南アルプス/北岳/バットレス 下部フランケ〜上部フランケ
(2002.7.20)
メンバー:吉田、原
(ARIアルパインクラブ)

 前の週の小川谷の復活戦で思ったより調子が良かったので、予定どおりバットレスに入るとにした。狙うは下部フランケ〜上部フランケ。あわよくば下部岩壁は十字クラックを登る予定で入った。


<雪渓の向こう側、ガスの中のバットレス>
7月20日(土)晴れ

例のごとく遅出の我がままをみんなに聞いてもらい、夜中の1:30に中央道/藤野PAでヨッシーカーと待ち合わせ。塚兄さんと松原さんと合流して、適当に分乗し、広河原へ向かう。甲府昭和ICを降り、国道20号線から芦安方面にそれたところで入ったコンビニでは、続々とタクシーやマイカーに乗ってやってくるハイカーらしき人々と遭遇し、いかん!これは広河原で駐車スペースが確保できるか〜!と慌てる。血相を変えて広河原へ。運転を交代した塚兄は途中で道に迷い、後から付いてきた車数台を迷路に導びき、巻いた。きひひ。作戦成功(の訳ないです)。

広河原は予想どおりの大混雑。路肩にまで車がはみ出しており、これは停められないかな・・、と心細くなりながら広河原ロッジの方までいくと、河原川のスペースになんとか空きを見つけた。時間はAM4:00。そのまま用意をして。4:30過ぎに出発。すでに空は白み出している。やっぱり夏だな〜。

いつもの道を淡々と進む。と、塚兄のペースがあまり上がらないようなので、若干ペースを落とし、イーブンを保ちながら進む。2回目の渡渉ポイントで、あまりにも離れてしまったので、大休止がてらしばし待つ。やってきた塚兄はやっぱりちょっと調子が悪そうだけど、さ、行きますよ、と言ったら、はいは〜いと腰を上げた。

大樺沢の雪渓は、昨年の同時期にくらべるとかなり少なかったが、雪渓沿い乃至雪渓上を歩くとひんやりした風が肌を拭うため気持ちが良い。すっかり陽が高くなり、早川尾根や鳳凰三山もくっきり見えるようになったころに二股に到着。遅れている塚兄を待ちつつ、大休止。一睡もしていない身体は、休止するとすぐに眠くなる。

塚兄がくると、だいぶ顔色が悪い。目も朦朧としている感じなので、無理せず下山したら?と言うと「行くのじゃ!」とのことなのでそのまま出発。気合いに押された。

ヒドンガリーを越え、bガリーを越え、cガリー脇の踏跡を5尾根支稜の取り付きに向かう。途中、視界が晴れたところで上部岩壁を見上げると、bガリーに大量集団が取り付いていた。あれに巻き込まれたら大変だな〜、と思って見ていた。その他、5尾根支稜に1P、ピラミッドフェースのオリジナルラインに2P取り付いていた。

えっちらおっちら高度を稼ぎ、下部岩壁基部に広がる雪渓を越える。十字クラックを見ると、前日の雨で濡れ濡れ。クラック沿いが見事に色が変わっている。ということで、十字クラックは割愛。5尾根支稜に取り付く。
5尾根支稜は雪渓のおかげで支点は埋まっており、一段上がったところからヨッシーリードでスタート。なんなく2Pをこなし、バンドへ。

少し奥にむかってえぐれている感じのバンドは4尾根からピラミッドフェース、下部フランケ、Dガリーとそれぞれの取り付きが見渡せて面白い。下部フランケにはすでに先行が2パーティいた。1パーティが登攀中で、もう1パーティが待ち状態。ありゃりゃ。これはしょっぱなから順番待ちですか〜と、夏の暑い日差しの元、昼寝がてら延々と待つ。

ようやく2パーティ目が行って我々の番。オーダーでヨッシーリード。

<バンドからDガリー奥壁方面。迫力のバットレス>
下部フランケ1P目(Y・40m)吉田リード。数段階段状をハングに向かって上がり、突き出た庇状にブチ当たってここからが核心。左足を庇の上に上げ、バランスで立ち込み、細かいスタンスを数ムーブ上がると手がなくなる。さらに嫌らしいことに若干濡れており、じわりと立ち込むのも気が引ける。ヨッシーA0で抜ける。僕はセカンドなのにやっぱり2手A0してしまった。この間残地は豊富。ただ、一部にグラグラのピトンがあるので、きちんと確認する必要がある。核心を越えるとバンドに出て、ランペ状に右上してクラックを目指す。クラックはチョックっぽい岩に押さえられており、登りにくい。キャメロット0.5〜1があると良いかも。残地されて抜けないフレンズがある。スタンス、ホールドを良く見つけて思い切ってこのクラックを抜けると傾斜が一気に落ち、テラスへ。立ち木でビレイできる。

下部フランケ2P目(W+・40m)原リード。コーナークラックチックなところから若干被り気味のカンテチックな岩を乗り越えていく。クラック内など濡れ濡れで悪く感じる。乾いていたら快適だったのに。フェースに出ると傾斜が一気に落ち、階段状となってテラスへ。残地ピトンは豊富。

下部フランケ3P目(W・30m)吉田リード。このピッチも4尾根のフランケ側とのコーナークラックに沿って行く。クラック内は残地ピトンは豊富。チョックストーンに頭を押さえられると、またしてもカンテを左側に乗り越え、フェースともなんともいえないゴツゴツゾーンに微妙なバランスを要求される。カムがあると助かる。数歩上がるとラクになり、小さなビレイポイントへ。ここから左上に上がると簡単なピッチで4尾根(ピラミッドフェースの頭)へエスケープできる。

