バイオノートブックに新シリーズ「NV」が加わった。新シリーズはVX、Uに続き、今年3番目になるこのNV。10シリーズ目となるNVの情報はこれまでまったく無かったので、どんなノートか想像も付かなかった。Sonyfanからの前情報では、「大型のバイオノート」という。大型といえば、GRやFXがある。・・・どう変わるのだろう? それはやはり「百聞は一見に如かず」。さっそくハコを開けレポートしてみよう。


■1st Impression--- これは本当にバイオノートなのか!?

ハコを開けてみると、バイオノートNVは「大きい」「重い」という割に華奢な感じがした。NVもさほど大きくないのかも知れないと思わせた。だが、NV本体を取り出した瞬間、それは勘違いであることが分かった…。

「こ、これは一体!?」というのが第一印象。それは、NECのLaVieや富士通のBIBLOのA4オールインワンそっくり。バイオらしくないその顔とどう接したらよいか分からず、ひたすらあちらこちら触りまくるか・・・。更にハコの中には、4つの「エンターテインメントベイ」のセットが入っていた。ということは、この機種は店頭発売でいうPCG-NV99M/BP! ベイユニットが全部付いて、Wi-Fi内蔵、SXGA+ディスプレイ、HDも40GBの最強マシン。このスペックから見て分かるように、NVは現在発売中のノートブックの中でもトップクラスだ。
机に置いてみると、やはり存在感バッチリだった。サイズは、約幅336×高さ42.8(最厚部53.3)×奥行276.1mmで、ウェイトセーバー以外のベイユニットを内蔵すると、重量は3.7kg以上。厚さはバイオノートでNo.1。サイズ・重量とも同じ3スピンドル機のFXより上で、最新のバイオノートGR、PCG-GRX辺りと同等のボディを持っている。CD-RW/DVD-ROM一体型ドライブとエンターテインメントベイがある右側を見れば分かるが、最厚部53.3mmは相当な厚み。ココだけ見るとGRを超えた感さえある。

全体的には、FXをベースに、QRの幾つかの特徴を備え、GRに迫ったという感じだ。バイオノートの粋が集まっていると言える。だが、このように総合的に使えるマシンになったのは、ある意味でバイオらしくない感じがするのは否めない。ビジネスなのかパーソナルなのかもはっきりしない。用意されたベイユニットの一貫性も見受けられない。もうひとつ言うと、逆にバイオノートには無かったマシンでもある。そう考えれば、バイオブランドで買うLaVie、BIBLO。これは実に新しい!


■Details --- やっぱりバイオノートだ!!

さて、バイオノートNVをじっくり見ていこう。

基本的には、俗に言うA4オールインワンノート。40GB HDとCD-RW/DVD-ROM一体型ドライブ、エンターテインメントベイを含め3スピンドル機だ。CPUはモバイルPentium 4 - M 1.6GHzで、Windows XP Home Editionもサクサク動く。ディスプレイは、15インチSXGA+(1400×1050)表示。XGA(1024×768)と比べ約2倍の情報量だ。グラフィックは、PCG-GRXで採用されているATI MOBILITY RADEON 7500の16Mタイプ。PCG-GRXでは32Mを積んでいるが、16Mでも外部ディスプレイにUXGA(1600×1200)で32bitフルカラー表示可能。DVD再生やビジネス用途のオフィスソフトなど実際の使用にはまったく問題無い。フラッグシップとされるPCG-GRXとの差を敢えて言うなら、モバイルPentium 4 - M 1.8GHzのCPU、グラフィックメモリー32Mと16インチクラスUXGA液晶ディスプレイくらいしか思いつかない。その他、HDやRAM、光ドライブといった部分については、現在の最高峰と言える。

・エンターテインメントベイ

NVの特徴と言えば、やはりエンターテインメントベイだ。ベイ方式による機能拡張は、FXでも採用されているし、GRの先代に当たるバイオノートXRにも「マルチパーパスベイ」というのがあった。XRのマルチパーパスベイでは、CD-ROMドライブを外して他のベイユニットを装着する機構になっていた。つまり他のベイユニットを使っているとCD-ROMドライブが使えないわけだ。装着可能なベイユニットは、増設HD、FDといったところ。他社製品を見回して見ても、あとはバッテリーくらいしか選べるベイユニットが無い。折角取り替えられるベイを持っているのに、これでは固定のドライブに等しい。

