朝日俳壇8/29



選者
の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
掲載する以上、学ぶ値打ちがなければならない。7/18号より俳界の力量を誇る金子氏、大串氏に学んでゆく。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席、四席、十席 の秀逸句に寸評を加えている。できれば入選句すべてに寸評がほしいところ。
選句=創作でもある。

金子兜太・選

@従軍看護婦九十となり敗戦忌
寸評)終戦ではなく「敗戦」の語を選ぶ。率直万感。ご自身のことならん。


A悪者は核でなく人百日紅
寸評)まさに然り。
・百日紅(夏)。然りだが、表現が直截過ぎる。

B日曜をたっぷり生きる稲光り
寸評)思索感傷とともにある自由。
・意味不明?

C羆の字好き山山は森閑と
寸評)漢字の頼もしさを知れ。
・羆(冬)

D軍国少年地蜂に火をかけ闘へり
・蜂(春)

E泣く赤子夜明けの静寂を生き生きと
・無季

F七夕に拾ひし猫と十余年


G法隆寺をちょんちょんちょんと黒鶫(つぐみ)


H海嘯(かいしょう)の残せし一樹若緑
若緑(春)
海嘯=津波が川を上るとき垂直の壁を成す。

Iみんみんと名付けし人の偉さかな
寸評)このおとぼけ振りが暮らしの肥やし。


★10句の中の私の眼

☆@従軍看護婦九十となり敗戦忌
   〜風化させたくない一念がこもる。
  
☆Iみんみんと名付けし人の偉さかな
   〜大げさに「偉さかな」のユーモアに拍手。

☆G法隆寺をちょんちょんちょんと黒鶫(つぐみ)
   〜このひょうきんな観察も大切な諧謔。

所感:秋も半ばにさしかかるが、気象は炎天。でも蝉や虫たち、植物も確実に秋を知らせている。季語の採用について、春や冬は除外すべきである。読者も当季の俳句を期待し学んでいる。選者は、さすがに戦争体験者。「反戦」と「万物への思い入れ」は心底染みついている。どちらかといえば、自由律・口語俳句へ導き若者でも子供でも親しんでもらう、との願望は理解できる。しかし、何もかも一定の制約を外した場合、逆に簡単すぎて「醍醐味を失う」矛盾を孕んでいるので、選者はその狭間で苦しんでおられることと痛感する。


大串 章・選

@大夕焼遠き故郷を映しけり
寸評)大夕焼けをみていると、故郷のことが思われる。「映しけり」に説得力あり。

A踊りぬく幼な一人に拍手わく
寸評)大人に交じって懸命に踊り抜いた幼子。そのけなげさに拍手がわく。

B熱帯夜秋暑となりて明けにけり
寸評)今日は立秋。しかし猛暑は昨夜と全く変わらない。

C一村を潤す泉祀りけり


D万緑を一刀両断滝落つる


E山頂へつづく巨岩の赤蜻蛉


F水族館走馬燈めく魚ばかり


Gリルといふ尋ね人あり敗戦忌


H蝉時雨蜻蛉無言で泳ぎけり


I盆の月万の墓標の浮き上がる


★10句の中の私の眼

☆A踊りぬく幼な一人に拍手わく
   〜「アッ、そう言えば」の1句。
  
☆I盆の月万の墓標の浮き上がる
   〜まさに「墓標が浮き上がる」感じの盆の月。

☆@大夕焼遠き故郷を映しけり
   〜類句は多いが、「故郷を映す」に詩がある。

所感:俳句の核心を捉える唯一の選者。1句1句に詩情が漂う。芭蕉も星影で応援している気がする。