八ヶ岳/阿弥陀岳/北西稜(2000.12.9)メンバー:塚本、原(ARIアルパインクラブ)

 11月から年末山行に向けてトレーニングが始まった。11月は主にゲレンデでアイゼンのトレーニング。救助講習もやった。12月はいよいよ実践。しかし、今年は雪が少ない!12月第2週でも八ヶ岳には雪がないという。しかし、年末の滝谷のことを考えるとどうしても本チャンに入っておきたかったので、阿弥陀岳/北西稜を登ることにした。北西稜は北面だから、雪の状態はまだマシなはずだ。

 当初二日目は大同心に入る予定だったが、真っ黒な大同心を見てさすがに行く気が失せ、二日目は南沢小滝でアイスクライミングをすることになった。

<北西稜上部岩壁を見上げる。雪はちらほら>
12月9日(土)晴れ

 今週末もARIで大挙して八ヶ岳に入ることになった。金曜日の夜に美濃戸に入り、酒盛りをして就寝。雪がないとはいえ、さすがに冷え込み、車の中で寝るのはつらかった。
 土曜日、他の人々は南沢大滝にアイスクライミングに行くことになっており、朝は遅い。北西稜に入る僕と塚兄だけ一足先に起き、支度をし、他のみんながまだぐっすり寝ているところを山に分け入っていった。でも既に7:00を回っていた(^^;;;
 しかし、雪がない。去年のこの時期には美濃戸口からすでに雪があったのに、今年はまるでない。南沢の登山道にもちらほら出てくるだけで、およそ冬山の様相ではない。う〜ん、地球温暖化が進んでいるのかなあ。
 何度か渡渉を繰り返し、南沢大滝・小滝の分岐を過ぎ、北西稜分岐に近づく。去年、福ちゃんと入っているので、アプローチに不安はなかったのだが、分岐のマーキングが記憶のものと違っていて少々戸惑った。
 分岐からまずは沢を詰める。去年は沢を詰めすぎてハマったので、今年は手前から北西稜末端に這い上がろうと思っていたのだが、先行パーティーのトレースがずっと沢沿いについており「あれ、沢沿いで良いのかな・・・。」と迷いつつそのトレースにつられてまたもや詰めすぎてしまった。サルのように同じ間違いをしてしまった。おかげですぐ後ろのパーティーに途中で抜かされた。北西稜には、沢の末端付近から藪を漕いで稜線に這い上がるのが正解。ゆめゆめ詰めすぎてはならない。
 北西稜の稜線上と側壁には5cmくらい雪が積もっていた。やはり北面の方が雪は溶けないみたいだ。
 足下が少々悪い藪を漕ぎ、稜線に這い上がり、リッジを忠実に詰めていく。すでに先行パーティーが3パーティーいる。トップのパーティーは核心部を登っていた。

<2ピッチ目をフォローする塚兄。なかなか高度感がある>
 森林限界ピークを越え、昨年、吹雪のコンディションで2ピッチザイルを出したところも今年はノーザイルで行ける。天気がよければこんなに快適なのかと驚く。冬は本当に天候が大きくルートを変えるものだと再確認した。
 結局、下部岩壁基部まではノーザイルで進んだ。下部岩壁基部ではすでに2パーティーが準備をしており、時間がかかりそうだったので我々は左壁を登ってリッジに上がることにした。ここでハーネスとギアを付ける。荷物が軽くなる。
 オーダーはどうする?と塚兄に聞くと、「どうぞどうぞオールリードで!このグレードでは私には無理でごわす〜!!」と言うので、原オールリードでスタート。なんだかうまく言いくるめられているやうな気もしつつ、ま、トレーニングだからリードしたいし、いいや、と納得した。
 1ピッチ目。何のことはないランペ状の踏み跡を進み、灌木を越えると突如悪くなる。ランニングは木などで取れるが、あまり信用ならない。ガレた凹角に出たところで今度は上に向かう。途中から草付きに雪が乗った雪壁になり、アックスを振るいつつ、木登りしつつ登る。なんだか予想以上に悪かった。やはり、正規どおり右壁を登った方がよさそうだ。50m一杯でコール。しっかりした灌木も見あたらなかったので、岩壁に打たれたランニング用のハーケンと木の根で流動分散を作り、足場の悪いビレイポイントを作った。セカンドには「落ちないで欲しいなあ・・・。」というビレイポイントだが、まあ、なんとか止まるだろう。塚兄のフォローは思ったよりスムーズ。ああ、やっぱりこの人は北鎌単独したのだなあ、と思った。
 2ピッチ目。目の前のW−くらいの垂壁を登り、リッジに出る。出だし数手が縦ホールドで悪いが、しっかりアイゼンに立ちこめれば登れる。ランニングはハーケンが一本あり、その後はハイマツの根でとる。垂壁は8m程で終わり、リッジに出ると一気にUくらいにグレードが落ちる。リッジ沿いを上部岩壁基部までのばす。ボルト・ハーケンの豊富なビレイポイントでコール。このビレイポイントならセカンドにいくら落ちられても大丈夫。塚兄も出だしの垂壁に手こずっていたようだが、その後はスムーズに登ってきた。

