水文学は地球惑星科学として重要なだけでなく、水は我々の体を構成する
物質の中でも、最も量的に多いものの一つであり、かつその水は絶えず入れ 替わっている。したがって我々は外界から常に水を新たに口にしなければなら ない。きれいな水でなければ困るわけである。また様々な人間の活動、たとえ ば農業活動、工業活動にも水は不可欠であり、それなりの量と質が要求され る。
水は地球上で、また流域の循環系の中で、繰り返し利用されるのものであ
る。上流で廃水として排出された水が下流で再利用される・・・、希釈と自浄作 用を受けたとしても下流側では水質の悪化が生じることが多い。
水が少ないと人間の生産活動や生存に非常に困ることになるので、河川水
を利用するためにダムを造ることがある。一方、水は多くても困るものであり、 洪水による被害は各地で起こり、そのためにダムを造ることも行われてきた。 「水は多くても少なくても困るもの」という厄介な存在なのである。
もともとあった地球上の水循環、水文循環系の中の、流れのプロセスに手を
加えて生きているのが「人間の生き様」である。その過程で、水の自然の流れ を変えること、例えばダムを造ること、流路を変更することなどが行われてき た。それらは人間の体に例えれば、バイパス手術のようなものである。そのよ うな手当てはやり方によっては、よい結果もでようが、時には悪い面も出てこな いとは限らない。
地球上の自然システムに手を加えるのであれば、水の循環システムと、その
改変に伴う影響をきちんと把握しておかなければならない。人間活動に適した 環境を作るべく手を加えるにしても、それは最小限にとどめ、合理性のあるシ ステムとして再構築されるべきものである。
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