「夏」
4/23ー七瀬公園
☆水馬一人ぼつちの大ジャンプ
〜擬人化が成功した一句。鋭い観察。
◎霊山や花かんらんの太き芯
〜花かんらんの芯が逞しく、頼もしい感じを霊山に見立てた佳句。
◎たこ焼もお好み焼も花見かな
〜たこ焼きなどの露店が並び、それらの匂いが花見の雰囲気を醸し出す。擬人法の意外性が滑稽で面白い。
○鶯の歓迎ありてあやとり橋
〜「歓迎ありて」は主観であるが、「ただごと」。声を聞きながら橋を渡ることにする。
添削例) 鶯の唄に囲まれあやとり橋
○さみどりの空の漣樟若葉
〜一帯の若葉を「漣」とみたところ。
○駆ける子の靴の白さや風光る(類)
〜「靴の白さ」「風光る」が付き過ぎ。
添削例) 駆ける子の汚れし靴や風光る
○石庭の宇宙を乱す花弁かな
〜反語「乱す」はふさわしくない。静かな叙景を表したい。
添削例) 石庭に花弁(はなびら)ちらりほらりかな
△菜の花の化してとびたつ花菜蝶(類)
〜黄色い蝶が花の中から飛び立った。
添削例) 菜畑に紛れてをりぬ花菜蝶
△藤みとれあやとり橋にゆられけり
〜藤に見とれながら橋を渡ったところ。「藤みとれ」=「藤に見とれ」が正しい。
添削例) 藤に見とれあやとり橋にゆられけり
所 感
・「春」の季語が多い。季節が変われば当季の作品を投句すべきもの。
5/15ーコンパルホール
◎莢豌豆要るだけ採っていけといふ
〜あるある状景。臨場感たっぷり。ある程度親しくなければこうは言えない。「いふ」ならば「ゆけ」。
○国を超え即興演奏さつき空(類)
〜被災地へ来日した外国のミュージシャン。被災地としなくても鑑賞できる。
○夏の日よ終の棲家は液状化
〜「夏の日よ」=夏になっても と訴える。やはり何があったのかを記さなければ成立しない。
添削句) 夏の日よ地震の跡の液状化
○昼の蚊を鼻息で飛ばし鍵探す
〜懸命に鍵を探す鼻先にたまたま蚊が見えたが、かまっておられない状況。「鼻息で飛ばす」事実でなくてもドラマになっている。
「昼」でなくてもいい。
添削句) 鼻息で蚊を吹き飛ばし鍵探す
○言ふことを聞かぬ子となる跣足かな
〜詠嘆の終助詞「かな」の位置で意味が変わる。掲句の跣足ではなく、言うことを聞かなくなったのは「跣足の子」が主語になるべきところ。
添削句) 言ふことに耳を背けし跣足の子
○鷺の嘴逃れて育て上り鮎
〜海で孵化した稚鮎が川を上るとき魚や鷺の餌になり、成魚になるのは数%。「育て」=願望・命令 の意が籠もる。
「育て」は言い過ぎ。臨場感を与える。
添削句) 鷺の嘴逃れのがれて上り鮎
席題 : 夏服、天道虫
◎少女より女となりぬ夏の服(類)
〜衣更えした娘の大人びた体の線に目をとめた一句。感動も伴う。
○夏服を脱ぎ捨て川の空のなか
〜女性の句。自殺ならば服を脱ぐ必要はないかも。空を写した川に素っ裸で入った、といっている。であれば「川の空」は文法上不適当。夏服を脱いだこと が眼目なので、川か空のどちらかに限定したほうがいい。誰かに見られなかったか、余分な心配をしなければならない。人前であれば警察がとんでくる(80歳以上でも軽犯罪かどうか?)。
添削句) 夏服をすべて脱ぎ捨てせせらぎに
夏服を脱ぎ素裸に空青し
○夏服の子の太々と腕かな
〜母親が夏着の子の腕に驚いた瞬間。「かな=・・・であるなあ、・・・なのだなあ」。太々と腕 だなあ、ではなく 太き腕だなあ〜
となるべきところ。
添削句) 夏の服吾子の二の腕太々と
所 感
・さすがにすべて写生句を越えている。
6/13ーF公民館
●候補作品12句を選び、7句を選句。
☆ほろ酔ひの本音ぽつりと薔薇の雨(類)
〜酔ったはずみで親しい人に本音を吐く。窓から薔薇の花が雨にそぼ濡れている状景。たぶん楽しい話ではない素材に派手な薔薇を取り合わせ「薔薇の雨」とした手腕が見事。単純な写生を脱している。
◎声たかき人群去りぬ庭石菖
〜飛び交っていた高い声が消え去ったあと、庭に菖蒲が取り残されている状景。「高い声」と「静かな菖蒲」の対比が効果的。
◎花桐や仔牛寄り添ふ親のもと
〜花桐は地味な紫であるが香り高い。仔牛との取り合わせ。ほほ笑ましい一句として成立した。
