朝日俳壇5/9
選者の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。これらから選者の力と俳風も見えてくる。
稲畑汀子・選
@郁子若葉早や縺るるといふ心
寸評)蔓が伸びてはびこる郁子(むべ)は、若葉の萌えはじめる頃から片鱗を見せる。個性ある植物の育つ様子を見逃さない。
・つる性の植物は縺れるのが宿命。郁子が特別ではない。
A天地に従ふほかのなき春ぞ
寸評)自然に従うほかない災害を受け止めた。
・平凡
B綾取りも五目並べも飽き日永
寸評)子供の相手も尽き、所在ない作者の日永。
C地震の地の御霊に捧ぐ落花とも
・駄句
D不安消す電話の一語あたたかし
・平凡
E耐えて咲く花に命を重ねけり
・平凡
F花よりも間近に羽音ありにけり
・駄句
Gチューリップ崩れるまでに切る情
・駄句
H開け放ちあり花冷の詩仙堂
・駄句
I花屑をつけたるままの傘畳む
・駄句
★10句の中の私の眼
☆なし
☆なし
☆B綾取りも五目並べも飽き日永
〜孫の相手をしたあとの暇なこと。敢えて一句。
金子兜太・選
@雑草といふ草はなし昭和の日
寸評)日本人に雑草と呼べる者はいない。承知せよ。
Aはるばると来し被災者へ初音かな
寸評)季語「初音」が澄んだ選択。
B花の雨点滴中に眠る妻
寸評)いま侘びしく病む、明るい妻。
・明るい妻、は深読み。
C福島原発蜃気楼であれば
寸評)単純明快な喩えにひと味あり。
D行く春や傷みてまはる水の星
Eこの星に人のゐるべく水温む
F海隔て佐渡も避難地暖かに
G放射線いつまで飛ぶか花粉症
H研究より自由の身となる花だより
・知識不足なので詠めない。
I春暁のついに厠へまいりけり
寸評)かしこまった言い方楽し。
★10句の中の私の眼
☆@雑草といふ草はなし昭和の日
〜昭和時代の辛酸を舐めた時代を振り返るとき、平成は平穏ぬるま湯の時代の人間はハウス栽培。到底雑草のたくましさはない。
☆Aはるばると来し被災者へ初音かな
〜被災者が県外に越してきた。歓迎し、力づけるように鶯の声。
☆C福島原発蜃気楼であれば
〜まさかの原発事故。夢幻であってほしいと思うけれど・・・。
長谷川櫂・選
@大地震知るや知らずや蝌蚪生る
寸評)大地震とかかわりなく、オタマジャクシが孵った。大自然は無心。だからこそ慰めになる。
・地震もオタマジャクシの孵化も自然。しかし作者は愛媛県、実感はない。
Aこの星に人のゐるべく水温む
寸評)春になれば水が温む。だからこそ人が住める地球。
・「ゐるべく」が理屈。改めたい「水温む人の住みゐる惑星の」。
B春光や一句一句が一宇宙
寸評)一句一句が光の塵のよう。塵は宇宙を宿す。
C東京を貫く川の花筏
・駄句
D花だより早く聴かせよみちのくの
・平凡
E拡げたるかやく御飯へ花の塵
・平凡
F疵のまま蕾ふくらむ辛夷かな
・平板
Gくるくると牛も羊も石鹸玉
・平凡
H原発に追はるる里や桜咲く
・平凡
Iさやうなら切手一枚分の春
★10句の中の私の眼
☆Iさやうなら切手一枚分の春
〜実際に手紙を出してはいないが、忌まわしい春の被災地に「さようなら」をした。「切手一枚分」の把握が見事。
☆B春光や一句一句が一宇宙
〜俳句の究極は宇宙。「一」のリフレインも適切。
☆なし
大串 章・選
@大阿蘇の空より枝垂桜かな
寸評)風生の句もあるが、阿蘇の空と枝垂桜の取り合わせがいい。
・「枝垂桜」ー「桜吹雪」と季語が動く。とらえ方は大らかでいい。
A不明者の名前が呼ばれ卒業す
寸評)名前を呼ばれても立ちあがる者がいない。一瞬会場に沈黙が流れる。
B生きてゐる証拠の余震花吹雪
寸評)余震を感じるのは命があればこそ。強く生きていかねばならない。
C下北も津軽も見えて啄木忌
D実印のごとく桜の大樹咲く
E物種を蒔くやこの国信じたく
F草笛の草見つけたり吹いてみる
G花の山柩はいつも新しく
H春愁や鉄棒に老ぶらさがり
Iマスクしてサングラスして花見かな
★10句の中の私の眼
☆B生きてゐる証拠の余震花吹雪
〜いまだに続く頻繁な余震。満開のあとの花吹雪との取り合わせの妙。
☆A不明者の名前が呼ばれ卒業す
〜行方不明者も卒業式を迎えた。名前だけの卒業だから「不明者の呼ばるる名前卒業す」。
☆Iマスクしてサングラスして花見かな
〜ユーモラスであるが、実感が見える。
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