I Say A Little Prayer by Aretha FRANKLIN
(小さな願い / アレサ・フランクリン )
〜ソウル・R&Bの女王〜
学生運動が華やかだったころ、まだ、世界中がWorld war U後の激動の中にいた60年代後半、70年代前半に活躍したアーティストの中でも、いわゆるブラックミュージックの女王ともいうべき人がこのアレサ・フランクリン。
当時、アレサは確実に日本にも影響を及ぼしていた。
僕には50過ぎの叔母がいて、彼女も若かりし日はアレサやオーティス・レディング、テンプテーションズなどが大好きで、よく聞いたそうだ。そんな洋楽がポピュラーでもない当時からR&Bを愛したかっこいい叔母を持っていることもなんだか誇らしいのだけど、今のように外国との行き来も気軽ではない当時でも、こんな音楽が日本の一部のフリークにも聞かれていたのかと思うと、なんだかわくわくする。
叔母は当時、よく赤坂の「無限」や「ビブロス」というカウンターバーのあるライブハウスに通ったそうだ。そこでよくアレサなんかを聞いたらしい。今でもあるのかな・・・。
思えばこの時代は本物のソウルシンガーがいたのだなと思う。今のように売れ線を意識したビジネスライクな声と曲作りではなく、このアレサにしてもオーティスにしても、ソウルというその名のとおり「心の叫び」として歌うシンガーが、確実に存在した。
そう言ってみれば、たとえばマヘリア・ジャクソンなんていう伝説的なゴスペルシンガーもこの時代の人だ。
そういうアレサも、実は有名な説教師を父にもち、ゴスペルの影響を強く受けて育った。決して美声ではなく、ハスキーで洒落た声でもなく、どことなくファンキーな部分もあって、それでも心に響いてくるのは、幼児期に彼女が浸ったゴスペルが確実に影響しているのだろうと思う。うまい、のだ。結局。
この曲「I Say A Little Prayer」はアレサのデビューから7年くらいたった1968年のアルバム「Aretha
Now」に収録され、シングルカットされたヒットナンバー。実はアレサがシングルカットする前年にディオンヌ・ワーウィックっていう高名なアーティストがヒットさせているのだけど、ヒットが出た翌年に同じ曲をカバーしてまたもやヒットさせてしまうなんて、本当に力のあるシンガーにしかできない業だ。むしろパンチの効いたアレサのパフォーマンスの方が、前年のディオンヌのそれよりも支持を得たようでもある。
アレサはこのほかにも、ビートルズのヒット曲としてあまりにも有名な「Let It Be」なんかもソウルフルにアレンジしている。彼女の手にかかると、オリジナル曲とはまったく別の曲になり、味が深くなるというのも魅力の一つ。
日本でもR&Bと称するグループが続出し、大衆化してきているけど、本物のソウル・R&Bに触れたいのならアレサはまず聞くべきだろうと思う。
Produced by TThara
戻る
トップページ(ミクロ・コスモス)に戻る