の前で、少年は草笛を吹きやめない。

B春塵や野武士のごとき犬が来る
寸評)この春塵は瓦礫の中から舞い上がる砂塵か。「野武士のごとき」が力強い。

C夏帽に去年の日向の匂ひかな
・月並み。

D青岬へ原発見ゆる砂丘踏み

E華やかに水に解かれし金魚かな

F羽根畳み終へて天道虫となる

G蛍袋一つ一つに森の朝

Hストローに緑の行き来ソーダ水

I島の宿人の声して明易き


★10句の中の私の眼

☆@被災地の土もて燕巣作りす
   〜燕は何も知らない。
  
☆A少年の草笛めがけ来る電車
   〜草笛が電車を呼んだ。

☆B春塵や野武士のごとき犬が来る
   〜野犬は野武士のごとし。


稲畑汀子・選

@噛みしめし葉の香こそ桜餅
寸評)桜餅を塩漬けの桜の葉で包んだまま好んで食べる作者。季節感があふれ臨場感もある。
・月並み。

A洗はれし山迫りくる緑かな
寸評)雨が上がった山若葉が美しい。山が迫りくるかに見える。
・月並み。

B電球を一つはづして夏に入る
寸評)節電で涼しげになる電球一つ。今年の夏の過ごし方。

Cばら百花咲かせ東大農学部
・駄句。

D快晴の日差漏れくる薔薇アーチ
・月並み。

E雨払ふ五月の風の荒くとも
・駄句。

F大空へ樹齢盛り上ぐ樟若葉
・月並み。

Gたましひを空つぽにして髪洗ふ

H奥蝦夷の遅き春告げ鼓草
・月並み。

I街薄暑慣れぬ節電てふ暮し
・月並み。


★10句の中の私の眼

☆なし
   
  
☆Gたましひを空つぽにして髪洗ふ
   〜壺を得た一句。

☆B電球を一つはづして夏に入る
   〜今年の節電に限らない。

金子兜太・選

@谷若葉朝刊配りゆく光
寸評)簡明素朴な語感と「光」とに新鮮な生活感がある。

A春の牛空気を食べて被爆した
寸評)「春の牛」が切実。

B三人少女いつも誰かが涼しくて
寸評)少女三人でなく三人少女の語感。

C詩のやうなマルコ伝訳麦の秋
寸評)「麦の秋」がマルコ福音書訳の詩感と重なる。

D耕人に座る畦あり飯を食ふ

E晩年を隣の雉子と過ごしけり

F汀へと人集まり来立夏かな

G医師若し立夏の風をひるがへし

H朝蜘蛛の消化器に糸掛け初めし

I放射能田植を奪い牛を奪い
寸評)率直は美なり。
・平凡。

★10句の中の私の眼

☆@谷若葉朝刊配りゆく光
   〜山村僻地の新聞。待ちわびる気持ちを「光」で表現、的確。
  
☆G医師若し立夏の風をひるがへし
   〜白衣ではなく、心意気を「風」に託した秀句。

☆F汀へと人集まり来立夏かな
   〜自然に涼しい場所に集まる心理。

長谷川櫂・選

@柳川の旧の節句の菰粽
寸評)旧の節句とはゆかしい。柳川の水路にしたたる柳の緑を思い出した。
・理屈。

A衣更へて財布が邪魔になりにけり
寸評)大枚でふくらんだ財布が邪魔とは。微苦笑の一句。
・理屈。

B地震のときどこにゐたかと新茶注ぐ
寸評)こんな会話が日本国中で交わされている。「新茶注ぐ」に即座のよさあり。

Cはしり梅雨しづかに走り来りけり
・月並み。

D俳諧に親しみ古茶に親しめり
・冗句。

E竹皮を脱ぐみちのくの地の力
・駄句。

F諦めし時に草笛鳴りはじむ
・平凡。

G箸一本休ませてゐてところてん
・駄句。

H福島がフクシマとなり夏来る

I春愁や原発五キロ圏に住む
・平凡。

★10句の中の私の眼

☆B地震のときどこにゐたかと新茶注ぐ
   〜含蓄はないが、臨場感に富む。
  
☆なし
   

☆H福島がフクシマとなり夏来る
   〜世界的な「フクシマ」となったが、未だに先が見えない不安。