お聴きの曲は…ベートーヴェン『交響曲第9番 ニ短調 Op.125』
第4楽章より メインテーマです。

9番目の交響曲





 交響曲とは、まずハイドンが形式を作り、モーツァルトが様式を発展、確立させ、更にベートーヴェンが完成させた楽曲です。

 そして、『第九』といえば、ベートーヴェンの交響曲第9番。
 そもそも、祝典などで演奏される機会の多い曲で、祝賀的で厳粛な曲であるようです。
 ワーグナーもバイロイト祝祭劇場の竣工式に『第九』を演奏しました。そういう曲なんですね。

 日本の年末も、どういうわけか『第九』ですねぇ。
「悩みを突き抜け、歓喜に至れ」
というわけで、よいお年をお迎えくださいという意味合いで演奏されるんでしょう。
 日本がまだ貧しかった時代、オーケストラの団員が、年越しのお金を稼ぐ為に、演奏会に『第九』を演奏したのが始まりとされています。

 それだったら時期的にも『クリスマス・オラトリオ』がよさそうな気がしますが、ベートーヴェン、人気ありますからねぇ。ハイドンよりベートーヴェンの方がお客さんを呼べると踏んだのかもしれません。

 しかし、本来の祝祭的な意味合いからは程遠く、年末に『第九』を演奏することが“イベント”と化しています。

 長野オリンピックの開会式でも、『第九』が演奏されましたが、
「また『第九』か、と思う向きもあるでしょうが、オリンピックこそ『第九』がふさわしい」
 と、指揮者の小澤征爾さんがおっしゃって、実際その演奏は好評を得ていました。

 そう、『第九』は祝典にふさわしい曲なのです。





 そんな『第九』ですが、ベートーヴェン以後の作曲家達は、何故か交響曲を9番目まで作曲すると、亡くなっているのです。

 後期ロマン派オーストリアの作曲家マーラーは、そんな『第九』の呪い(?)を非常に恐れた人でありました。

 グスタフ・マーラー Gustav Mahler は激しい気性の音楽家で、指揮者もしていたのですが、様々なところで人と対立し、オーケストラの団員に総スカンというか、ボイコットをされたこともあったそうです。
 しかし、内面はとても純真で、晩年には夜中に線路に横たわって、遠くから迫ってくる汽車の音を聞きながら自殺者の心理を想像したり、春の若葉に口づけして涙したり、といった人であったようです(個人的には…お近付きにはなりたくないですね…)。

 そんなマーラーは、ベートーヴェン、シューベルト、ブルックナー(ドヴォルザークも)などが『第九』まで書いて亡くなってたことを恐れ、9番目の交響曲はNoをつけず、『大地の歌』という題をつけたのです。

 しかし、マーラーもそんな自分の弱さを克服しようと、迷信を打破するために、ついに9番目の交響曲、『第九』を作曲、10番目の交響曲にも着手しましたが、なんとしたことか、ついに完成を迎えることなくこの世を去ってしまいました。。。

 哀れなり、マーラー。





 しかし、その【『第9』の呪い】とは本当に存在するのでしょうか?
 各時代の音楽家達の作曲した交響曲の数を調べてみました。(音楽之友社 標準音楽辞典参照)


古典派
ハイドン(1732〜1809) 108曲(ハイドン協会版作品全集だと104曲)
モーツァルト(1756〜1791)  41曲
ベートーヴェン(1770〜1827)  9曲


ロマン派
シューベルト(1797〜1828)  9曲
メンデルスゾーン(1809〜1847)  5曲
シューマン(1810〜1856)  4曲
リスト(1811〜1886)  交響詩のみ
ブラームス(1833〜1897)  4曲
サンサーンス(1835〜1921) 3曲
   
国民楽派
スメタナ(1824〜1884)  交響詩のみ
ボロディン(1833〜1887)  3曲
ドヴォルザーク(1841〜1904)  9曲
シベリウス(1865〜1957)  7曲
   
後期ロマン派・印象派
ブルックナー(1824〜1896)  9曲
チャイコフスキー(1840〜1893) 6曲
マーラー(1860〜1911)  9曲
ラフマニノフ(1873〜1943)  3曲
レスピーギ(1879〜1936) 交響詩のみ

現代音楽
プロコフィエフ(1891〜1953)  7曲
オネゲル(1892〜1955)  5曲
ミヨー(1892〜1974)  10曲
ショスタコーヴィチ(1906〜1975)  15曲

未完なものは含まれません。
ベルリオーズ
(1803〜1869)の幻想交響曲は標題交響曲に分類され、交響詩はリストが始めた1楽章形式の標題音楽をいいます。





 近代に入って、ミヨー、ショスタコーヴィチがクリアするまで、その迷信は健在だったようですね。作曲年からすると、先に『第9』の呪いを乗り越えたのはショスタコーヴィチのようです。

 偉大なりショスタコーヴィチ!!
 ひそかにスターリンの体制に反対した作曲をしていただけのことはある、たくましいメンタリティ!!

 マーラーが亡くなったのは、その気弱さから迷信の落とし穴にはまってしまったんでしょう。

 マーラーの魂よ、安らかなれ。



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