瑞牆山/カンマンボロン/中央洞穴ルート
(2001.10.20)
メンバー:鈴木、原
(ARIアルパインクラブ)

 ミズガキというと、クラシックルートならぬワイド系クラック・・・、フリーというイメージが強く「僕なんかが行ったら、すっげーだっせー登りになるんだろうな」とずっと思っていたので手が出なかった。もうちょっと精進しないと・・・。

 と黄昏ていたところ、春にスズテルがミズガキに通い始めた。さすがだな、と思っていたのだけど、彼の記録を見ているとなんとも登りたくなってくる。とても面白そうだ。ピンも支点も豊富でラインも明瞭という日本のクラシックルートに取り付くのもなかなか気が向かない状態だったので(実力もないのに・・・)行きたいな〜、と思っていたところ、スズテルがミズガキに誘ってくれた。ありがたい!

 僕で良ければ是非、ってなかんじで、ミズガキに向かった。

 ルートはカンマンボロン/中央洞穴ルートと十一面/翼ルート。結局、足を少し痛めてしまい、十一面は割愛となったが山では晩秋のシーズンクローズ間際にとても充実した山行ができた。


<カンマンボロン中央大洞穴>
 最近の寝不足は金曜日の夜もそうであったが、この日は土曜日の早朝出発。朝の4時にスズテル邸近くのセブンイレブンに向かい、そのまま中央高速を飛ばす。信州峠への道は韮崎からもいけるが、やっぱり須玉ICが一番ちかい。運転を代わってもらった後はひたすら爆睡で、ICを出てすぐのコンビニに寄った記憶も定かではなかった。
 信州峠に向かう道の途中で大きく「瑞牆山」という右に折れる看板があり、ここが目印。後は道なりに進み、途中でゲートのある道に入っていくと、天皇陛下が植樹祭を行う広場にたどり着ける。近年舗装され、また、瑞牆山のすぐ麓に駐車場とログハウス調のトイレが出来ており、快適にアプローチできる。十一面へは一番上の駐車場からアプローチするようだが、カンマンボロンや大面岩、大ヤスリ岩へは少し下の道幅が広くなった程度の駐車場から入山する。
 さて、6時に着くもあまりの寒さに車のなかでしばしうだうだする。アプローチが近いので少し遅くなっても大丈夫だろう、と結局7時過ぎまで寝る。そこからのろのろ準備をし、富士見平小屋へ向かう一般登山道を分け入る。マーキングは豊富だが、一般登山道としては踏跡が乏しいのではずさないように注意。途中、沢筋で水が汲める。
 目の前にカンマンボロンがバッチリ見えるので、程よいところで一般登山道と離れ、カンマンボロンに向けて藪を分け入る。目印は岩に埋め込まれたレリーフ調の道標。この大岩を過ぎたあたりから藪に入っていくとちょうど良いと思う。アプローチは林道から30分程度。
 さて、カンマンボロン基部を偵察すると、すぐに中央大洞穴がわかった。これほど顕著なルンゼと洞穴はめずらしい。ルンゼの入り口で装備をつける。
 カンマンボロンとは「大日如来」を意味するそうで、一体この岩のどこがそのような形をしているのかと首をかしげるが、高尚なお名前の岩に取り付くのでなんとなく神妙な気分になる。というわけでスズテルリードでスタート。

 1P目:スズテルリード。コケコケのルンゼ内を進む。残置は皆無。一見簡単そうだけど、へんに被ったチョックストーンのオンパレードで、しかもコケコケブッシュブッシュで足も手もない。非常に精神衛生上よろしくないピッチ。スズテル根性でクリア。二つ目のチョックストーンは腹ばい前進でくぐり抜ける。するとチョックストーンの上に出れる。もう少し伸ばすと支点があるが、きわどいので左岸のクラックにカム×3で支点を取る。ここはキャメロット#3を使った

