滝谷/ドーム/中央稜(2000.8.19〜20)メンバー:塚本、豊山、原(ARI)、石崎(太田労山)

 ずっと行きたいと思っていたドーム中央稜に行くこととなった。今年は仕事の関係から夏休みが7、8月中に取れず、週末山行のみの夏なので、滝谷も週末に一本だけとなった(^^;;;。こんな忙しい山行につきあってくれたのは、我が会の新人、塚兄ちゃんと豊山、それと、最近めっきりARIとの山行が増えている太田労山の石崎さん。石崎さんは食事係までやってくれた。

<穂高平小屋で。左から石崎、塚本、豊山>
 8月19日(土)晴れ(夕方にわか雨)

 天気予報がパッとせず、他のパーティーが続々と山行をキャンセルする中、我々も谷川に転進なども考えたが、事故の事などを考えて予定どおり滝谷に入ることにした。原にしては珍しく、金曜日は20時に退社。そのまま家から有持邸によりテントを借り、相模湖へ23時15分に到着(霞ヶ関〜戸塚〜有持邸経由で相模湖までが3時間!神業!)。約束の時間より15分遅刻であるが、遅刻の王者の原はみんなから誉められる(^^;;;
 当初、涸沢経由にするか、新穂高から白出乗越を経由して滝谷に入るか迷ったが、初日登攀の可能性がある新穂高経由で入ることにした。よって、車は新穂高に向かった。
 新穂高に3時過ぎに到着。4時まで仮眠し、5時半に出発。林道を歩き始めると、かなり奥まで車が入っていた。この悪路も僕のパジェロ君なら余裕だったろうなあ、と恨めしく思いながら闊歩し、穂高平小屋へ。まだ開店しいていなかった。
 そこから半時間もあるくと、白出沢出合いの避難小屋。ここから長〜い登りに入る。やや傾斜の緩い登山道を終え、沢筋に降り立ち、ちょっと悪いヘツリを通って滝を巻き、ガレ場に出る。ここからの登りが本番。と、遅れてきた豊山の様子がおかしい。なにやら顔色がよくない。気持ちが悪い、という。
 「降ります」という豊山であったが、ここから一人で降ろすのもなんなので、荷物をみんなで引き取り、空荷同然で歩かせることにする。これなら、なんとか歩けるようだ。僕の荷物は重さ倍増だったけど、ボッカトレと思えばなんて事はなかった。それに調子も良かったしね。
 黙々とガレ場を詰め、白出乗越を目指す。小屋が見えてからが長い。なかなか近づいてくれない。結局、原が11時に白出乗越に到着。次に30分ほど遅れて石崎嬢が到着。最後に塚本、豊山が到着。しかし、キツイ登りの後に涸沢始め穂高の絶景が一気に開けるこのルートはなかなか爽快である。
 一休みし、北穂へ出かける。あまりにも調子が悪いようなら豊山は穂高岳山荘に置いて行こうかと思ったが、「行けます」ということなので一緒に行くことにする。涸沢岳を越え、悪い鎖場を下り、北穂の登りにかかる。途中、三尾根の下降点を探しながら行く。霧で視界が効かなかったが、注意深くあたりを観察し、下降点を発見した。原が偵察に少し下ると、日本のクラシックルート集の写真と同じ箇所が出てきて、ここが下降点だと確信。一般道に腐ったロープと鎖が張ってある箇所の直下であった。
 しかしここで雨がぱらつき始める。メンバー全員の体力を考えても、今日中の登攀は無理なので、北穂のテント場を目指す。結局、テント場に15時過ぎに到着。テントを張ると本降りになった。
 しばらく待つと小降りになったので、北穂の小屋へ水をくみに行くついでにビールを飲みに行く。ビールはとても旨かった。その後、石崎嬢の用意したウナギ柳川鍋風を堪能し(ウナギとナスが最高だった!)、それぞれ持参したアルコールで大宴会を繰り広げ、6時過ぎには深い深い眠りについた。月明かりが異様に明るかった。

