霧の梓川 〜2000.7 前穂高岳/北尾根〜
<梓川(河童橋付近)>
山では時々はっと息を飲むような光景に出くわすことがある。
北尾根に入る日、朝の上高地を出発して間もなく、河童橋付近の見慣れているはずの梓川の景色だった。
その時は丁度雨上がりで、気圧が変化するせいか梓川一面に霧が覆っていた。まるで霧の中から水が流れ出してくるようだった。
「あ、オレちょっと写真撮って行くわ。先行ってて」
と、仲間を促し、霧が晴れてしまわないかと慌ててカメラを出して撮ったのがこの二枚。
<梓川(河童橋付近から上流)>
でも、結局この霧は一瞬だった。自然はどこまでも気まぐれで、徳沢を過ぎ、新村橋をわたる頃にはこんなに陽が差し始めていた。
<新村橋を渡る。後ろ姿はすーさん。>
北尾根を登り始めた日も、天気予報に反して「晴れ」だった。まだ梅雨明け前だったから、すこぶる「得」をした気分。
まだ雪がたっぷり残っている前穂を見据え、北尾根をたどる。
<北尾根[峰からの前穂>
[峰からZ峰、Y峰と一つ一つ峰を越えていく。
Z峰付近は穂高周辺でも屈指のお花畑であるが、北尾根下半部はあまり人が入らないこともあり、見事だった。
・・・でも、Z峰で写真は撮れず・・・
いつも思うのだけど、登りながらカメラを出すタイミングをとるのは難しい。
「あ、撮ろうかな。でも、ザックおろすのめんどくさいな・・」
と思っているうちに、どんどん進んでしまうのだ。で、被写体は遠ざかってしまう。
そのかわり、X・Yのコルでの休憩中に、こんな小さな花を撮った。名前は知らない。残念ながら僕は高山植物にうとい。
でも、かわいい花だ。
<X・Yのコルに咲いていた花。名前はしらない(^^;;;>
X・Yのコルを過ぎると、北尾根は険しさを増していく。バリエーションっぽくなる。
<北尾根上部。手前肩状のピークがX峰。奥の本峰の左横に飛び出しているのがW峰。V峰から上は本峰とくっついていてあまりよく分からない>
今年はとても残雪が多く、V・Wのコルにもまだ雪が残っていた。
<V・Wのコル>
頂上に着く頃には、また雲が多くなってきた。雨を降らせる雲ではないけど、せっかくの常念山脈の景色もあまり冴えない。
<前穂頂上から常念岳を望む>
でも、ま、頂上ではいつもの笑顔。このひとときは最高。
しかし、前穂のてっぺんまで残雪があるとは思わなかった。今年は本当に残雪が多かった。
<登攀終了後、前穂の頂上で。見にくいが、左後方に残雪が確認できる。>
今でもあの霧立ち上る梓川の光景は強烈に焼き付いている。
なかなか出くわすことのできない光景だった。
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