前穂高岳/北尾根W峰東壁/松高ルート
(2006.8.5〜6) 
メンバー:恩田、岡野、原



毎年恒例となった奥又ベース山行も、去年僕がボストンに行っている間は中断。2年ぶりとなった。
今回は奥又初体験の岡野さんも加わって3人パーティー。目指すはやっぱりクラシックルートのW峰正面壁松高ルートとなった。


<上高地から出発>
8月5日(土)晴れ
奥又ベースの場合、初日は昼過ぎに上高地に入れば余裕なので、朝一番のあずさで向かうことにする。岡野さんは留学を控えて節約生活を敢行しているため、前日に鈍行で松本入り。途中小淵沢でステビをしたとのこと。原と恩田さんはスーパーあずさ1号。事前に指定席を取ろうと試みるも、普通車は満席だったので、まあ座れないのもどうかということでグリーン車を取ってしまった。まあもう35歳ともなればこれくらいは、という勢いだった。年を取ったものだ。
松本で岡野さんと合流して松本電鉄で新島々へ。バスで上高地に入り、そのまま明神、徳沢と過ぎて中畠新道に入る。十分に整備されていた。
奥又白池についてテントを張り、青空のもとで宴会。まあ、毎回思うがこのひと時がたまらないのである。食事を進めているうちに日没。ICIのゴアライトで就寝。


<奥又白ノ池>
8月6日(日)晴れ
今回は奥又白池にテントを残置し、W峰を登った後にX・Yのコルから奥又に戻ってテントを回収して下山する予定。なので荷物は軽い。
例のごとく4時には出発。真っ暗の中を雪渓へ進む。今回は早めに雪渓に降りることなく草付きを上部まで進んだ。もう前穂東壁群が目の前というところで雪渓に降り立つ。
シュルンドっぽいところを避けながら壁にアプローチ。今年は雪も多く、10本歯アイゼンがあれば余裕でクリアできる。壁の基部に来たところで、原は恒例のお仕事。うんこ場も毎回同じである。我ながら生活のリズムが規則正しいのだ。
C沢を入り込むとW峰基部は間近。今年は雪が多いので危なげなくアプローチできた。
クーロワールを進み、恩田さんが前に取り付いた箇所を確認。なんとなく取り付きにしては下過ぎる気がしたので、そのまま進んで北条=新村ルートの取り付きまで行ってみるがどうも違う。やっぱり取り付きは恩田さん説が正しいということになり、また下降して北条=新村の取り付きに向かうルートの途中でやや左上した凹角チックなところからスタート。ハーケンは1本打たれていた。
今回は3人ということで、恩田さんがリードで原と岡野はフォロー。途中で変わる予定であったが、結局恩田さんが最終ピッチ以外すべてリードすることとなった。


<リードする恩田さん>
1P目:凹角から草付きっぽいフェースを上がる。トポには草付きのルンゼ状とあるが、U級にしては悪い感じがした。約40m。
2P目:直上して凹角に入り左側のカンテを乗り越す感じで上がっていく。このピッチは完全のトポと違う。やっぱりスタートポイントが少しずれている気がする。ビレイポイントらしきものはある。岩はV級程度で、残置ピトンもところどころに出てくるが全体的にランナウト。
3P目:まず北条=新村ルート方面に延ばす。細いバンドをトラバース気味に右上してカンテを越えて正面のフェースに出ると今度はすぐを直上していく。恩田さんが前に来たときにはここをまっすぐ行ったとのこと。ここがトポの2P目の後半っぽい感じ。
4P目:凹角をまたぐ感じで左にトラバースし、凹角の縁を乗り越すと松高ハングが見える。顕著な、というほどでかくもないが、たしかに岩の弱点。名ルートのゆえんだろうなと感心。あとは松高ハングに向けて進むとビレイポイントが現れる。
5P目:松高ハング越え。トポでは4P目のはずなのに、なぜか5P目。ハングには残置シュリンゲがかかっているが、腐っているので使えない。残置は豊富でまだしっかりしている。でもカムも有用。ハングを思い切って乗り越すと、のっぺりしたフェースっぽい凹角の中を行く。頭打ちされたところで、これをえいやを乗り越えるとテラス状になっていて、ビレイポイントとなる。
6P目:テラスから上に向かう。トポではWA0とあるが、どう考えてもV〜W級あるかないか。ハイマツも使いながらグイグイ高度を稼ぎ、ザイルいっぱいを延ばす。
7P目:もう傾斜はことごとく緩いので、岡野と原が先行してしまう。40mも延ばすと二足歩行が可能となり、大岩に打たれたハーケンでコール。


