小同心クラック1999.4.4(sun.)メンバー:大野、大北、川村、原 

  先週末は確実に休めそうだったので、東尾根は閉鎖でおじゃんになってしまったものの、それならば今シーズンの目標ルートの一つであった小同心クラックを目指すことで盛り上がっていました。

 ところが!

 そう予定通り事は運ばないのが昨今の原でありまして、前日(金曜日)午前2時頃になってハプニングが発生!土曜日出勤となってしまいました。 もう、原はオフィスで大荒れ!(といっても、表向きは顔を引きつらせていただけですけど・・・) 金曜日、というか土曜日の早朝5時頃帰宅し、大野さんの留守電に、予定通りに行けなくなってしまった事、大野・大北・川村の三人は電車で赤岳鉱泉に入って欲しい事、自分は日曜日の早朝を目指して赤岳鉱泉に向かうので、そこで合流する事、を伝えて、わずかばかし睡眠。そして、土曜日は出勤となったのです。

 土曜日、21時頃に仕事の片が付き、オフィスの給湯室でテルモスに紅茶を入れる!(うえーん、わびしい)すると隣の席の係長が、「原ちゃん、これから山へ行くんでしょ?これ、もっていきな」と、チョコレートとこんにゃくゼリーをくれたのでした。僕自身は気づかなかったけど、端から見るとどうやら相当切れていたらしい。でも、チョコレートはともかく、こんにゃくゼリーは・・・、山でダイエットするわけでもねえし・・・、といいつつ、車の中に残置してしまいました。

 朝3時半に美濃戸を出発。大野さんとの電話では「一応、5時に合流ということで。でも、6時までは待ってま〜っす」ということだったので、普通に歩けば合流できるだろうと一路赤岳鉱泉へ。月明かりが異様に明るく、白い雪がぼわあっと淡く光っていて、う〜ん、神秘的、とシュールに陶酔していたら、氷で滑ってこけたのでありました。
 5時赤岳鉱泉到着。さて、ARI組のテントは、と既にほとんど明かりの付いているテント群を眺めると、あれ、2つだけ明かりの付いていないテントが並んでいる。黄色いゴアライト、まさか・・・。たしか、早出をするために5時合流だったのでは・・・。でも、昨日宴会してたみたいだし、三つ峠で9時まで爆睡をかました事のある川村・大野コンビがいるし・・。
 大当たりでした。まさに、その明かりの付いていない二つのテントがARI組のもの。辺りのテントはいそいそと身支度を始め、さあ出発と意気込んでいるのに、なんと3人とも爆睡。ゆえに、テントは真っ暗。いや〜、これほど明解なテント探しはなかった。

 結局、僕ものこのこテントに入って(オメーもじゃねえか!)、朝飯を炊き、7時頃(でしたよねえ)出発。大同心稜のどん詰まりに8時半ころ。大きな大きな大同心を見上げ、今シーズン行けなかった南稜、雲稜に来年は絶対行くぞと誓ってトラバースを開始。
 そのトラバース、雪は皆無のはずだから楽ちん!のはずだったのに、金曜日に雪が降り、その後気温が上がっていないせいもあってびっしり雪がついているではないか!しかも、一度融けて又凍ったために、所々急傾斜にブルーアイスが露出しており、悪い。結局、小同心取り付きまで2ピッチザイルをのばすこととなったのでした。
 取り付きから小同心を見上げると、ちらほら白い雪が詰まっている。気温は−8℃。厳冬期とは言わないまでも、冬の快晴時のコンディションに近い状態でとりつけることとなり、うふふ、と不気味な笑いを隠しきれない原でありました。
 10時登攀開始。「オールリードやらせろ〜!」と言い張ったところ、大北がオールフォローを快諾してくれました(サンキュ!)。というわけで、原・大北ペア、川村・大野ペアというオーダーで行くことに。

<精神的核心:1ピッチ目(原リード)>
精神的核心:1ピッチ目(原リード) さて、精神的核心の1ピッチ目。取り付きから細かいバンド状を左上してクラックに取り付く。壁は結構立っており、しかしホールドもスタンスもしっかりしていて特段困難もないのだが、過去の記録通りランニングがとれない!!雪に埋まっているのかな、と、一生懸命雪を落としながら行くが、見あたらない。結局、クラックの少し下で一本。クラックの入り口で一本、クラックに入ってから一本と3本のピン(もう一本あったみたいだけど見落としました)+とんがった岩にシュリンゲをかけて計4本のランニングで1ピッチ目終了。しかし、チムニー・クラックに入ってからは結構かぶってくるし、終了点に抜けるところも悪く、精神衛生上とてもよろしくないピッチであった。ランニングが取れずビビって原のリードが遅々としていたため、結局このピッチはフィックスを張り、3人フォローで時間短縮を図る。

