Live History #04 1979
MAGIC I

● Outtakes


 本ライブは、FM東京が“夏の特別番組Big Summer Sounds79 というタイトルで、国内外のアーティストのライブの一つとして、放送したものである。 放送時期は確認されていないが、”Summer”と題してること、7月27日のライブを収録していることから、8月中の放送と考えられる。 司会は小林克也氏であり、氏の解説も収録している。 またライブ演奏以外にも、時々挟まれるMCや、途中の奈良橋陽子のインタビューなど、聴きどころの多い放送であった。

 公式盤ライブアルバム
『Magic Capsule』発売前に、同アルバムの音源の一部である1979年4月26日の群馬県民会館及び1979年7月27日の大宮市民会館でのライブが放送された。内容は、これぞ『Magic Capsule』の元音源と呼べるもので、そこ
に収録されたものが、かなり含まれていると断言していいだろう(なにしろ『Magic Capsule』 に残ったのと同じミストーンが入っていたりするからだ)。 

 「キタキツネ物語」をきっかけにゴダイゴ・ファンになった人、ドラマ「西遊記」でとりことなった人、映画「マジックカプセル」で打ちのめされた人など、ファンになったきっかけは様々であろうが、いずれも『Magic Capsule』はファンとなった比較的初期に聞き込んだアルバムであり、その収録曲への愛着も深い。 この放送は、その公式盤よりも、より生々しく当時のライブの模様を伝えてくれるものであり、文句なく身体が反応し、一緒に歌わずにはいられなくなる演奏内容である。

 番組の中では、どの曲が4月の群馬で、どこからが7月の大宮かということは語られていない。 個々の演奏についての詳細は後述するが、「Suite: Genesis」から始まるライブは春の”Celebrationツアー”だったことから、番組冒頭から数曲はおそらく4月の群馬のものであろう。

 番組中盤の曲についても、「Progress and Harmony」から「Where’ll We Go from Now」という構成は、同年の静岡のライブ(「ゴダイゴ・オン・ステージ」5月1日)でも確認されていることから、時期的に4月の群馬と推測される。 '79年夏以降のライブでは、「Where'll We Go from Now」は、「Joy」との組み合わせで演奏されていたことが確認されているし、「Progress and Harmony」も、その後「The Dragon's Come Alive」〜「Lighting Man」の流れで演奏されていた。 このことからも、中盤の曲も4月の群馬という線が濃厚である。

 EPの発売時期からみて「The Galaxy Express 999」は、7月の大宮であろう。 この曲が発売スケジュールの締め切り間際の数時間でタケカワが曲を書き上げたというのは有名なエピソードである。 4月の群馬ではまだ曲として完成した形ではなかっただろう。 上記の、5月1日の静岡のライブでも「999」は演奏されているが、日本語がまだ充てられていないことからも、日本語で歌うこの演奏は4月の群馬ではないと推測される。
 中盤の曲に決定的な確証の持てないものも存在するが、「999」以降の演奏が7月の大宮、それ以前が4月の群馬と考えられる。 以上の、曲構成も意識しながら、各曲の演奏をみていきたい。
 なお、演奏時期の考察に関してはスタジオーGの高崎勇輝氏にも貴重な助言を頂いた。


 
『Magic Capsule』 では、ライブ音源に対する加工が派手になされている(加工の詳細は個々に述べる)が、ここでは加工前の、まさに生の演奏が聴ける。 『Magic Capsule』のRaw material、その素材の良さ(?)を、とくとご堪能あれ。


● Suite:GENESIS



 1曲目はSuite: Genesis」

 これはまさに公式音源に使われた“元”の音源。 冒頭ナレーションの最後の言葉の聞こえなさ加減まで公式盤そっくりである。

 後年、ミッキー吉野のHPで明らかになった、このナレーション。 ファンの間ではジョニー野村か、スティーブか、と諸説ささやかれていたが、正体はMr.SLIMカンパニー主催の深水龍作氏によるナレーションとのこと。