<5ピッチ目をリードする原>
 8月20日(日)晴れ

 土日の二日間でドームを登るという強行なので、日曜日は3時起床、4時出発とする。豊山が体調不良を訴え、テントで留守番をすることとなる。原は一人ガツガツと朝食を食べ、無線機を一個豊山に渡し、「きちんと寝て、食べれるようなら食べて下山に備えるように!」と言い渡し、塚兄ちゃんと石崎嬢と三人でドームにアプローチする。ザイルが3人で二本なので、ちょっと軽い。
 昨日、当たりを付けておいた下降点から滝谷に下る。出だしは踏み跡が付いているが、そのうちに消え、悪い岩場の下降を交えてトラバースし、三尾根に出る。そこから三尾根上を忠実に下ると、ペツルのハンガーボルトが二本打ってある懸垂支点が現れる。ここからドーム基部の広いバンドまで懸垂。トポでは25mだが、ぎりぎりなので念のため二本で懸垂した(たぶん、50m一本でも足りると思う。)。ここからバンドを踏み跡に従ってテクテク歩いていくと、ドーム中央稜の取り付きに出る。ハーケンが3本くらい縦に打ってあり、支点とする。シュリンゲはかかっていなかった。
 塚本、原は朝のお仕事を済ませ、登攀開始。3人なので、原がオールリードで二人を引っ張る。5時20登攀開始。
 1ピッチ目、カンテ状からチムニー。出だしはV級程度だが、チムニーから先はちょっと難しい。左のフェースからも越えられるが、チムニーの中をフットアンドバックで二段ほど上がり、あとは、立ちこめるスタンスを見つけてチムニーをクリアする。出口にあるチョックストーンはしっかり効いているため、ガバに出来る。チムニーの入り口はホールドが乏しいので慣れていない人は注意が必要かな?
 2ピッチ目、カンテ状からテラス状に上がり、フェース。最初のカンテはピンも豊富でとても気持ちよい。テラス状から緩傾斜帯へ上がるフェースも程良い難易度で面白い。右のカンテ沿いを上がったが、ピンも腐るほどあり、またしっかりしておりフリーのゲレンデみたいである。緩傾斜帯に出る手前で、フェースに二つのリングボルトがあり、トポではたぶんここで切るのであろうが、もう少しのばす。トポで言う3ピッチ目に少し入り、緩傾斜帯のピナクルでコール。
 3ピッチ目、一級なので、ロープを付け替えずそのまま塚本、石崎に4ピッチ目の支点までのばしてもらう。本当に1級程度。涸沢岳の登りの方が悪いくらい。
 4ピッチ目、ジェードルからピナクルを左から回り込み、チムニーを数歩上がってフェースに出る。チムニー内はランナウトになり、ホールドも皆無なのでリードは緊張する。チムニーからフェースに出るとハングに押さえられるが、左のコル状から抜けられる。フェース上の1、2歩が悪いが、コル状直下のガバをつかめばおしまい。コルに上がると支点にできそうなリングボルトがあるが、これを飛ばし、傾斜の強いフェースを越え、テラスに上がったところが正規の終了点。だいたい40m弱。このピッチは複雑怪奇に入り組んでいるので、ロープの流れには注意が必要。
 5ピッチ目、顕著なジェードル。最後のハングは、手前から右のクラック沿いを登れば単なるW級。一番簡単なピッチだった。終了点はドーム頂上のちょっと手前。7時55分登攀終了。まずまずのタイムである。

<ドーム全景。スカイラインが中央稜>
 予想外に最高のお天気で、ご機嫌である。記念撮影をし、しかし今日中に東京に帰らなくてはならないので一目散にテント場で向かう。豊山がノロノロとテントから出て我々を迎えてくれる。どうやら少しは体力も回復したようだ。
 そそくさとテントをたたみ、帰路に着く。上高地に下るなら登りは皆無だけど、白出沢を下るとなると涸沢岳の難所を越えなければならない。足取りの重い豊山のペースに合わせながら涸沢岳を越え、白出乗越からはガレ場を一気に下り、途中穂高平小屋であまりの空腹にみんなでラーメンを食べたが、正味6時間で新穂高へ。なんだかんだいってみんな早かった。体調の悪い豊山もよく頑張ってくれた。
 新穂高では、囲いもなにもない強烈に解放的な露天風呂で汗を流し、そろそろ夏も終わりかな、という風に追われて東京に帰っていった。

 <総括>

 この計画をアニマルさんに話したら、「なにもたった5ピッチ登りに土日で滝谷に行かなくても・・」とおっしゃっていたが、うん、然り、という感じだった。やっぱり滝谷は北穂ベースで最低3日は登り込みたいと思った。あるいは涸沢ベースで一週間滞在し、屏風や前穂東壁を交えて登るか。ただし、滝谷の他のルートは崩壊が激しいらしいから、GWあたりがやはり良いのかなあと思う。土日で一本は、やはり薦められない。
 ドームは全体的に岩も堅く、中央稜はそこそこ登りごたえがあり、ピンも多く、支点もランニングもしっかりしており、しかも支点はすべて安定したテラスという「快適」を絵に描いたようなルートだった。他の滝谷のルートに比べ、アプローチもさほど困難はない。ただし、初見の場合は注意が必要。我々も初見だったけど、そういった意味で、行きに下降点の偵察が出来る白出沢ルートを取ったことは正解だったと思う(涸沢から上がってきて、テント場について、その日のうちに下降点の偵察に出かける気など起きるわけがない。)。
 是非登っておきたい一本であったから、目標を達成できて満足である。メンバーのみんなには感謝!





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