これまでのベイに比べ、NVのエンターテインメントベイはまるで違う。


FD ベイユニット

Net MDベイユニット

コンパクトウーファーベイユニット

ウェイトセーバーユニット
まず、ベイユニットの豊富さ、バラエティに富んだラインナップに驚く。FD、Net MD、10キー、コンパクトウーファー…。ひとつひとつは脈絡も無いが、特にNet MDとコンパクトウーファーは目を引く。エンターテインメントベイというネーミングもこの辺りから来ているようだ。

コンパクトウーファーベイユニットは、サウンド面で実力を発揮する。ウーファーとは低音域を担当するスピーカーのようなもの。音に迫力を与えることができる。このベイユニットでは、バスレフレックス方式のサブウーファーユニットを搭載。視聴してみたが効果は絶大だった。わざとNVの内蔵スピーカーがこのウーファーのために低音域が出ないようにチューンしてあるように聴こえるほどだ。ウーファーを付けない時のサウンドが余りにも情けない。DVDビデオやゲーム以外でも常時取り付けておきたい感じ。

Net MDベイユニットは、Sonic Stageを使って音楽をMDに録音・再生するもの。録音したMDは、一般のポータブルMDプレーヤーなどで再生可能だ。4倍録音モードなら最大約320分ものステレオ録音が可能になる(長時間モードに対応した音楽の再生にはMDLP対応MDプレーヤーが必要)。NVとMD間の転送スピードも最大32倍速(66kbpsの場合)。ミュージックサーバーの異名を取るデスクトップ、バイオMXとまったく同じ環境がバイオノートNVでできてしまうわけだ。

10キーベイユニットは、その名の通り数字の入力をサポートするもの。計算記号やカーソルにもなり、通常右端に配置されているデスクトップ用の10キー同等の機能を持つ。キーピッチは、NVと同じ約19mm。ワークシートなどのオフィス用ソフトで活用できる。FXをベースに作られているNVならではと言えるベイユニットだ。10キーは、これまでUSBなどに接続して使うものはあっても、こういったベイユニットに接続するタイプは初めてだろう。使わない時に隠しておけて、スッと引き出せるところは「変身」というネーミングがとても似合う。引き出すと、自動で足が立つのでキー入力時にガクガクすることも無い(ひとつ苦言を呈するなら、足が1点でなく2点だと更に安定したかも知れない)。10キーが出てくる感じが、ノキアの携帯電話を想像してしまった。取り出し方はアナログだが、スタイルとしてはベイユニットの中で一番カッコいい。

ベイユニットではないが、エンターテインメントベイに挿せるウェイトセーバーはちょっと変わっている。名刺とメモリースティックが入れられ、ビジネス&バイオを大いに強く押し出しているのがうかがえる。これも10キーベイユニットのようなカッコよさがあるのだ。

さて、これらのエンターテインメントベイをどういう風に使うとよいのだろう? 広いユーザーを対象にしているため、バラエティに富んだベイユニットが用意されている。例えばだが、シーン別に使い方を考えてみよう。

通常は、コンパクトウーファーベイユニットを装着しておくといいだろう。オンラインミュージック/DVD/ゲームなどをするときだけでなく、ウィンドウズやソフトのサウンドもこれまでと違う奥行きを感じるだろう。更にサウンドを極めたいなら、別売のアクティブスピーカーシステム「PCGA-SP1」がイイ。デザインもNVとマッチしていて、一緒に使うとよく似合う。アンプは3W+3Wで内蔵スピーカーの比でなく、サラウンドスイッチにより臨場感溢れるバーチャルサラウンドが楽しめる。

オフィスワークには、やはり10キーベイユニット。数字キーをスピーディに入力できる。また、データ交換、ソフトのインストールなどにFDを使うときにはFDベイユニット。音楽を外に持ち出したい時はNet MDベイユニット。

以上のような使い方をすれば、用意されたベイユニットを思う存分使うことができると思う。また、「Net MDベイユニットとコンパクトウーファーベイユニットが同時に使えないのは不便!MDに録音された音楽をウーファーからどうして出せないのだろう?」…という情報が他のサイトや雑誌などに掲載されているが、Net MDベイユニットが何のためにあるのかを考えてみればそのナゾが解けるはずだ。つまり、Net MDベイユニットはパソコンに保存された音楽データを転送(チェックイン/チェックアウト)するためにある。MDを聴くためにあるだけではない。そもそもMDに録音する前にパソコンに音楽が入っているから、再生はパソコン上の音楽からすればよいのだ。そうすれば、Net MDベイユニットを外して、コンパクトウーファーベイユニットを装着し、快適な音楽の環境が出来上がるわけだ。