 2P目:原リード。ルンゼ内を進み、チョックストーンに抑えられたところで左壁のクラック沿いを登る。フリーで5.8+〜5.9-くらいだと思うけど、残置はなく、ナチュプロのセットも無理な体勢になるので慣れていないと危険だと思う。原はアブミを出してしまった。カムの人工でクリア。スズテルはフリーで越えてきた。チョックストーンの上に出るとリングボルト×3のしっかりした支点がある。

 3P目:スズテルリード。いよいよ洞穴に入っていく。リッジ状を上がり、垂壁にあたったところで右にトラバースしてチムニーに入っていく。垂壁に続くボルトラダーは大ハングルートのもの。チムニーに入る手前の一手が悪い。残置もなく、リードは精神的につらい。んが、フォローはアブミを使うことができないので、フリーで上がらなければならない。このワンムーブは体感5.9。チムニー内は簡単。大きなチョックストーンをくぐり、洞穴に入る。左壁に残置が一本あるが、これに惑わされないこと。奥まで行かず、右壁の手前側を上に這い上がり、くぐったチョックストーンの上に出る。そこからきわどいフェースのフリーで一段上がるとボルト2本の支点が現れる。

<4P目終了点から洞穴の下でビレイしているスズテルを見下ろす>
 4P目:原リード。洞穴内を右壁に向かって右上に見える小さなトンネルの出口を目指す。出だしは体感5.8+〜5.9くらいのフリー。最近フリーの練習をしているので、荷物を背負ってもA0を使わずに行けた。一段あがったところから人工に入る。この洞穴内は風化が激しく、ボルトがまったく信用できない。というか、ボルトの周りの岩壁がボルトごと剥がれそうで怖い。特にトラバースしつつ上がっていくので、ふられれた時を考えると精神衛生上よろしくない。まずスカイフックを一発使ってつなぎ、ボルトを拾いつつ、突如残置がなくなるところはフリー。カムも結構使えるが、フリーの無理な体制でセットしなくてはならないのでとても嫌である。一箇所剥がれそうなフレークをどうしてもつかまなければカムがセットできず、怖かった。とにかく洞穴の出口目指して進み、そのうち人が一人やっととおれる幅までトンネルが細くなり、オフウィデゥス〜チムニー登りでこれをクリアすると洞穴の出口。ここに支点が突如現れる。リングボルト二本で、支点はしっかりしている。しかし、怖いピッチだったので登りきったらとても充実した。

 5P目:スズテルリード。凹角を進み、左壁を人工で上がって高度感満点のチムニーに入る。チムニーは入り口で残置ボルトがなくなってしまうのでとても怖い。しかも高度感満点。スズテル見事にクリア。パートナーのこういった根性には刺激を受ける。チムニーを出ると急に傾斜が緩くなる。立木が豊富で、どれでも支点にできそう。振り返ると秩父山麓の燃えるような紅葉だった。

 6P目:原リード。コンテでも行けるが、適当に木々の間を稜線まで進む。どこでも登れる。簡単。

 終了点は稜線上。ピッチ数は短いけど、とても充実した内容に満足。精神衛生上あまりよろしくないルートコンディションではあるが、それだけに満足。
 終了点の視界はあまりよくないが、十一面末端壁が良く見える。春うららにトライしているクライマーがいた。荷揚げしている。全体的にクラックが発達しているので、ビックウォールテクニックの練習にはもってこいだと思った。

 さて、下山は大面岩とのコルから懸垂下降する。大面岩とのコルへは一旦十一面側に降りると踏み跡っぽいものがあり、コルに降り立つとシュリンゲのたくさんかかった大木がある。ここから25mの懸垂で一段下の広場へ。少し歩いて今度は右壁にかかっているボルト×4の懸垂支点からやはり25mの懸垂。ここからは二足歩行で一般登山道まで戻り、そのまま林道まで帰ることができる。林道に戻る頃には日も暮れ、スズテルとがっちり握手。久しぶりの完登だったので、感慨深いものがあった。

 夜はスズテル作成のディナーにビールと日本酒とウイスキーで酩酊。星がとても綺麗だった。

 ミズガキは僕が今登りたかった岩にとても近かった。シーズンクローズが歯がゆいが、来年はたくさん登りたいと思う。




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