 さて、技術的核心の2ピッチ目。ビレーポイントからランニングに導かれて少しフェースを直上。その後、右に少しトラバースをしてクラックに戻る。このピッチはランニングもそこそこ取れるので気は楽。クラックも、中に入り込まずに思い切って身体を投げ出せば梯子段を登る様に行ける。ただ、このピッチで失敗発生。フェースからクラックに戻る手前のランニングが丁度岩溝に入り込んでおり、長いシュリンゲで取らなければならないところをヌンチャクでとってしまいザイルが流れず、2ピッチ目終了点手前のテラスでピッチを切る羽目になってしまった。さらにフォローの大北に途中まで一本のロープで登らせてしまった。時間も相当ロスしたし、反省。このピッチ、後続ペアは大野リード。
 というわけで、核心は3ピッチ目になってしまった。テラスからクラックに戻り、2ピッチ目と同じように登ってゆく。最後の抜け口はかなりかぶり気味になってくるし、ランニングも一本しか取れないが、ここも怖がらずに身体を投げ出してしっかり足をかけてゆけば梯子段と同じ。最後はえいや!と身体をひき上げればポンと小同心の肩に付く。
 ここで時間は13時前!久々のリードで(しかもトップで・・・)、しかも初見だったのでルートファインディングや雪落としに時間がかかったとはいえ、3時間弱とはちょっと首をひねる。でも、満足。後続ペアは川村リード。大北、川村、大野の順で最後のピッチも全員余裕で登ってきた。みんな僕よりも全然早い!すごいなあ〜。

 肩から小同心の頭までは時間短縮のため肩がらみのビレーで行く。そこから、ロープをのばしながら横岳頂上へ。頂上への最後のピッチが結構悪く、結局全員頂上についたのが14時過ぎ。でも、腹が減っては下れないのじゃ!と、昼食を取りつつ記念撮影に勤しんだのであります。ちょっと風はあるけど快晴で、すこぶる爽快なひとときでありました。

 さて、横岳を14時50分に出て、硫黄を回って下山。硫黄からの下りは尻セード+走りをいれて、なんと赤岳鉱泉についたのが15時55分。65分で下ってしまった!自己最高記録。
 そして、テントを片づけて美濃戸へ。時間が押しているのにしっかり温泉も入ってメシも食べて、もう、最高に充実した一日なのでありましたとさ。

 今回は春山!というこころづもりだったものの、小同心に日が射し込み始めるまで(12時過ぎ?)は気温−8℃で、しかも雪もちらほら付いており、とてもご機嫌な山行でした。目標のオールリードも達成できたし、横岳から赤岳鉱泉まで一時間ちょいという記録も作ったし、快晴だったし、もみの湯は気持ちよかったし・・・。
 そして、なんといっても久しぶりの山行!山っていいなあ、と再確認してしまいました。       
横岳山頂で そうそう、いくつか・・・             

 大北、相模湖〜茅野まで無賃乗車達成(しかも、大月からは特急あずさ)!
 大野、相模湖〜茅野までのあずさ号を青春18切符で。改札で捕まり、「どこから乗ったの?」と質されたところ、「小淵沢で〜っす」と明るく答える事件発生。
 川村、ヘルメットを忘れる。血迷ったあげく、でかい汁受け(コンロにのっけるやつね)様のブリキ板を美濃戸で拾得。真ん中に穴が空いていることから「これ、真ん中に直撃したら一発なんだよね・・・」との本人談。本気でかぶる気だったらしい。ちなみにかぶると河童状態。ヘルメットは結局赤岳鉱泉でかりた。                                                  
 大北、赤岳鉱泉で「横岳頂上にギアを忘れたっ!」と叫ぶ事件。結局、大野さんのザックの中にあり、大野さんはみんなから「あ〜!またガメる気?」と根も葉もないシュプレヒコールを浴びる。(本当は親切な大野さんが持ってきてあげただけなのにね)。
 川村、もみの湯で財布と使い古しの芳香靴下を忘れる事件発生。

 などなど、笑いの尽きない山行でありました。(え、原はなにもしなかったのかって?当然!この完璧な王子「原」に失敗というものがあるわけが・・・・)

 来週末の白馬主稜が楽しみです。

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