朝日俳壇9/5
選者の〜選句

朝日新聞の毎週月曜日。文芸欄ー俳壇を四選者が担当している。金子兜太・大串 章・長谷川櫂・稲畑汀子の四氏である。
掲載する以上、学ぶ値打ちがなければならない。7/18号より俳界の力量を誇る金子氏、大串氏に学んでゆく。
10句を入選とし、そのうち一席、二席、三席、次点 の秀逸句に寸評を加えている。
選句=創作でもある。
金子兜太・選
@鍬形虫(くわがた)を真似てをさな児立ちあがる
寸評)「真似て」と見る眼に、私流の言い方だが「生き物感覚」を受け取る。だいいち小児の動きをよく見ている。
Aそれぞれに孤独なしぐさ蟻せはし
寸評)着眼柔軟。
B蝉しぐれ杖つきて佇つ木のごとく
寸評)わが境涯を確と見詰めて。
C青蜥蜴枯山水に出でて消ゆ
D寸寸(ずたずた)の青春はるか長崎忌
E銃焼きし少年八月十五日
F老斑の腕に目の行く敗戦忌
G強がって夫の新盆終へにけり
H蟷螂(かまきり)や正三角形の澄し顔
I官能や一戸丸ごと蔦まみれ
寸評)その家に「官能」を感じているのだ。
★10句の中の私の眼
☆@鍬形虫(くわがた)を真似てをさな児立ちあがる
〜「〜のごとく」でなく「〜を真似て」の措辞で詩になった。「〜のごとく」では平凡。
☆E銃焼きし少年八月十五日
〜終戦記念日を迎え、戦場では狂人となって銃口を焼いた。いったいそれが何だったのか、苦い回想。
☆B蝉しぐれ杖つきて佇つ木のごとく
〜盛んに元気な蝉しぐれの中、こちらはスローモーションの動き。対比の取合わせが巧み。
大串 章・選
@洗ひ髪ひろげて海を見てをりぬ
寸評)洗い髪を風になびかせ、海を見ている。「ひろげて」が壮快でで楽しい。
A一行の露の旅信と言へるもの
寸評)「露の旅信」に、露のように儚いこの世を旅する思いが滲む。
B新盆の仏間哀しき華やぎに
寸評)親族打ちそろって故人を語り合っている。「哀しき」「華やぎ」である。
C山清水つぎ足す竹に流れけり
D雲の峰より立ち上がる雲の峰
E小波を来て秋風となりにけり
F水筒の身に副ふへこみ終戦日
G風鈴の色なき風を拾ひけり
H遊びにも倦みし頃かと西瓜切る
I鉄塊の吊り下げらるる暑さかな
★10句の中の私の眼
☆@洗ひ髪ひろげて海を見てをりぬ
〜「洗ひ髪垂らして」ではただごと。「ひろげてた」まま何かを思いながら海を見つめている、ところに含蓄がある。
☆B新盆の仏間哀しき華やぎに
〜故人への哀悼の気持ちで身内が集まった。肉親同士はこんな時しか会えないので哀しみと嬉しさが交差する。「哀しき」「華やぎ」の反語の組み合わせ、全くその通り。
☆A一行の露の旅信と言へるもの
〜たぶん一行ではないかもしれないが「露の旅信」の効果。
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