八ヶ岳/赤岳/主稜(2000.12.23)メンバー:山中、ハラ(ARIアルパインクラブ)


 年末山行へのトレーニングの総決算ともいうべき谷川が悪天のため流れてしまい、本当は完全休養だったはずの直前の週末も山に入ることにした。というのも、12月に入ってから例の「ぜんそくの気」でずっと体調がすぐれず、歩けるかどうか不安だったため、ためしにこの週も山に入ることにした。もし、苦しくて歩けなかったら、年末に滝谷に入るのはやめようと思って、赤岳に望んだ。

<赤岳西壁を見上げる。雪も付き、やっと冬らしくなってきた。>
  12月23日(土)晴れ

 年末山行直前の週末であり、本当は休養する予定だったが、先週の谷川が悪天で流れ、修理に出していたプラブーツ(でも、完全には直らなかった!)も試さなければならなかったので山に入ることにした。富士山にしようか、八ヶ岳にしようか迷ったが、伊豆地方にすっきりしない天気が残っているため富士山はやめ、八ヶ岳にした。パートナーの山さんは初の冬のバリエーションとなるため、ごきげんだった。

 美濃戸山荘までの道は、二週前に入ったときと比べて雪が増えていた。到着が遅かったこともあり、酒盛りもせずテントを張って2時間ばかり寝て出発。一路、行者小屋を目指した。二週間前は真っ黒だった南沢下部も雪が乗っかっており、やっと冬山らしくなっていた。
 さて、調子はというと、良くない(^^;;;いつもよりゆっくり歩きだし、徐々に身体をあたためるようにしているのだが、気管が腫れ気味のようだ。う〜ん、こりゃだめかな〜、なんてショゲそうになっていると、だんだんと呼吸がとおってきた。なんとか行者小屋へ。
 行者小屋には2人くらい登山者がいたが、壁に向かう人はいなかった。小屋の中で暖まりながら、スパッツなどを付ける。山さんは休憩料を取られまいかと気をもんでいたらしいけど、これまで一度もそんな金を払ったことのない僕はぬくぬくと暖まりながら、全快とはいえない身体の調子を探っていた。うん、たぶん行けるだろう。

<取り付きでの山さん。なんだかコワイぞ(^^;;;>
 小屋の中で休んでいると数名のクライマーがやってきた。おそらく主稜だろう。我々も出かける。
 当初ショルダー右に入る予定だったが、赤岳沢のトレースが皆無だったので主稜になってしまった。文三郎道にはトレースもあり、石碑のところまでノーアイゼンで上がった。西面は我々が一番乗りかと思ったら、南峰リッジにワンパーティー入っていた。
 石碑のところでハーネス、アイゼン、ギアを付け、ロープを出す。下から上がってきた5〜6名のパーティーが我々を追い抜こうと我々より少し下から赤岳沢に降りていったが、我々はマーキングのあるトラバースルートを取り、1ピッチ上から取り付いたためあっさり抜きかえしてしまった。あんな大所帯に巻き込まれたら何時間かかるかわからん。そそくさとアンカーを取り、登攀にかかる。山さんは初の冬バリ(冬のバリエーション!)なので、原がオールリード。
 1ピッチ目(本当は2ピッチ目(^^;;)。出だしの数歩だけ立っているがなんのことはない。ガバをつかんで終わり。後は歩くのみ。リッジ状を登り、ザイルが50m一杯になるところで切る。丁度ピナクル状の岩やハイマツがあり、アンカーには事欠かない。山さんも余裕でクリア。
 思えば初めて主稜に来たときは目も開けていられない程の猛吹雪で、視界もなく、ただ風雪に耐えるのみの厳しいものだった(ってそんなコンディションに新人を連れていくな〜!って感じ(^^;;それに比べりゃ、オレはやさしい!)。この1ピッチ目のリッジも、ベタベタ不安定な雪が付いていて嫌だった。当時新人だった自分はその印象が強烈で、主稜=きびしいものというイメージがあったため、今回改めて訪れた主稜は「ありゃりゃ、こんなもんだったか」という感じだった。確かに縦走に毛が生えたもんだわ。
 さて、それから上部岩壁まではコンテで行く。上部岩壁は何本かルートが取れるが、一番右よりの難しいピッチを登ることにした。シュリンゲがたれているので一目でわかる。基部にはアンカーらしきものはなく、ハーケンと岩角で支点を取った。
 岩に取り付いてみると結構立っている。1本ランニングを取るとシュリンゲに届き、そこから数歩が嫌らしいが、きちんと前爪に立ち込んで行けばなんてことはない。垂直部分を越えるとすぐに傾斜は落ち、岩壁を右から回り込む感じでルンゼ状を登る。あとは2級程度の岩登りに終始する。ザイルが50メートル一杯に延びたところでコール。アンカーに出来そうな岩の突起がたくさんある。

<頂上でポーズ。山さんが撮ってくれた>
 これで岩登りはおしまい。あとは適当に岩を這い上がり、赤岳のてっぺんに出る。結局、取り付きから1時間半もかからんかった。後続の5〜6人パーティーは、やっとリッジにたどり着いたところだった。あんな強烈に遅いパーティーに先行されたら大変なことになっていた。よかったよかった。
 赤岳の頂上では、絶景を長めながら黙々と行動食を口にした。やれやれ、なんとか我が脆弱な気管はもったようだ。これなら滝谷に入れるかな、とひとりごちた。いつになく長い休止だった。

 下りは文三郎道である。石碑までくると、なんと5〜6人パーティーの最後尾はまだ我々が取り付いたところにいた。大変だねえ〜、なんて言いながら、我々は暖かい温泉目指して駆け下る。いつもながら、下りは早い。まるでコソドロが必死こいてお巡りさんから逃げているようだ。

 さてさて、いよいよ年末山行である。






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