荒沢山/ダイレクトスラブ(1999.6.12)メンバー:木元、原(ARIアルパインクラブ)



 趣向を変えて、というか、マニアックなところを好む木元さんに刺激され、上越の荒沢山に行って来た。

 荒沢山は足拍子岳の隣に位置しており、ダイレクトスラブは荒沢山の足拍子川側に面している。アプローチは足拍子川本谷を詰め、その支流であるホソドー沢に入り、一つ目の二俣がダイレクトスラブである(ダイレクトスラブ側は壁ですがね。)。この時期にして、途中からダイレクトスラブ取り付きまできちんと雪渓が残っていた。

 取り付きのスラブは立派で、ここにフリーのルートを拓いたら面白いのではと思ったが、現行のルートは右側の草付き(というか藪)を回り込んでいく。一見してノーザイルで行けそうだったので、そうする。初めは木登りピッチという感じだったけど、途中から完全な藪漕ぎとなり、しかも傾斜は結構きつく、足元もドロドロ。手だけで急傾斜にぶら下がっている感じ。握力を消耗し、変な疲れ方をする。

<ダイレクトスラブ上部>
 ひたすら急傾斜の藪漕ぎを続け、そろそろと言うところで左側のカンテを乗越してスラブに戻る。この乗越は岩が脆く少しばかり嫌らしい。
 スラブに戻ったところで上を見上げると二俣に別れている。ここが下部スラブのどん詰まり。一見してノーザイルでいけそうだが、二俣の先の様子が見えず、さらに登山体系にはここがW級のグレードがついているし残置ハーケンもあるのでので一応シングルでザイルを出すことにする。が、結局ここも何のことはなかった。ノーザイルでもいけた。木元さんは「う〜ん、オールフリー記録を逃してしまった・・・」と、呟いていた。僕も同感。ちなみにリードは木元さん。

 二俣から先は右側のルンゼを詰める。それはさらに二つに分かれ、結局上部は左、中央、右とルンゼが3つ走っている。我々は頂上直下に出ることが出来る中央ルンゼを詰めることにする。ここも全てノーザイル。傾斜も緩く、岩も硬く、気持ち良くフリーソロ!(こう言うと、かっこええ〜って感じですよね。木元さん)9時少し前に荒沢山の頂上を踏んだのでした。(ちなみに駐車場発は5時ちょっと過ぎ)

 それにしても、なぜ「わらじ」のペアはこんなところを下から上まで10ピッチ以上も切ったのだろう、と首を傾げる。おかげで彼らは登攀にべらぼうな時間がかかっている(参考:「わらじ」の会報。頂上16時で下降にはヘッドランプも使用)。考え方の差、あるいはパートナへの配慮なのだろうけど、ある程度の技量が備わっていればここはノーザイルでとっとと抜けるのが正解だと思う。

 頂上で大休止。ここは360度のパノラマで非常に気持ちよい。足拍子はもちろん、谷川岳、一の倉岳から巻機、苗場山等の上越の山々がくっきりと見え、最高であった。

<荒沢山頂上>
 下降は前手沢を下ることにする。稜線を中里方面へしばらく歩き、前手沢が突き上げるコルから下降。当然、踏み跡などあるわけはなく、降りれるかなあ・・・、と迷う。まあ、いざとなったら懸垂するか!と決心し、藪をつかみながら急降下する。が、すぐに滝が現れ玉砕。右岸方面へトラバースし、適当なところで木を使って懸垂。雪渓に降り立つ。しかしこの雪渓もすぐに途切れ、また沢沿いの下降。しばらくいくとまたもや大きな滝。これも右岸へトラバースして懸垂。 という感じで、懸垂、藪の急降下、雪渓下りを繰り返し、足拍子川出合へ。駐車場に12時過ぎに到着。

 湯沢の温泉に入り、食事をし、まだ渋滞がひどくならないうちに関越を東京に向かった。

 一の倉の様に良く登られたルートだとアプローチもルート上もある程度先が予想できてしまうが、今回の様に取り付く者が少ない岩場では何が起こるか分からず、まさに冒険山行的で僕は大好きである。最高にいい気分の日曜日であった。木元さん、またマニアックなところ行きましょう。

 そうそう、松永さんが(僕はあまり喋ったことはありませんが・・・)この荒沢山ダイレクトスラブに行きたい、とおっしゃってるそうなので、みなさん「世にも希な好ルート!」とコメントして差し上げて下さい。ゆめゆめ「藪漕ぎ急ピッチ」があった、などとは言わないように。

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