○白靴にドアホンの音弾きをり
〜白靴を干してあるのか、自分が履いてるのか?。履いていて訪れた状景の方が面白い。
添削例) 白靴にドアホンの声弾みくる
○万緑の真つ只中の旅三日(類)
〜素直で緑一色の感じを詠う。「万緑の真つ只中」はよく使われるので、これに何を取り合わせてインパクトを獲得するか。
少しひねって意外性を。
添削例) 万緑の真つ只中を霊柩車
○百幹の竹のざわめき梅雨に入る(類)
〜近くの竹林。降り始めた雨音のざわめく風情。「ただごと」なので、ふっと雨が止んだ合間の風にさわさわと竹のざわめく姿を詠う。
添削例) 竹林の風のざわめき梅雨晴間
○煙る地に水満々と芒種かな
〜土砂降りの雨脚で地上がけぶる、それが溢れるような水流になった状景。言葉、季語の選択が巧み。韻律(リズム)もよい。ただし選者によれば、芒種に驟雨は当然だから「ただごと」とみる向きもある。
写生の弱点でもある。主観(心情)を入れ、
添削例) 待ちわびし水満々と芒種かな
○明易し檜の匂ふ美肌の湯(類)
〜朝早く温泉に浸かったことそのままを一句に。「ただごと」なので「梅雨最中」とし、じめじめした季節の幸せなひとときに、
添削例) 梅雨最中檜の匂ふ美肌の湯
△青嵐鷺吹き戻す七瀬川
〜浅瀬の川でよく見かける写生句。「吹き戻す」を工夫する。類句多し。
添削例) 青嵐鷺押し戻す七瀬川
△稜線を近く引き寄せ梅雨晴間(類)
〜雨の合間に煙っていた稜線がくっきりと近づいた景観。「近く」と「引き寄せ」のダブりを解消したい。また「引き寄せ」を「引きよせ」とし、句の印象をやわらかくしたい。類句多し。
添削例) 稜線を引きよせにけり梅雨晴間
所 感
1、写生句は「物をよく見て聞いてそのまま写しとる」こと、初心者のための「俳句を作りやすくなじみ易く」するための心得だが、どうしても一本調子になる。“主観(心情)“を加えないことには評価基準の含蓄・インパクトは生まれない。
2、☆ の句は、
ほろ酔ひの本音ぽつりと薔薇の雨・・・本音かどうかは客観的にわからないことであるが、作者が「本音」と思った主観が籠められている。(写生句ではこの「本音」という言葉が出てこない)
句の評価は、主観が入れば何でも評価されるわけではないが、主観が入らなければ「詩情」は生まれない。
3、たこ焼もお好み焼も花見かな ; 俳句と川柳は短歌のような「雅」にあらず「俗」を求めて親しまれてきた。大ざっぱには川柳に季語を付けたのが「俳句」。ということは「川柳的(滑稽)な感覚」も要求される。
なお、俳句は自然界のすべてを詠むが、川柳はその中の人間関係を風刺する。
4、上記のことを念頭に、朝日や毎日、読売新聞の俳壇、NHK俳壇などの俳句の傾向、また俳壇をリードしている第一線の選者の本は参考になります。
6/19 コンパルホール
兼題:合歓の花、避暑
☆合歓の花とぎれとぎれの姉の歌
〜高得点句。なんとなく頼りない風情の合歓の花との取り合わせ。発想が良い。
○麦秋や何でも研屋店開き
〜麦刈りの時期到来。昔は鎌を研ぎ澄まして待機していたが、それも全て自分で・・・。
少しの諧謔、
添削例) 麦秋や農機のローン滞り
○滝音のその只中を滝落つる(類)
〜平明であるが、「ただごと」でもある。
添削例) 滝音の真青の空へ立ちあがる
○連峰と大きな星や避暑の宿
〜宿からの景観。大と大を並べないこと、
添削例) 連峰と星のきらめき避暑の宿
◎指離れ蛍は闇に帰りけり
〜そのあとに一抹の寂しさが残る秀句。しかし類句が多い。
添削例) 指先の蛍を闇に放ちけり
◎自転車を止めて一息合歓の花(類)
〜「一息」で臨場感たっぷり。
席題:大暑、父の日
△田の水の煮ゆるにほひの大暑かな(類)
〜高得点句。きれいな説明句。
風の動きで感じを。また「大暑かな」の詠嘆は、終止形に続くべきなので、
添削例) 田の水の風ゆるゆると大暑の日
○帰り着く父の姿よ大暑かな(類)
〜実感がある一句。文語調に、
添削例) 帰宅せし父の笑顔よ大暑かな
◎石橋のおばしま低き大暑かな
〜「欄干」より「おばしま」のほうが語感がいい。発想の妙。「低き大暑」とは?
