谷川岳/一ノ倉沢/衝立岩/ダイレクトカンテ
(2001.6.3)
メンバー:鈴木(輝)、恩田、原
(ARIアルパインクラブ)

 これまで谷川の記録は「登っただけ!」って感じで書く気にならなかったのだけど、「なんで谷川の記録ないのじゃ!」「谷川の記録も見せて!」との御要望もあり、書くことにした。ああ、なんて寛大な心の持ち主!これからはなるべく書くようにします。

 で、今回はこの前行って来たダイレクトカンテの記録。この日はダイカンの当たり日で、なんと5パーティーも取り付いていた。しかも、遅い・・・。


<2ピッチ目の取り付きから見下ろす。降りようかな・・・>
 6月3日(日)晴れ
 前日は友人の結婚式に出席しているため、この週は日曜日のみ山に入ることにした。当初、錫杖か谷川か迷ったが、結局近い谷川になった。
 0時過ぎに登山センターに到着。そのまま秘密の場所で寝酒にビールをのみ、就寝。翌日は晴天で混雑を予想し、3時半起床。車で出合いまで移動し、4時半ちかくに一ノ倉に入る。辺りはすでに明るかった。
 さて、この時期はヒョングリもなにもかも雪渓で埋まっており、テールリッジへのアプローチは早い。テールリッジ自体もかなり上の方まで埋まっており、楽チンである。いつものごとくテールリッジの急登にあえぎ、どん詰まりまで。この時間なら一番乗りかなと思ったのが甘かった!すでにアンザイレンテラスに1パーティーいるではないか!でもま、1パーティーくらいならいいや、と思っていたら、なんと5人のおじさま・おばさまパーティーがアンザイレンテラスめがけてトラバースを始めた・・・。げ・・・・。まさかみんなダイカンじゃないよね・・・、との悪い予感は的中。一気に顔から血の気が引くのであった。

 しかし他のルートに転進といっても、この3人パーティーで行けるルートはすべて行き尽くしている感があり、渋々我々もアンザイレンテラスに向かってトラバースをすることにした。アンザイレンテラスにたどり着くと、丁度先行パーティーが懸垂をしているところだった。
 さて、ここから「ウェイティング・クライミング」の始まり。まず、アンザイレンテラスで先行の5人様が行くのを待つ。5人のうち3人が1ピッチ目を登り初め、支点が一つ空くのを待って懸垂。1ピッチ目取り付きにたどり着き、今度は5人のうち2人パーティーが登り切るのを見てスタート。3人なので、原がオールリードで行く。
 1ピッチ目:原リード。何のことはないWのフリークライミング。階段状を上がり、すぐに左にトラバースし、また若干凹角状になっているところを上がる。支点もある。一段上のバンドに上がり、今度は水平に左へトラバースして終了。
 と、思ったら、2ピッチ目終了点、僕が入るスペースがない!すでに1番目のパーティーは上に行っているだろう、と思ったら・・・。まだ登っている。見ていると遅々として進まない。ありゃりゃ、悪い予感は的中・・。仕方ないので安定している場所でビレイポイントが空くのを待つ。
 どれくらい待ったかな・・・。やっと一番目のリードが2ピッチ目終了点にたどり着き、フォローが登攀開始。即座に5人のうちの3人パーティーがその後に続く。この3人パーティーのリードの男性は、昨年我々がミヤマを登っているときにもこのダイカンを登っていた方だった。「お懐かしゅうございます」と挨拶。この男性は慣れているだけあって早かった。先行パーティーのフォローを散々あおっていた。「やれやれ〜!」ってなもんだった。
 さ、やっとビレイポイントに入れたわ!うふ!と微笑み、ビレイオフのコール。フォローの二人もなんなくクリア。2ピッチ目取り付きで3人揃った。
 ああ、しかし、先行パーティーは進まない。テラスに腰をかけ、居眠り。それも飽きると、こんどは「墜落ごっこ」と、壁に身を投げ出して手足をバタバタさせる遊びに興じる。これも飽きて時計を見ると、なんとそろそろ2時間待ちになるではないか!
 「・・・、降りる?」
 「・・・うん・・・」
 と、恩田と原はもう既に白旗モード。ええい、ダイカンなんていつでものぼれるわい!とっとと降りて温泉入ってビールをかっくらおうぜい!と盛り上がったのだが、諸事情によりなかなか登攀のチャンスのないテル君は、
 「・・・登りたいっす〜・・・」
 で、こういう時は前向きなことを言うヤツが多数決に関わらず勝つわけで、つまり登攀続行となる。
 さて、二時間待ちの結果時計は9時を回り、やっと先行パーティーが抜けて2P目に突入。

<4ピッチ目の出だしをリードする原>
 2P目:原リード。出だしはフレークをつかみながらフリー。ハングの下に回り込んで人工が始まる。人工になってからすぐに一手遠いところがあった。ハングの下をトラバースするように進み、コーナーに入る。ハーケン、ボルトは老朽化しており、誰がババを引くのかな〜ってな感じだった。途中、完全フリーになるところが2カ所。壁が立っているのできわどい。でも、面白い。先行パーティーとの距離を確認しつつ、終了点手前で若干待ち(^^;;;、終了。終了点手前の岩は若干浮き気味だった。いつか崩壊するのだろうな〜。
 2ピッチ目終了点はなんとか2つ支点が取れるし、3人くらいはバンドに乗れるので、先行パーティーのリードが登り始めたところでビレイオフ。フォロー開始。恩田さんもテル君もなんなく登ってくる。結構早いので「リードする?」と聞くと二人ともブンブン首を横に振っていた。なんでや〜・・・、二人ともリードできるくらいうまいじゃないか〜・・・、と思いつつも、じゃあオールリードでいったると覚悟を決める。ちなみに先行が詰まって、恩田さんもテル君もビレイポイントの下でしばしウェイティングタイムを堪能したのでした。
 3ピッチ目:原リード。コーナーをそのまま詰め、カンテを乗越す。乗越したところが終了点。だいたい30mくらい。このピッチもハーケン、ボルト共に老朽化が進んでいる。また、終了点直下のトラバース気味のところのハーケンの間隔が遠かった。終了点はスタンスが乏しく、アブミビレイ。支点はしっかりしている。このピッチも終了点手前で待たされた・・・。
 4ピッチ目:原リード。出だしはトラバースというより、右上という感じ。人工から突如Wのフリーになり「およ・・・」と思うがよく見るとガバガバ。でも高度感は満点!フリーで右上しつつ、最後の6〜7mは完全なトラバース。支点はあるので、思い切っていける。終了点は立木で取る。
 当初、このペースじゃあ終了点は15時かな、と思っていたが、14時前であった。でも、中央稜にもわんさか取り付いていたので、北稜懸垂も混むだろうな〜と思っていたら、案の定、であった。でも、ダイカン終了点からは3回の懸垂で略奪点に降りられるので楽チン。丁度我々が下るときに上から降りてきたパーティーはAC横浜の方々だった。いや、どうもどうも、と和む。山の世界は狭いな〜、と改めて感じた。

 略奪点からはリッジ沿いにおり、藪漕ぎをして雪渓も衝立前沢の懸垂も全部エスケープする近道をとり、先行をゴボウ抜きして出合へ。いやはや時間を食ったが、完登した充実感はやはり格別。湯テルメで汗を流し、めちゃくちゃうまいビールで喉を潤し、帰路に着くのであった。



 




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