エンターテインメントベイはとてもいい機能だが、取り外しに少し不便さを感じた。内部的にUSB1.1で接続されておりホットスワップに対応しているので、電源が入っている状態でも取り付け/取り外しができる。取り付けて2秒もしないうちにすぐ認識するのは○。だが、取り外しのスイッチであるRELEASEレバーが底面にあるせいで、少々ヤッカイだ。例えば、320gあるNet MDベイユニットを取り外す場合、NV本体と合わせると4kgもの重さになる。やはり置いたままの状態で取り付け/取り外しはキツイ。電源ONでも液晶ディスプレイを閉じ、ひっくり返して交換するのが自然といえば自然かも知れない。


・エンターテインメントベイへの期待

NVを使用していてコレが欲しいというものがある。

NVはホーム/オフィスを問わない、これでもかというほどの足し算のノートブックだ。欲しいものリストのNo.1を選ぶなら、何といってもGiga Pocket & TVチューナーベイユニット! これがあれば最強なのだが…。TVチューナーが利用できるバイオノートブックは、PCG-C1MSX、PCG-GRX81G/Pの2機種しか無い。是非発売して欲しいベイユニットだ。また、TVチューナー以外にも更なるオプション発売に期待したい。


・HELPボタンとWIRELESS LAN

キーボード奥側、内蔵スピーカーの右に3つのボタン。

左からWIRELESS LANスイッチ、HELPボタン、電源ボタン。 右端がWIRELESS LANランプ。

その右端の電源ボタンの左にHELPボタンがある。これのボタンを押すと「ヘルプとサポートセンター」が起動し、NVを使う上で大切な情報を入手できる。ビジネス/ビギナーに対する安心感を演出しているようだ。NVには、A4サイズの2色刷りの取扱説明書が付属したり音量調整ダイヤルがあったり、随所に親切なサービスや機能がある。バイオはパソコン市場の中でも確固たる地位を築き、より広いユーザー層を見越してのことと思われる。
HELPボタンの左にはWIRELESS LANスイッチ。ONにすると、WIRELESS LANのアクセスポイントを探すために電波を出して、ワイヤレスで通信可能になる。NV前面のメモリースティックスロット横にあるWIRELESS LANランプも緑色に点灯し、ディスプレイを閉じていてもすぐ分かる。NVに搭載されたWIRELESS LANは、SRやVXなどに搭載されているものと同じIEEE802.11b準拠のもの。最大11Mbpsの通信が可能な規格だが、実際には3Mbps前後の環境になることが多いだろう。ADSLによるインターネットなら十分な速度。そして、WIRELESS LANがNVに搭載されたことは、とても意味深い。以前のWIRELESS LAN搭載マシンは、C1、SR、505、VXといった持ち歩ける携帯型ノートだった。バイオのワイヤレスネットワーク化が、NVのような普段あまり持ち歩かない環境にも及んでいるのが分かる。


・バッテリー

バッテリーの持ちについては、3スピンドル機なのであまり評価に値しない。もし、ACだけの使用なら440gあるバッテリーを外してしまおう。ただでさえ重いNVなので、少しでも軽くしておく必要がある。その上、バッテリーを入れたままだとバッテリーが消耗してしまうこともある。以前個人所有のノートブックで、ACだけの使用で一度もバッテリーを使ったことが無いのに、知らないうちにバッテリー残時間がゼロになっていたことがあった。注意して使用するようにしたい。


・インターフェイス

外部接続端子は、オールインワンがベースで設計されているのでとても豪華だ。PCカード×2、USB×3、i.LINK、ネットワーク(Ethernet)、モデム、AV OUT、モニタなどデスクトップ同様何でも付いているといっていい。ハイエンドのデスクトップでは、DVD鑑賞用に光デジタルアウトが装備されているマシンがあるが、NVに無いのはこれくらい。つまり、NVはデスクトップ機としての使用にも万全に応えられるマシンでもあるわけだ。


・入力デバイス


タッチパッドとバックボタン付きセンタージョグ
キーボードは、キーピッチ約19mmで安心して使える。最近バイオUを購入して日常的に使っているのだが……というか、あまりに両者が違いすぎていてヘビー級 vs. モスキート級みたいな勝負!?……NVが羨ましい。タッチパッドは、VXテイストを持ち合わせたGRのようなデザイン。タッチパッドのすぐ下にはバックボタン付きセンタージョグも例外なく付いている。ジョグダイヤルツール「ジョグダイヤルナビゲーター」によって、操作やその手順が分かりやすく早くできるようになったことは使っていて楽しい。


■Comparisons & Competitions --- バイオNV vs. ?