添削例) 石橋のおばしま低し大暑の日
○日記書くこと多かりし大暑かな(類)
〜書くことが多いので暑い。臨場感を出したい、
添削例) 日記書く筆滞る大暑かな
○父の日を父なるわれも忘れゐし(類)
〜そう言えばその通り。類句多し。
添削例) 父の日や沙汰なき吾子を思ひ遣る
7/9 K公民館
兼題:祭
☆笛の音に月も夜遊び夏祭り(類)
〜高得点句。詩的感性「月も夜遊び」の秀逸句。「月」は夜であるから文語調に、
添削例) 笛の音に月も戯る夏祭り
◎祭着を縫う手もはやる笛太鼓(類)
〜高得点句。臨場感豊かな秀句。「縫う手もはやる」の口語を文語調に、
添削例) 祭着の縫ふ手もどかし笛太鼓
○朝涼や親子の会話二階まで
〜親子の涼しい声が二階に届く。少し動きを持たせる、
添削例) 朝涼し回覧の声二階まで
○初孫の祭すがたを転送す
〜ほほ笑ましい現代的な一句。
○一鉢の素麺夫と星祭り
〜今は二人きりの星祭。中七の切れで取り合わせ。
7/17 コンパルホール
兼題:夏寒し、夏薊
◎看取る人看取られる人夏薊
〜高得点句。三人称の含蓄ある一句。 看取る人/看取られる人/夏薊/ きれいな三段切れなので、一人称にして看取られる人の思いを詠んでみると、
添削例) 看取られつ看取る眼を夏薊
○滴りや大河走らす三千里(類)
〜わずかな滴りが大河となって延々と走る景。大小の対比を狙う。「大河走らす三千里」は誇大を重ねれば詩的効果が半減。
添削例) 滴りやしたたりやがて滔々と
◎強がりを言ふてみる日や夏薊
〜少し鬱憤の籠もる気分と季語の取り合わせが効いている。「言ふて」→「言うて(ユーテ=音便)」
○故郷の近くて遠し夏薊(類)
〜実感であるが類句数多。年々縁遠くなってゆく、
添削例) 故郷の縁消えゆく夏薊
席題:夏料理、滝
◎飛び石を渡る下駄の音夏料理(類)
〜季語とぴったりの素材。韻律も整っている。夏料理と下駄の音 の類句多し。ひねって一物仕立てに、
添削例) 飛び石をいくつ渡れば夏料理
○滝壺に蝉の鳴く声消へて行き
〜滝壺に近づくに連れ、滝の音が蝉の声をかき消していく状景。うまく捉えている。「鳴く」は不要。
添削例) 滝壺に呑みこまれゆく蝉の声
7/22 H公民館
☆あや取りの川の向かうへかかる虹
〜あやとりをしていて「川」ができた。それをかざしたとき、その先に虹が見えた。瞬間を捉えた秀句。
◎渓に釣る緑の風に溺れつつ(類)
〜「風に溺れつつ」で詩になった秀句。
◎夏の月棚湯に浮かぶ太鼓腹
〜月を仰いでゆっくりと湯に浸かる。お腹も丸い、諧謔も効いた風流な秀句。
○ラムネ飲む幼子の瞳もラムネ玉(類)
〜比喩と滑稽味の味わい。「幼子の瞳も」が散文的。
添削句) ラムネ飲む幼児の瞳ラムネ玉
○海霧(じり)深き速吸の瀬戸帰り船
〜海の深い霧をついての帰り船。語意が 海・速吸の瀬戸・船 と重複。海を削る、
添削句) 霧深き速吸の瀬戸帰り船
○ふるさとは母のかほりや夏布団(類)
〜里に帰れば何もかもが母の香り、夏布団も。とも詠める。夏布団に焦点を置けば、
添削句) ふるさとの母のかをりの夏布団
◎万緑の中原子力発電所(類)
〜緑一色の列島に、今や不気味な原発。国民に募る不安。危ないとかなんとか言ってないが、これだけで将来に亘って訴える力がある。危険(原発)と安全(緑)との対峙の妙。
○パリー祭夫若かりきベルサイユ
〜かつて夫が若い時ベルサイユにおいてパリー祭を体験。この場合ベルサイユは不要。
添削句) 若かりし夫のアルバムパリー祭
○子規庵や絶筆三句へちま水(類)
〜当時、結核の薬はへちま水しかなかった。強い切字の取り合わせにしては「つきすぎ」。
