「秋」

○日暮れまで光と遊ぶねこじゃらし
ねこじゃらし(秋)
〜道ばたのそこかしこにねこじゃらしが目につく。光と風と戯れている光景。
「ねこじゃらし」を擬人化?した謂いであるところ、「遊ぶ」がやや説明的。また、文語表現にしたい。
添削例) 日もすがら光と風とねこじゃらし
◎蒼天を遠く置きたる草紅葉
草紅葉(秋)
〜力のある作家。天・地の対比が眼目。すぐ目の前の草紅葉と蒼天を見ることでは何の変哲もないので、見霽かす遠くの地平線で、草紅葉と蒼天が交わる叙景を詠った、と見たい。
添削例) 蒼天の果ていづくまで草紅葉
○赤のままところどころに白のまま
赤のまま(秋)
〜作者は選者としても活躍中。多くの句に接しているので、句作りは至難であると思う。でも写生句として手法を心得ている。植物の生態を熟知する人でなければこの句は生まれない。
「白のまま」の草名はないが、「赤のまま」とのリフレイン効果を試みた。
叙景にインパクトを与えたい。
添削例) 赤のままわずかに一つ白のまま
○紅白の玉飛びかひて天高し
天高し(秋)
〜青空に恵まれた明るい生き生きとした一句。飛びかうから天が高い、のではない。
添削例) 紅白の玉飛びかふや天高し
天高し紅白の玉飛び交へり
○逝く秋の岬ひきよせ双眼鏡
行く秋(秋)
〜「岬ひきよせ双眼鏡」の措辞に惹かれる。逝く、は誤り。口語表現であれば「ひきよせ双眼鏡」は正しくは「ひきよす双眼鏡」。文語であれば、「ひきよせ」は「ひきよす(終止形)」の連用形。連体形「ひきよする」
。また、詞を工夫して詩的に表す。
添削例) 行く秋の岬ひきよす遠眼鏡(口語)
行く秋の船ひきよする遠眼鏡(文語)
○別れぎわいたわりおうて草の花
草の花(秋)
〜年齢を重ねた人同士の光景をうまく捉えたもの。新かな遣いに旧かな「おうて」が混じる。これも正しくは「あうて=オーテと音便」
接続助詞「て」は○○となった、という結果を接続するので、このままでは「いたわりあったので、草の花がある」と解される。
添削例) 草の花いたわり合つて別れけり(口語)
別れぎはいたはり合ひぬ草の花(文語)
○辻に立つ伍長の墓や栗二つ
栗(秋)
〜二等兵でなく伍長の階級で見事に戦死した。出身の村落・親御さんは胸を張って、せめて目につく辻に
墓標を建てた。「栗二つ」を少し工夫して含蓄をもたせる。「栗あまた」で栗の実りをもたらした様を描く。
添削例) 辻に立つ伍長の墓標栗あまた
○レンジでチン風情のなきや衣被ぎ
衣被(秋)
〜現実よくある光景をうまくリズミカルに仕立てた。カタカナを用いた口語調の文体と文語「なきや」の混合。どちらかに統一したい。散文「レンジでチンする」の「する」をはぶいたもの。「で」を「の」に変えてみる。
添削例) レンジのチン風情のなきや衣被
△駅長の一人三役小鳥来る
小鳥(秋)
〜単線の駅長は、一人で主な仕事のほかに掃除、草取り、ときには花瓶に花を活けたりもする。
「一人三役」が曖昧なので、心を刺激しない。具体的にして句を立てる。
添削例) 駅長の箒の手並小鳥来る
○深む秋深き縁の葬二つ
深む秋(秋)
〜深む・・深きと反復のリズム。親戚、地縁の葬儀を深く悲しむ状景。「葬二つ」が弱い。
悲しみを深く表明するには「秋深む」にしたい。
添削例) 秋深む深き縁の葬儀かな