<W峰の下降>
なんだかトポと違うので釈然としないが、終了点であることは間違いない。今日は奥又経由で降りなければならないので先を急ぐ。
右側に踏跡が延びているので、これを北条=新村の終了点に向かってトラバース。見覚えのある凹状のガレ地に出たところで、直上する踏跡が出てくる。これに惑わされずトラバースをし続けて北尾根W峰の登り口に出るのが正解なのだが、まんまと惑わされて直上。途中V級程度のピッチも出てくるが、ザイルも出さずに直上を続け、結局行き詰って左にトラバースし、最後はガレ地を這い上がってW峰の頂上に出てしまった。ロッククライミングピッチが終わった後の思わぬ悪場に、本ちゃん経験の少ない岡野さん難儀しているよう。最後のガレ場でザイルを出してあげると、これをハーネスに括りつけて登り始めた途端にフォール。いやはや、運が良かった。
W峰頂上からの下山路も迷った。定石どおり涸沢側に迷い込んではまる。まったく、分かっていながらやってしまうのだからしょうがない。冷静に地形を分析し、記録を思い出しつつ、そうだ北尾根W峰の登りは奥又側からだったと思い出し、奥又側に弱点を発見。無事下降路にたどり着く。いや懸垂しようかと思ったくらいでした。
W峰からはずいずいと下降。少し悪いところでは懸垂下降を交えて下る。やっとのことでX・Yのコルにたどり着く。
さて、急いで奥又に向かいましょうと登山道を行くと、途中で道が崩壊していた。残置ロープもハーケンごと抜けていて使えない。支点になりそうな木も、ハーケンを打てそうな岩もない。万事休す。時間は14:00まわっていた。迷っている暇はない。奥又のテントは後日回収することに決め、X・Yから涸沢に下ることにした。
X・Yから雪渓は長く続いていた。グリセードで涸沢へ。ここで、明日も休める岡野嬢が明日奥又に上がってテント等残置物を回収してくれることとなった。サンキュです。悪いから徳沢園にでも泊まってよと、恩田さんと原で5千円づつ餞別を渡す。
涸沢からは猛ダッシュ。「うわ、すごい」とか言われながら登山者をごぼう抜きにして駆け下る。横尾で岡野さんに追いつかれて抜かされる。徳沢でまた一緒になり、荷物を置いた岡野さんに先に上高地に走ってもらい、上高地に預けた荷物を回収してもらう(手荷物一時預かり所は17:00まで)。ぎりぎりで岡野さんが間に合い、荷物を回収。原も上高地につき、なんとか最終バスに間に合う。頭を洗って、恩田さんは間に合わないかな・・・、と絶望しそうになっているところで恩田さん滑り込みセーフ。風呂もあきらめて、水で頭と顔を洗っただけで最終バスに乗り込み、松本20:00発のこれまた最終のあずさ号に飛び乗り、ビールを開けたのであった。テント等の残地物は翌日岡野さんが無事回収してくれた。


<総括>
松高ルートは日本の岩場のトポと違うピッチ取りとなった。今考えると、おそらく出だしが少し下から出てしまったのだろうと思う。正規の滑り出しはもっと上のような気がする。
W峰終了点からX・Yに降りる場合は、とにかく右側に進んで北条=新村の終了点上に行くのが正解。そこから稜線へは簡単に上がることができる。直上できないこともないし、ところどころに残置ピトンが現れるが、上部ではまる。
X・Yから奥又への道は崩壊していたが、この後整備されたかどうか確認していない。たぶん秋には整備されるのだろうと思うが、涸沢ヒュッテなどに要確認である。
土日奥又、は二日目が勝負!朝早出は必須である。





<奥又白ノ池への道、新村橋を渡る>











戻る

<山のページ>トップ・ページに戻る