添削句) 伊予の空絶筆三句へちま水
○万緑の渓に振り込む赤き浮子
〜焦点は万緑か、浮子か?。「赤き」は不要。「渓に降りこむ」は絶対、
添削句) 山女の瀬渓に振りこむ竿の音
◎氷河より運ばれてくる滝しぶき(類)
〜滝しぶきの水が氷河より運ばれてくる。着眼がいい。散文を改める、
添削句) 大氷河より運ばるる滝しぶき
○咎めなく無賃乗車の天道虫
〜人間とあらゆる生物の生命は対等。この思想がなければ俳句も成り立たない。作者がこの立場にあるから、天道虫を人並みに詠うことができる。このような諧謔性がなければ自在な発想ができない。
席題:片陰
○片陰に石の地蔵も移りけり
〜地蔵様が時折民家の横にある。片陰の意は、本来家の陰ではなく軒下や生垣の陰であるが、太陽の動きに伴って「地蔵が移った」ところが面白い。「地蔵も」→「地蔵の」に。
○片陰を縫ひて病む母訪ひにけり
〜陰から陰を選んで母のもとへ。実景が見えるようだ。「縫ひて」→「縫うて(ヌーテ=音便)」。
◎片陰や風吹きぬける宿場町
〜片陰の濃い昼下がりの宿場町、熱い風が吹き抜ける。片陰を客観視している秀句。
○手をとりて片陰に入る母と子と
〜女性らしく親子愛を描いた一句。「片陰に入る」が説明的。親のしぐさを、
添削句) 母が子の背に手をそへ片陰に
7/25 F公民館
◎口紅の色を変へたる晩夏かな(類)
〜高得点句。季節の変わり目、気分転換の。着想の優れた一句。
残念ながら類句の雨。ひとひねり、
添削例) 口紅の色控へめに晩夏光
☆雨あがり晩夏の風とすれちがふ(類)
〜高得点句。雨あがりの道、「風とすれちがふ」で句が立った。臨場感豊かな秀句。中七、下五の謂いが散文的なので、
類句を二三。ひねる、
添削例) すれちがふ晩夏の巷雨と風
○街路樹の枝整えて晩夏かな
〜暑さにめげずしっかりした枝ぶりか、それとも剪定なのか いずれにしても取り合わせに成功。「て」の接続助詞の用法に一考。
添削例) 晩夏光街路樹の形(なり)整然と
○戦火の記憶巡りてカンナ燃ゆ(類)
〜戦時、空襲を受けて逃げ回った記憶。「カンナ燃ゆ」との響き合い。「巡りてカンナ燃ゆ」=巡ってカンナが燃える、のではない。
表現を整える。
添削句) カンナ燃ゆ戦火の記憶かけ巡る
◎右膝のグキグキと鳴る晩夏かな
〜オノマトペは臨場感を生む。「鳴る」が余分。
添削句) 右膝のグキグキグキと晩夏の夜
◎揚羽蝶恋の道行きふわりふわり
〜恋心を絶やしてはいけない。これも擬態語の効果。「ふわりふわり」の字余りが気にならない限りない含蓄を・・・。せつなさと一抹の不安の同居。作者のゆとりある人柄が伺える。
○神官の音もなく居し秋の宮(類)
〜森閑とした宮にいる神官。語意の重複を避けたい。時候にとらわれず植物でもいい。季語にも一工夫、神に対し仏の文字を置き、語句を入替えて詩的に、
添削句) 音もなく神官の居し仏僧花
△緑陰に宴の朝の十四人
〜十四人が昨夜から宴を続けている状景という。人数を正確に表すと報告・説明句になり、詩的情緒を失ってしまう。内容によっては作品に成りがたいものがある。敢えて句にするならば、
添削例) 緑陰に宴の輩夜を明かす
△廃屋の主となりてのうぜん花(類)
〜着眼点はいい。句意は「のうぜん花が廃屋の主になっている」なので、このままでは、廃屋の主となってのうぜん花 では「(自分が)廃屋の主になって、のうぜん花が咲いていた」となり句が成り立たない。主人公をのうぜん花に、
添削句) 廃屋の主となるやのうぜん花
△天界に身内もふえし盆の月(類)
〜縁者が次々と亡くなった心情。「身内もふえし」が説明調。
添削句) 天界に身内増えゆく盆の月
![]()
![]()