 
Mr.SLIMカンパニーとは1975年に深水龍作氏の弟・三章氏が旗揚げした”ロックンロール・ミュージカル集団”。 俳優の布施博がそこの出身であることは有名な話。 ミュージカルの音楽に関して、ゴダイゴもからんでおり、アルバム『ミスター・スリム』には、ジョニー野村がプロデューサーとしてクレジットされている。 「ハリケーン青田」という曲では、深水龍作の詞にタケカワがゴキゲンなロックンロールの曲を提供している(クレジットは”竹川ユキヒデ”)。 また、浅野氏が「寒がり天使」(B面「天使を憐れむ歌」)というシングルのアレンジャーを務めており、その演奏はタケカワを除くミッキー吉野以下の4人が参加している。 映画の主題歌であるが内容が18禁なので詳細は割愛する(笑) ミスタースリムカンパニーのHPはこちら

 Creation」

 タケカワの歌が始まった瞬間の会場の盛り上がりが公式盤より大きく聞え、グッと気分が高揚してくる。
 
ホーンが 『Magic Capsule』 よりたくさん入っている。 いちばん耳をひくのは、ミュートされたトランペットで奏でられるトリル風ロングトーンと、後半でベースとユニゾンで入っているトロンボーン。 邪魔と判断されたのであろう、どちらも公式盤ではカットされているが正解と言える。 もっとも、『Magic Capsule』 に慣れすぎたせいでそう感じるのかもしれない。
 しかしそんなことより、"light"、"plight" と音を延ばす部分で、スティーブの低音ボーカルが小さいのがいちばん寂しい。

 「Creation」から「Queen
s Song」、 浅野氏のギターが大きく聞える。 ライブを通してミッキーのピアノと浅野氏のギターが前面に出ている。 ミッキーの派手にフェイザーをかけたCP70がなんともサイケデリックしていて、70's を感じさせてくれてGoodである。

 Queens Song」に入って明らかにスティーブのボーカルが違うことに気づく。 はっきり言って、
ボーカルはメタメタだ。 やはりライブでベースを弾きながらのあの低音ボーカルはかなりの重労働であったのだろう。 スティーブの発声が苦しいばかりでなく、タケも音を探しながら自信なさ気に歌っている。 この演奏を聴くと、元々は全編を通してタケとのツインボーカルだったことが判るが、スティーブとタケで譜割りがズレている。 それが理由ではないだろうが、『Magic Capsule』 では、タケのボーカルが大幅にカットされて、スティーブのボーカルも録り直されていることがわかる(タケのコーラスは“Omnipotent”と“made just for her”の部分だけが重なるようリアレンジされている。 “Cause shes the women”の後のYes, She isも、このライブではタケが歌っている)。 しかしこの演奏の出来から察するに、直前にアレンジが変更されたのではないかという気がする。 ホーンズのアレンジと演奏もいまいちだ。

 Lovers Lament」
 
これは 『Magic Capsule』 での加工度が少ないことがわかる。 もしかしたらリードボーカルもそのままか、と一瞬思うが、よく聴くと "if my life" のところが違っている。 
 しかしタケは器用だ。 これだけ似たボーカルを日をおいて再現できるのだから。 この器用さは、レコーディングにおけるダブルトラックでタケ独特の感触を醸し出す要因にもなっている。 ダブルトラックを発明した(かどうかは自信ないが、少なくも世に広めた人である)John Lenon には、この器用さはなかった。

 公式盤と違って“Sacrificial blues”の上下のハーモニーは聞かれない。 ここもレコーディングで追加されたということが判る。

 更にMother and Son」では、ミッキー、タケ、トミーが交互にリードを受持つ印象的な後半、タケカワのパートの、“warmed the loneliness in my heart”の3度上のハモリが聞えてこない。 ついつい自分で歌ってライブ演奏参加の気分を味わってしまいそうになる。
 
 ミッキーのソロパート(♪It was a rainy day like today 〜)のバックで流れる印象的なフルートが聞えてこないのも、公式盤を聴き慣れた耳には「おや?」と思わせる。

 
演奏については、ーカルを一部録り直している以外は『Magic Capsule』 とほぼ同じだ。 「ほぼ」と断言を避けたが、実は同じに聞こえる。
 
 次のThe Huddle」
 サビにおけるタケの音程が『Magic Capsule』 より3度高いこととコーラスが弱いことに違和感を感じる(もちろん 『Magic Capsule』 に慣れた耳によってである)。 しかしそれ以外は『Magic Capsule』に極めて近い。 中間部のボーカルは録り直していない気がする。 これは逆にちょっとした驚きである。 公式盤より“Shake,Shake,Shake”のコーラスは生々しい迫力があるくらいである。

