八ヶ岳/硫黄岳/ジョウゴ沢
(2005.12.25)
メンバー:恩田、原
(ARIアルパインクラブ)

 八ヶ岳には毎年雪と氷のシーズンには欠かさず入っているのだが、なぜかジョウゴ沢にはこれまで入ったことがなかった。仕事が再び忙しくなってしまい、この週末が今シーズン最初の冬山になってしまったの雪稜の簡単なルートでもと思っていたが、体力も落ちているし、そういえばお手ごろアイスクライミングでまだ行っていないエリアがあったという事を思い出した。ジョウゴ沢である。
 というわけで、年末山行までにとにかくアイゼン履いておかなきゃならんと勇んでいた恩田さんと二人でジョウゴ沢に入ることにした。


12月25日(日)晴れ

<北沢沿いの道>
 例のごとく、前夜に原号で美濃戸に入る。次の車検でタイヤも一緒に替えてしまおうと思っていたので、古いオールラウンドタイヤで美濃戸口から先の林道に突入したが、やはりつづら折れの急登箇所でスタック。しょうがないのでバックで下まで降り、チェーンを装着。チェーンをつけるとパジェロ君はさすがに余裕で上がって行った。美濃戸でテントを広げて酒盛りをし、就寝。やはり前夜のこの楽しみがないと調子が上がらないのだ。
 

 翌朝は、まあジョウゴ沢なのでゆっくり起床。身支度をして北沢をつめる。冬の張り詰めた空気が心地よく、晴天で天気もよく、足取りはすこぶる軽かった。北沢の川床は相変わらず赤銅色で、雪の白とのコントラストがなんとなく神秘的だった。





<赤岳鉱泉の人工アイス>
 赤岳鉱泉に着くと、人工アイスであるアイスキャンディが出来ていた。まあ人工でこんな氷壁を作ってしまうのも凄いもんだと少し圧倒。天気の悪い日にもアイスクライミングが楽しめるから、ありがたいことだ。








<立派な道しるべがあるのだ>
 小休止して、硫黄岳への登山道に分け入る。雪の量はそこそこあって、今シーズンは雪が多そうだなと予感。トレースはばっちりで、高速道路となった道をずんずんと分け入っていった。

 大同心稜への分岐を過ぎ、沢を一本徒渉するところで、ジョウゴ沢に一度はいったことのある恩田さんが「こっちだよ」と言うので詰めていくと、結局裏同心ルンゼだった。あわてて引き返す。まあ、良いトレーニングになったというところだ。

 さらに登山道を硫黄岳方面に向かうと、次の沢の徒渉ポイントには、立派な道しるべがあり「ジョウゴ沢」とご丁寧に矢印までつけられている。まったく迷うこたあない。分岐からトレースも明瞭についていて、傾斜もそんなになく、快適に詰めていく。ほどなく、すこぶるチンケなF1に到着。ここでクソをしてハーネスなどの装備をつける。


<チンケなF1 皆に登られてボコボコ>
 F1ははっきり言って「これがF?」というくらいのもんである。左側の少し滝っぽいところを登ればかろうじてアイスクライミングかなというところであるが、右側のナメ部分などは黄蓮谷右俣の川床程度である。ノーザイルでテクテク歩く感じ。











<広い河原>
 F1から上は河原をずんずん進む。しばらく行くと二俣に分かれており、右側がF2。これはそこそこ立派な氷瀑。でも、みんなが登った後がボコボコについていてグレードがかなり落ちている感じだった。原リードで取り付く。






<F2に取り付く原>
 当初は雪稜ルートに行く予定が、行く道すがらアイスにすることにしたのでアイゼンはミックス用12本歯で、かろうじてバイルだけプレデターを持参。とはいえ、ジョウゴ沢本谷F2は余裕で、途中で一箇所スクリューを捻じ込んでランニングを取った後はずんずんと上まで上がってしまった。V級くらいだろうか。終了点にはゲレンデのように立派な支点が植わっていて安心・安全である。しかし日陰で風が強いため、ビレイ中に手は死ぬほど悴んでしまった。恩田さんも難なくクリア。












<ゴルジュ帯>
 さらに河原を歩いていくと、これまた「あら、これが滝?」という感じのF3が現れ、これをなんなくクリアすると広大な河原に出る。時間があればここら辺でお茶を沸かして一服したいところであるが、朝寝坊のわれわれは先を急ぐ。











<乙女の滝>
 右俣、左方ルンゼと分けて、本谷は狭いゴルジュを目指していく。ゴルジュに入る手前から氷が現れるが、ノーザイルで余裕。ただし初心者はザイルを出したほうが良いだろうと思う。狭いゴルジュをに入ると八ヶ岳特有の突風が吹きぬけるため身体が凍りつく。急いで上に上がると、右側に見事な氷瀑が現れる。これが乙女の滝。その名のとおりとても美しい滝である。でも見た目にバーチカルで、今の装備と技量ではリードは躊躇してしまう感じであった無念。







<ナイアガラの滝へ>
 ナメを降りて、ナイアガラの滝に進む。氷床を進み、雪に埋まったところは浅いトレースをラッセルして進むと、幅広のバーチカルの滝が碧空をバックにどーんと現れる。それはそれは見事な滝であった。これならトライか、というところであったが、トップロープが張られ、さらに右側のゆるいところには1パーティーリードで取り付いており、時間も迫っていたので結局見事な滝と先行者達のクライミング見学で終わってしまった。






<ナイアガラの滝>



 帰りがけに大滝側を少し詰めてみた。トレースもなく快適そうであったが、なにぶんもう時間がないので撤退。結局難しいところはぜんぜん登らなかったが、まあシーズンはじめの足慣らしにはちょうど良かった。それから、ジョウゴ沢は初心者のみならず、上級者もバーチカルアイスが楽しめるすばらしいエリアだと再確認した。

 帰りは本谷に沿って氷を降りる。ゴルジュ部分もなんとかクライムダウンできるし、F2は右岸の巻き道にフィックスがかかっており、若干急だけどなんなく降りることが出来た。冬至の太陽は早く、赤岳鉱泉についたころにはすでにすっかり日が翳りはじめ、背中を押されるように美濃戸まで走った。



<総括>

 ジョウゴ沢は初めてであったが、F1あたりは本当にアイスクライミング初心者にもってこいの足慣らし場所だと思った。F2はまあ本格的なアイスクライミングかというところで、その先も大滝、ナイアガラ、乙女のどれにもとりつかなければまったく簡単なアイスクライミングに終始する。しかし、詰め部分のバーチカルアイス群は見事で、見た目にも難易度が高く、このエリアは本当に初心者から上級者まで楽しめるエリアなのだなと思った。やはり人気のあるエリアは、人は多いけど要するに良いエリアなのだと、最近つくづく感じたりする。来年も通いたいと思った。




<氷の上にたたずむ恩田さん。ジョウゴ沢はこんな氷床が続く>


















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