ここで下部フランケは終わり。10cmあるかないかくらいのバンドをDガリーに向かってトラバースをする。原リード。これが結構スリルがある。バンドは草が生えており、たまに浮き石があるので一歩一歩慎重に足を出す。ところどころにピンが打ってあるが、落ちたら盛大に振られるくらいの間隔。三つ峠の亀ルートの八寸バンドのトラバースを彷彿とさせる。バンド自体はこっちの方が幅が広いけど、高度感と長さは長い。結局40m弱延ばしてDガリーの流心に達する。ハーケン×3のビレイポイントで終了。いやはや、心臓に悪い。

上を見れば爽快な夏空が広がっており、バットレスの岩壁が照り返して眩しい。夏草も元気に太陽の光を受けてそよいでおり、すこぶる良い調子だった。

ここから直上するとDガリー奥壁。上部フランケは再び4尾根のフランケ部分を目指して若干右上に行く。1P目のハングが顕著で、すぐに解る。我々はDガリー沿いに1ピッチ延ばし、ここでDガリーの流心と別れ、右側の草付きフェース()をさらに1ピッチ・40mほど延ばして上部フランケ1P目のハング基部に達した。

上部フランケ1P目(X+・40m)吉田リード。切り立ったフェースから入り、ハング状を左側の凹角っぽい被ったラインを上がる。残地は豊富だけど、結構きわどいムーブ。おまけにここも凹角内が濡れ濡れで快適でない。ハングの上に出ると若干細かめのフェースを上がり、完全にフランケ沿いにラインを取って数メートル進むとビレイポイント。途中に一つビレイポイントがあるが、これを無視して目一杯延ばせる。その方が早い。

上部フランケ2P目(W・45m)原リード。フランケとフェースとの間の溝にフットジャムを利かせる。フットジャムは痛いので躊躇し、フェースを上がれないか観察するも、やはり溝沿いが一番登りやすそうなので、諦めて足を突っ込む。途中、突っ込みすぎて抜けなくなり、無理な体勢で靴を脱がなければならなかった。最悪!であった。ピトンはあまりないけど、結局見た目ほど必要性も感じなかった。上部にはマッチ箱からサルのように懸垂してくる4尾根の登攀者が見える。そこを目指して行く。最後はどこでも登れると思って、ちょっとシュバルツカンテの向こう側を覗くと、ラインらしきものがあった。でもやっぱりコーナー沿いを行って、45m一杯でマッチ箱の懸垂終了点に着いた。

ここから先は4尾根。すでに大渋滞の様相を呈しているのでコンテでゴボウ抜きにかかる。スミマセン。スミマセンといいつつ、脇を通り抜け、途中若干きわどくなったところで切りつつ終了点へ。握手をしてギアを解く。15:40。先行パーティーの待ち時間があったし、取り付きも遅かったからこんなものかな〜・・・。

午後の太陽がそろそろ西日に変わるころであったが、塚兄=松原さんPが来ないので延々と待つ。どうも4尾根渋滞に巻き込まれたらしい。全然こないのでヨッシーと二人で昼寝ならぬ夕寝を決め込む。人も上がってこないな〜とおもったら、なんと18:00前になって大集団がワイノワイノ上がってきた・・・。あああ、この集団が詰まらせてたのね・・・。その後憮然とした顔で登ってくる塚兄=松原さんPがいた。随分残業になってしまった。

急いでギアを片づけ、稜線に出る。ちょうどガスが立ちこめていたが、夏の強烈な西日にブロッケンが現れた。振りかえると仙丈方面に雲海と光の大レビューが始まっていた。息をのむ光景にしばし時間を忘れて一同佇む。時間は遅くなってしまったけど、思いがけないプレゼントにゴキゲンになってしまった。

八本歯経由で下山。日が暮れてしまうし、下山連絡をしないと心配すると思って原がダッシュで広河原に降り、各所に下山報告をする。21:00過ぎ。後の3人は無理せずゆっくり下山してなんと23:30下山。長い一日だった。広い広河原で入れ違い事件で締めくくりだったけど(^^;;;トップシーズンに始まりに、なかなか爽快なクライミングができた。

<ブロッケン。稜線上で>
<総括>
下部フランケ、上部フランケとも、濡れている以外は非常に快適だった。思ったより良いルートで、是非是非お薦めである。グレードはフリーで行こうとすると若干トポより辛目かな〜、などと思うけど、僕が下手なだけかも。核心は下部フランケの1P目で一番難しい。でも今思えばピトンも豊富だし、思い切っていけたのかなとも思う。バンドに上がる手前の2ムーブは10aはあるような気がしたけど。
上部フランケも1ピッチ目が核心。これも残地が豊富なので、思い切っていけるとおもう。縦ホールドが若干いやらしいけど、身体の振り方なんでしょうね〜。
下部フランケ終了点からは4尾根に容易にエスケープできる。また、下部フランケ2ピッチ目終了点以外は支点もそこそこしっかりしているので、懸垂可能。Dガリー沿いも下降することができる。
4尾根に合流してからはなんといっても渋滞をどこまで回避できるかがポイント。

夏の日差しがこの上なく似合うルートだった。





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