<核心のピッチをリードする原>
 3ピッチ目。いよいよ核心。上部岩壁は何本かルートが取れる。昨年登ったame氏の記録によると、ビレイポイントから左寄りのラインが一番簡単とのこと。先行パーティーはそちらに向かっていった。我々はこのコンディションであれば一番難しい右よりのルート(W・A1)を登らないと面白くない!ということでチャレンジした。
 まずはバンド状を右に数歩トラバースし、切り立った凹角気味を登る。見上げるとお助けシュリンゲがかかっていたので「な〜んだ、余裕だよ余裕!」と豪語してみたものの、取り付いてみると結構悪い。途中、「う〜ん」と悩んでいると、ビレイしている塚兄から「ア・ブ・ミ!ア・ブ・ミ!」というかけ声がかかる。まったくこの人はパートナーが核心をリードしているというのにボケずにはいられないようだ。しかし、この挑発でブチ切れ、「絶対アブミは出さん!!」と叫び、でも、やっぱり悪いのでA0は使い(^^;;;核心を突破。すると下から「男やねぇ〜」だって。まったく力が抜けてしまう。
 このピッチはきちんと選べばホールドもある。スタンスも思い切って前爪に乗れればクリアできる。でも、難しい部分は短いが、小同心クラックなどよりは全然難しいので注意が必要。また、抜け口のクラックにはカムも有効だと思った。我々は使わなかったのでサイズはわからないが、黄色・緑エイリアン〜キャメロット0.5くらいだろうと思う。
 核心を抜け、簡単なリッジを少し進むと、リングボルト×2+ハーケン×1のビレイポイントが出てくるのでここでコール。しっかりしている安心の支点。フォローの塚兄はアブミを使っていたが、なかなかスムーズにクリアしていた。
 すぐ上には摩利支天がそびえている。ここからはノーザイルで十分。T〜U程度の道を進み、御小屋尾根に出る。左に少し進むと阿弥陀岳の頂上。この日は終始快晴で、最高の景色が我々を出迎えてくれた。南方には去年登った南稜が延びており、広河原沢も一望できた。権現方面の方がまだ雪があった。赤岳、横岳西面は真っ黒!この時点で明日の大同心へのモチベーションは一気に低下する。
 なんだかコンディションも良く、時間もかからず、快適すぎる北西稜で拍子抜けだが一応塚兄と握手。彼はこれが今年最後の山行だそうだ。妻子持ちはつらいねぇ〜。
 下界に持ち帰ると全く食べる気をなくす行動食を消化しようとしこたま食い、しばし休む。充実感に浸る。斜陽になりかかるころに頂上を出発。まだ雪がないため、中岳沢ではなく一般道を快適に行者小屋に向かう。行者小屋では南沢大滝でアイスクライミングをしていたスズテル・よっしーのパーティーが出迎えてくれた。おかげでその晩は暖かいテントの中でウイスキー500ml+αと焼酎1Lを飲み干す大宴会となったのであった。

 翌日は天候悪化もあり、また、あまりにも雪のない西面に愕然としつつ、南沢小滝で今年初のアイスクライミングに興じた。滝谷にはアプローチでアイスクライミングが出てくるので、良いトレーニングになった。

 さて、年末山行へのモチベーションが高まってきました!



<頂上でうまそうにパンをたべる塚兄。来年には2児のパパ。今度はリードして頂戴ね(by原)>


















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