朝日俳壇6/27


選者の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。これらから選者の力と俳風も見えてくる。


大串 章・選

@水底を楽の流るる花藻かな
寸評)水面に藻の花が咲いている。川底の音楽を聞きながら育ったか。

Aセシウムの大気に太る鯉のぼり
寸評)風に膨らんだ鯉幟を見ても放射能セシウムのことを思う。

B今年また父描きかけの百合咲けり
寸評)百合の花を描きかけたまま父は亡くなった。今年も百合が咲き始めた。

C原発の方茫々の卯波立つ
・平凡

D万緑を行く躁となり鬱となり
・俳意不明

E牛蛙大地の声を出しにけり

F蚊を叩く父まねて子は空叩く
・平凡

G竹皮を脱ぐ間なきまま聳えけり

H父の日や父の手紙の命令文

I早苗田やきのふ大雨けふ小雨


★10句の中の私の眼

☆@水底を楽の流るる花藻かな
   〜鋭い観察と着想に脱帽。
  
☆B今年また父描きかけの百合咲けり
   〜「百合」も白百合かな、ピッタリ。

☆Aセシウムの大気に太る鯉のぼり
   〜「に太る」→「の中の」として含蓄を。


稲畑汀子・選

@朝まだき蛻の殻の鵜舟かな
寸評)昨夜鵜飼いで賑わった川辺の朝は一変して静まりかえっている。蛻の殻とは面白い。
・多くの漁船に通じる景。鵜舟に限らない。

A昭和より昨日が遠し更衣
寸評)夏服に着がえると昨日がたちまち遠ざかる。昭和より昨日が遠い実感。

B一斉に蝦夷春蝉となりにけり
寸評)北海道の夏を蝦夷春蝉に感じる詩心。
・いずこも同じ里の光景

C梅雨晴間富士らしき山遠く見ゆ
・平凡

Dむらさきの吐息まひるの花菖蒲

E満天の星とささやき荘涼し
・平凡。観念的

F眩しさも昏さも湛え梅雨深し
・理屈

G梅雨雲にひつかかりさう飛行船
・平凡

Hクールビズうまく着こなし更衣
・平凡

I魂抜けしごとくに模糊と梅雨の月
・観念的


★10句の中の私の眼

☆A昭和より昨日が遠し更衣
   〜実感をうまく捉えたインパクト。
  
☆Dむらさきの吐息まひるの花菖蒲
   〜「むらさきの吐息」の表現に目がくらむ。

☆なし
   

金子兜太・選

@不束な人間ですが蟇
寸評)「が」で強く切れて、自分という人間と蟇が重なる。

A風鈴のくろがね錆びず共白髪
寸評)「錆びず」で決まる。反骨の仁と覚えたり。

B桃一つ手渡すやうに投句する
寸評)「桃一つ」とは分かったような分からないような、しかし。

C走り梅雨卆寿越えしも俺は俺

Dみどり児に草笛吹けばきりもなや
・平凡

E脱原発デモに知る顔梅雨激し

F福島の日傘は重し放射能

G新じやがのやうな拳の赤ん坊

H新茶汲む母旋律の中にあり

I瓢箪や恐妻家にて愛妻家
寸評)この亭主捨て難し。
・ほんきかしら(島倉千代子)、信じられない・・・。

★10句の中の私の眼

☆@不束な人間ですが蟇
   〜すっきりとまた的確な比喩。
  
☆B桃一つ手渡すやうに投句する
   〜おどろおどろした臨場感。

☆A風鈴のくろがね錆びず共白髪
   〜比喩の妙。

長谷川櫂・選

@老猿といふ他はなき端居かな
寸評)老いたる猿。この風情がいい。高村光雲(光太郎のの父)の同名の木彫りを思い出した。
・実感はあるけれど理屈っぽい。

A我がために五月の風といふ翼
寸評)薫風をたたえる一句。透明な大きな翼がみえる。
・「我がため」に利己性が見えてしまう。「万物に」とはならないか。

B昼寝覚緑の光ありにけり
寸評)野山の草木の光である。人の目には昼目覚めだけにみえる。

C夏が来て蔵王お釜の水青む
・稚拙な挨拶句

D朝まだき蛻の殻の鵜舟かな
・鵜舟に限らず

Eやるせなき現を離れ旅涼し

F生け捕りの蝮に買い手つきにけり
・平凡

G杖といふたのもしきもの風薫る
・平凡

H一日を二日に暮らす昼寝かな
・諺取り、駄句

I傘さして梅雨の雨音聞くもよし
・実感なし

★10句の中の私の眼

☆B昼寝覚緑の光ありにけり
   〜「緑の光」の措辞巧み。
  
☆Eやるせなき現を離れ旅涼し
   〜人間に共通の侘び。

☆なし