さて、このバイオNVは、どういう位置付けなのだろう。購入する時もとても気になるところだ。

では、2スピンドル以上のバイオノート、GR、FX、QRの特徴を見てみよう。

GRは、バイオノートのフラッグシップモデルで、Adobe Premiere 6 LEを付属し、拡張性とクリエイティビティを志向したマシン。現在ベーシックなPCG-GRと更なるハイエンドに向けPCG-GRXに分かれた。PCG-GRは、15インチXGA液晶ディスプレイを搭載。Microsoft Office Personal付属。約幅325×高さ37(最厚部39.8)×奥行269.5mm/約3.3kg(バッテリーパック・CD-RW/DVDドライブ搭載時)。それに対し、PCG-GRXは、16.1インチUXGAを搭載。Giga Pocket LE or LightWave 3D express付属。約幅355×高さ39.8(最厚部44.4)×奥行292mm/約3.8kg(バッテリーパック・CD-RW/DVDドライブ搭載時)。このように、バイオノートGRは、大きさ/付属ソフト、CPUなども違う別々のターゲット向けに大きくシフトしている。

FXは、ビジネス向け3スピンドル低価格マシン。ディスプレイは、NVと同じラインナップを持ち15インチのSXGA+とXGAから選べる。Microsoft Office Personal付属。約幅324×高38.5(最厚部54.1)×奥行265.5mm/約3.1kg(バッテリーパック搭載時)。良くも悪くもエンターテインメントの無いNVというイメージ。

QRは、Gen-OnというVJスタイルな音楽ソフトを搭載し、2W+2Wのスピーカーを付属。音楽に特化したバイオ。ディスプレイは、13.3インチXGA。Microsoft Office Personal付属。約幅322(464)×高52(62.6)×奥行256.5mm※( )内はスピーカー装着時。/約2.7kg(バッテリーパック搭載時)。

NVは、NVは、FX、GR、QRの「いいとこ取り」で、そして1スピンドル機しか持っていなかったWIRELESS LAN機能も取り込んだ。基本性能ではPCG-GRより上のPCG-GRXのすぐ下に来るNo.2バイオノートの位置付け。FXの持つビギナー/ビジネススタンダードをベースに、エンターテインメントをハイエンドに志向したマシン。そのために、エンターテインメントベイを搭載し、QRだけに搭載されていたGen-Onやオンラインゲームで有名な「ファンタシースターオンライン」さえもバンドルした。これだけソフトのインストールベース/バンドルが多いのは無かっただろう。足し算的ではあるが、お得感十分! エンターテインメントベイを付けたことにより、拡張性についてもバイオノートGRやデスクトップにも譲らないほど優秀。今回レポートに使用したPCG-NV99M/BPなら、4ベイユニット、Wi-Fi内蔵、SXGA+液晶ディスプレイ、Microsoft Office Personal…これで30万円を切る価格。これはオドロキだ!

余談だが、アメリカでもすでにNVの販売情報が出ている。USAモデルでは、CPUがモバイルPentium 4 - M 1.6GHzの上の1.7GHzだったり、日本ではバイオノートGRにしか付いていないAdobe Premiere LEやAdobe Photoshop Elementがあったり、音楽関係のソフトではAcid/Sound Forgeがインストールされていることにもビックリした。AcidとSound Forge共に個人所有しているソフトだが、両方で数万円するのでNVに付属とはとても羨ましい。


■Variations --- どれを選ぶ?

この新しいバイオノートNVには、3つのラインナップが用意されている。オススメは、何と言ってもPCG-NV99M/BPだ。コンパクトウーファーとSXGA+搭載は、この機種しかないので絶対コレ。Sony Styleで購入するなら、選択肢が広がるので更にイイ。Microsoft OfficeをPersonalからProfessionalに変更したり、512MBにRAM増設したり、これを機に「未知との遭遇」や「ブリジット・ジョーンズの日記」といったDVDビデオソフトを購入したりするのもいいだろう。前述したが、アクティブスピーカーシステム「PCGA-SP1」は凄くイイ。どんな時もサラウンドスイッチを付けてしまいそうになる。この心地よさを一度覚えるとやみつきになるかも。


◆製品情報→ http://www.sony.jp/products/Consumer/PCOM/PCG-NV99M/
◆PC Watch→ http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/2002/0513/sony1.htm

(2002年5月23日)
(Text by Eugene Mollino: Courtesy of BITCABARET)

[ 森野 憂人 ]
テクノキュレーター。デジタルもの、特に「液晶」「ボタン」「電池駆動」に目がない。携帯七つ道具「ウォークマン」「ゲームボーイ」「携帯電話」「デジカメ」「クリエ」「バイオU」「ハンディGPS」を携え、日夜フィールドワーク中。


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