ピアノのオペラ
〜Rigoletto Paraphrases Composed by Franz Liszt〜
リゴレットパラフレーズ(フランツ・リスト作曲)
豪快なイメージと、とにかく難易度の高いテクニックをこれでもか!と盛り込むイメージのリストで、有名な超絶技巧練習曲やハンガリー狂詩曲などは彼の作風を象徴していると思う。
リストは1811年にハンガリーで生まれ、幼いころからピアノ演奏に類まれなる才能を発揮し、名演奏家、名指揮者、名作曲家として生前から名をはせた。壮年期にはパリを根拠地として演奏活動を行い、このころ、ショパンとも出会っている。
同時期の作曲家、ショパンやシューマンとはイメージがだいぶ違う感じがするのだけど、リストはこの二人の影響をずいぶん受け、リスト自身の演奏や作品に積極的にショパンやシューマンのイメージを取り入れた。ベートーベンやモーツアルトが確立したいわゆる絶対音楽の象徴とも言えたシンフォニーに、標題音楽の要素を取り入れ、交響詩として完成させたのはこのリストで、交響詩の形式にたどりつくのに、シューマンの幻想的な小品から動機を得たそうだ。ちなみに交響詩の形式は、その後シュトラウスに受け継がれ、完成度を増す。
とはいえ、やっぱり曲は豪快なのが多い。シューマンとショパンは同い年で、リストは彼らよりひとつ若いのだけど、ショパンは39歳、シューマンは45歳で死んでいるのに、リストはなんと75歳まで生きている。ここらへん、作る曲の印象と、しぶとく生き抜く感じがマッチしていて面白い。ショパンやシューマンの曲を考えると、なるほど早死にしそうに繊細だ。長生きの巨匠といえばベートーベンで、時代も違えば当然作曲の手法も異なるけど、リストとイメージが相当ダブるものがある。
以前、豪快な曲のひとつであるハンガリー狂詩曲の6番を弾いたことがあるけど、まあ、力のいる曲だったな〜という印象がある。フォルテッシモは弾いている本人が疲れてしまうくらいで、聞いている方も音の迫力を感じる。それからシューマン同様、手が異様に大きかったようで、手の小さい僕にはつらく、アルペジオでなんとか誤魔化す和音が多かった。
と、そんなガチガチした曲ばかり書いているようで、実は遊び心も豊富な人だったらしい。ここらへんベートーベンとはやはり時代が違うのかもしれない。
リストはベートーベンやヴェルディなど、過去の偉人が作曲したシンフォニーやオペラ、歌曲などを編曲(今でいうカバーとかリメイクかな・・・)していて、このリゴレットパラフレーズは有名なヴェルディのオペラ「リゴレット」の第3幕の四重奏のアリアを編曲したもの(リストはオペラのアリアを編曲したものを「パラフレーズ」と呼び、歌曲を編曲したものを「トランスクリプション」と呼んだ)。やはりオペラのアリアが元になっているだけあって、美しい旋律と多声の対話がやさしく奏でられ、おおリストもこんな曲を残すのか、と思ったりもする。
曲は導入部、テーマ、対話・・・・、と部分ごとに律される標題が明確で、弾いていると面白い。導入部なんてなんとなくレチタティーボっぽいし、テーマはアリアの旋律そのものだったりして、オペラを見てから聞くとより楽しめる。ヴェルディー原作のオペラ「リゴレット」はユゴーの戯曲を元に作られ、1951年にヴェネツィアで初演。公爵の道化役であるリゴレットの娘ジルダの悲哀を描いたもの(ま、僕はオペラを見ても(聞いても?)言葉がわからんのでぜんぜん面白いと思わないけど)。
なかなか粋な曲。オペラファンには良いプレゼントかもしれない。