キムケン先生 番外編 反生徒会同盟解散 -------------------------------------------------------------------------------- [1119] Re: 3年B組キムケン先生(秋のスペシャル:反生徒会同盟解散)その1  投稿者 : 有我 投稿日時: 1999年10月26日 14時46分 ひたひたとせまり来る「黒い軍団」にまだ誰も気付かない平和な日々、 しかし日に日に冷たさを増す秋風が反生徒会同盟にも冬の到来を告げ始めた。 まず、空手部顧問の青柳先生が何時の間にか解雇され知らない内にいなくなっていた。 ついで演劇部顧問のカブキ先生が定年で退職。 今日はカブキ先生の送別会、その席上での事。 「さあ、飲めって、飲めって!」サムライ先生が場を盛り上げようと気を使い、 酒を注いで回ってもやはりどこか別れの寂しさが漂う席だった。 と、そこへどこからかカッポンカッポンという鼓の音と雅楽の調べが流れて来た。 「お、来たな。」カブキ先生がニコニコして云うが早いか、 ふすまがいきなり開いて顔にペイントした男が現われた。わあ、と驚く一同。 「いやあ、すまんすまん紹介するよ。息子のムタ夫だ。」 あいかわらずカブキ先生はニコニコして云った。「これ、ムタ夫、あいさつせんか」 ムタ夫は照れているのか、側転エルボーで床の間の柱に激突したりしている。 「いやどうも、成りはでかくてもまだまだ子供で、」 「いえいえ、立派な息子さんで…」ムタ夫は誉められてうれしいのか、今度は 天井に向かって毒霧を吹き始めた。「こらっ!毒霧はあまり吹くなと云ってるだろう」 ムタ夫は怒られて悲しいのか、のどに手を当てたポーズのまま後ずさりして出ていった 「定年は仕方ないですが私もあんなの抱えてこれからどう生きればいいのか、 先行き不安でたまらんです」またしんみりする一同。 「いやまっ、今夜は忘れてパアッとやりましょおって!ほら、キムケン先生、 歌、歌。カラオケでパアッと盛り上げろって!」     (続く) -------------------------------------------------------------------------------- [1121] Re: 3年B組キムケン先生(秋のスペシャル:反生徒会同盟解散)その2  投稿者 : 有我 投稿日時: 1999年10月26日 15時27分 「御指名とあらばこのキムケン、のども破れとばかりに熱唱させていただきます。 今宵、私、マイマイク持参で気合いが入っております。では聴いていただきましょう おなじみ、『らしくもないぜ』!」待ってました!!の声が飛び交う。 やんやの歓声。しかし2コーラス目を待たずにもう誰も聴いてないのだった。 ♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪ 「ふんどし先生、話しがあるス。」空手部の斉藤君があらたまってひざをつめてきた。 「ふんどしじゃないって!越中だって!!」 「どっちでもいいス。実は学校やめる事にしたス。一身上の都合ス。」 「な、何だって!か、考えなおせって!卒業しろって!」 「決心は固いス。ふんどし先生にはお世話になって申し訳ないスけど。」 「ふんどしじゃないって!」「どうでもいいス。」 「そうか、斉藤くんと私の送別会になってしまったね。」 カブキ先生が優しく云う。「ね、サムライ先生、気持ち良く送りだしてあげましょう」 「し、しかし」と、そこへ今まで黙って酒をあおっていた小林先生が 「えっちゅう、実は俺も‥」ととんでもない事を言い出した。 「エッ?!エッ?!な、なんだって!実は俺もなんだって?!」 小林先生は深くため息を付きながら静かに云った。 「実は俺もやめるよ‥」 「ありがとうございます。『らしくもないぜ』でした。続きまして‥」 なかなかマイクを離さないキムケン先生だった。    (続く) -------------------------------------------------------------------------------- [1122] Re: 3年B組キムケン先生(秋のスペシャル:反生徒会同盟解散)その3  投稿者 : 有我 投稿日時: 1999年10月26日 16時26分 「続きまして聴いていただきましょう、『さよなら挽歌』」 イナズママークの入ったマイマイクをぶいぶい言わせ、誰も知らない名曲を 熱唱するキムケン!しかし聴くどころか、お義理の拍手すら誰もしないのだった。 ♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪ 「おう、お前ら、」「あっ、坂口理事長来てくれたんですか!」 「おう、顔だけ出そうと思ってな、これ、闘魂先生から差し入れのひまわりナッツだ。 それから‥」内ポケットから封筒を取り出し、「これ、少ないけどカンパな。」 じゃこれで、と坂口理事長は帰っていった。「いいとこあるスねえ」と斉藤君。 「だろ?うちはなんだかんだいってもあったかいんだよ、な、だから考え直せって」 「それとこれとは別ス。」「まあいいさ、それより早速喰おうぜ、ひまわりナッツ。」 