朝霧が晴れるとき 〜2001.5 剣岳/赤谷尾根、北方稜線〜
<霧の赤谷尾根を行く影>
霧は魔性のものに思える。
視界を消し、方向感覚を失わせる。
運が悪ければ遭難する。
悪天の兆候でもある。
でも、時折ギョッとする程の光景を演出する。
朝、陽が昇り、気温が上がり出す。
霧が消え去る瞬間、まるで世の中すべてが間接照明に照らされているような、そんな感じになる。
光が突き抜けていくうちに霧が消え去る。
霧が晴れたら、見えなかった仲間がそこにいた。
霧立ち上る稜線を抜けると、遅いめの春だった。
陽の光も、空気もとても暖かかった。
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