朝日俳壇8/8



選者
の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
掲載する以上、学ぶ値打ちがなければならない。7/18号より俳界の力量を誇る金子氏、大串氏に学んでゆく。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席、次点 の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。

金子兜太・選

@病み臥すや照らさぬ蛍寄つてくる
寸評)病臥の人と蛍の間に対話がある。「照らさぬ」が親しみ。

A被爆者に被爆者加わり原爆忌
寸評)「加わり」が言い得てきびしい。

B毛虫ゆく真実一路と言へば言へる
寸評)むぐむぐした毛虫の歩みに、真実一路を辿る者の姿あり。
・「言えば言える」ではインパクトなし。「言えば言え」としたい。

C牛飼が里に帰れぬ左千夫の忌


D一人づつ少年老いて広島忌
・「少年黄泉に」が実際。

Eかなかなや耳塞ぎたる猿もゐて
・平凡。

F極上を頷き合ひて喰ぶドリアン
・平凡。

G医者ぎらい祖母の信じる土用灸
・平凡。

H天瓜粉真実吾子は一貫目
・「無一物」を「一貫目」にしただけ。

I母ちゃんの足日焼けして焼大根
寸評)宮澤氏は小六。焼大根は料理名を活用。


★10句の中の私の眼

☆I母ちゃんの足日焼けして焼大根
   〜非凡な一句。母ちゃんの「足」に意外性。「焼」「焼」のリフレイン効果。しかも「大根足」を思わせる掛詞。小六の技法とも思    えないが・・・。ただ道具が揃いすぎて嫌味も感じさせる。「母ちゃんの手」くらいでよい。
  
☆@病み臥すや照らさぬ蛍寄つてくる
   〜空想の一句。選者の好みかな、このくらい俳句の幅を広げてもいいかな。

☆A被爆者に被爆者加わり原爆忌
   〜原爆被爆者の生存者は少なくなり、今年は逆に多くの原発被災者が参加、皮肉な現象。


大串 章・選

@夕焼けて鬼の笑顔や雲の峰
寸評)真っ赤な夕焼けが雲の峰を彩る。「鬼の笑顔」が豪快である。

Aふるさとにひぐらしの海ありにけり
寸評)故郷の野山に蝉が鳴きしきる。「蝉の海」と言ったところが安らか。

B逝く人のそれぞれが持つ蛍籠
寸評)蛍狩りの人たち、百年後には誰もいない。だからこそ今を大切にしたい。

C雲の峰直球勝負帽子飛ぶ


D我老いて積乱雲のごと自由


E炎天下駱駝に齢を読まれたる


F捕虫網いざ出陣の風はらむ


G黒揚羽白砂の庭の晴れ舞台


Hしたたりのしじまのなかのしらべかな


I看護婦に今日七夕と教へられ


★10句の中の私の眼

☆B逝く人のそれぞれが持つ蛍籠
   〜生きとし生ける者の儚さと哀れ。つかみ所の秀逸。
  
☆Aふるさとにひぐらしの海ありにけり
   〜喩えのとおり、あたかも波が寄せたり返したりのごとき。

☆@夕焼けて鬼の笑顔や雲の峰
   〜季重なり だが雲の峰を詠む。雷雲に発達しそこない苦笑い。