「じゃ、あけるス。…あっ!これだめっス。」「ん?どした?」 「賞味期限が切れて8年も過ぎてるス…」 そのとき一同はダーッハハハハハ!という笑い声を確かに聞いたのだった。 「思わぬ邪魔が入って話が途中だったって!小林!どうゆう事だって!」 「すまん、俺はもう身体が続かん。」「………」 「別に斉藤やカブキさんに便乗したわけじゃないんだ。前から考えていたんだよ。 今の俺じゃ皆の足を引っ張るだけだしな。それに最近唯一の道楽だった、 『小林邦昭のプロレス質問箱』も閉鎖されるし気力の方もなあ。もう教師はやめて 用務員の小鉄さんがやっている店でも手伝うつもりなんだよ。」 ウンウンと頷くカブキ先生、他の者はみな、うなだれている。 「も、もうおしまいだって‥もう解散するしかな、ないって‥」 サムライ先生が声を押し殺して泣き出した。あちこちですすり泣きも聞こえる。 通夜の様な席になってしまった。       (続く) -------------------------------------------------------------------------------- [1123] Re: 3年B組キムケン先生(秋のスペシャル:反生徒会同盟解散)その4  投稿者 : 有我 投稿日時: 1999年10月26日 17時25分 「みんな!俺の歌に感動して泣いてくれてるのか!!いやあ歌手名利に尽きるなあ。」 ひとり幸せなキムケンだった。 「じゃあ、次はがらりとムードを変えてノリノリなナンバーいきますかあ。 お待たせしました!ノッて下さい、踊って下さい、『デュオ・ランバダ』、 レッツゴーダンシング!!」 勿論、踊る者などいないのだった。 ♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪・♪ 狂った様に腰をグラインドさせ歌うキムケン。そしてうなだれるみんな。 なんと切ない場面だろうか。救いはないのか、いや、ひとりの男が立ち上がった。 「みんな!泣いてちゃダメだ。俺達は気持ちじゃ負けない、そうじゃなかったのか? 確かに今日で同盟は解散だ。しかしそれは同時に新たなる門出じゃないか! 門出に涙は禁物だ、さあ、みんな立ち上がって踊ろう!」カブキ先生だった。 「どうしました?みんな、私だけでも踊りますよ!!」 カブキ先生の踊りはどう見ても阿波踊りだった。しかし必死に踊る姿は 胸を打つものがあった。「ようし、踊ってやるって!」 サムライ先生も立ち上がった!「みんな!同盟最後の心意気を示すんだって!!」 「おおっ!!!」遂に全員が立ち上がった。そして踊り狂った。 いつの間にかムタ夫も加わって親子毒霧競演を見せる!サムライ先生はケツダンス、 斉藤君は正拳突きを繰り返している。小原君はランニングエルボーで お膳をメチャメチャにし、その上で後藤君が吠えている。 みんな泣きながら笑っている。みんなバラバラな事をしているのに 妙な統一感がある。これぞ反生徒会同盟の真骨頂だ。 そして、本人はまったく気付いてないがまたしてもキムケンの歌が みんなを救ったのだ。凄いぞ、キムケン!やっぱ最後はキムケンだね。(続く) -------------------------------------------------------------------------------- [1124] Re: 3年B組キムケン先生(秋のスペシャル:反生徒会同盟解散)エピローグ  投稿者 : 有我 投稿日時: 1999年10月26日 18時30分 誰もいない放課後の校庭に佇む二人の男。 「終わったんですねえ。」「ああ、終わったって。」 「本隊はどうです?うまくやってますか?」 「教頭が以外と気を使ってくれてねえ、いままで好きやってきたから申し訳ないって」「サムライ先生は実力がおありだから。他のみんなはどうですか?」 「小原と後藤はグレちゃいましてね、影で俺の悪口を云ってますよ。小林先生は 小鉄おじさんとうまくやってる様でひと安心ですって」 「それはなにより。こちらは青柳君からようやく便りがきましてね。元気そうでした。 斉藤君だけどこでなにしてるのやら、わかりませんけどね。」 「あいつは根性が据わってるから。心配ないって」 「それともうひとり(笑)」 「キムケンですか(笑)相変わらずですが小原達をやたら心配してます、 ガラにもなく。」 「あはは、やはり笑わしてくれますね。あの人には随分救われました。」 「いや、まったく。‥ねえカブキ先生、反生徒会同盟ってなんだったんでしょう。」 「いまここで総括する必要はないでしょう。人生は長いんですから。ただ言えるのは 我々は充実した毎日を送っていた、それだけでいいじゃないですか。」 「そう、そうですな。いやこりゃまいった、ははは。」 「サムライ先生」カブキ先生は改まった口調で云った。そしてサムライ先生の 手をにぎりしめた。「教師最後の日々をお陰様で本当に楽しく過ごせました。 ありがとう、本当にありがとう。これでお別れします。お元気で」 「カブキ先生もお元気で」カブキは最後の毒霧を吐いて見せ、静かに立ち去っていった (クレジットロール、そしてエンドマーク) 3年B組、キムケン先生ーー!     「イナズマッ!」   (本編に続く)