 
 次のBuddhas Song」では、浅野氏のギターのアルペジオがよく聞えてくる。 また、公式盤ではほとんど聞えてこない、サビの部分でのホーンズの旋律が聴き取れる。 このライブと公式盤を聴き較べて判ることのひとつに、ゴダイゴホーンズのアレンジに手が加えられていることも挙げられる。

 公式盤『Magic Capsule』の素材となった、この「新創世紀」の演奏を聞き較べることで、ゴダイゴのライブ盤に対する姿勢が見えてくる。 ライブとライブ盤の違いについては、別項【コラム】としてまとめた。



● 奈良橋陽子との出会い



 
さて、公式盤ではこの「Suite: Genesis」が終わった後、次の「Dead End」のためのMCが入るが、意外や意外、ここでタケカワは大きな声で「こんばんはー!」と、オープニングトークを初めてしまう。 冒頭いきなり「Suite: Genesis」で始まる、なんと贅沢なライブだったことかと、今更ながらトラウマ世代は思ってしまうのである。

 オープニングMCも、楽しいもので、観客の拍手を終わらせるために即興でトミーやミッキーが音を入れるのが、なんとも粋である。 またタケのMCも、1年前のライブと較べてなんとこなれてきたことか。 場慣れもし、自信もつけ実に堂々としている様子が目に浮かぶ。
 FC会報14号でミッキーが”セレブレーションツァー”の収穫として
 「ゴダイゴとして非常な進歩が見えた事と、お客さんとのコミュニケーションが今までよりも取ることができたという事かな。」
 と発言している。 客との直接的なやりとりだけでなく、その反応を見てステージの構成やアレンジ、セットリスト等に工夫をこらすことが出来たということも含まれると思うが、観客との楽しい問答がこのライブ放送でも収められている。
 
   ”どのメディアでゴダイゴを知ることになったか?”というタケの質問は面白い。 TV?映画?と次々と質問して、拍手でその反応を伺うタケ。 CMでゴダイゴを知ったという拍手に、
 「やっぱり多いなぁ」
 と感心する様子が収められている。

 次に、MCでゴダイゴが映画に出演したエピソードを交えながら「Cherries Were Made for Eating」が紹介される。

 イントロの観客の歓声、手拍子の入り方から、これも公式盤に採用された“元”音源のようである。 うれしいことに、公式盤で差し替えられる前のタケカワのボーカルを聴くことが出来、明らかに歌い回しが違う箇所がある。 どちらが良いかというのは主観的な話であるが、公式盤の方は、やはり臨場感に欠けるというか、きわめてスマートな歌い方である。 このライブの方が、ノリがいいというか、やんちゃな歌い方をしている。

 そして、なにより驚かされるのは頭の”As sure as”から入るバックのコーラス。 公式盤でコーラスが追加されるのは判るが、この曲では、公式盤では聞えないコーラスが聞える。 しかも、この声の主は誰だろう。 もちろんスティーブの低音コーラスは公式盤同様に聞える。 トミーでもない。 ミッキーか? ひょっとして、これは浅野氏かもしれない。  “By nobody else but me”のところでも、この生の声のコーラスは聞かれる。 
近年ゴダイゴのコピーバンドBUDDYのライブに飛び入りしたミッキー吉野は、その時、ごく自然にコーラスをとっていたので、当時も浅野氏だけでなく、みんなで歌っていたのかもしれない。 それくらい厚みのあるコーラスであり、実に楽しげな演奏である。

 次は公式盤と同じ曲順でSteppin into Your World」

 これも曲順と観声から、公式音源の“元”ネタと推測する。 『Magic Monkey』発売の前後からライブの定番のひとつとなっているこの曲。 『中国后醍醐』の演奏でそのアレンジ(特に最後のボーカルの掛け合い)は完成をみるが、各ライブで様々なアレンジの比較が楽しめる一曲である。

 まず聴いていて驚かされる箇所が“Stepping into your world〜Songoku”のパートに挿入される、ホーンズの演奏である。 ライブ盤『Magic Capsule』でも、もちろん『Magic Monkey』でも聴くことのできない旋律が、タケカワのボーカルのバックに流れている。 どこかで聞き覚えのあるようなメロディ。 強いてあげるなら「Tears」の中で聴かれるような、実に爽やかな旋律である。  これは、さすがにアレンジャー・ミッキーも曲のイメージにそぐわないと判断し、レコーディングの際にカットしたのであろう。

 エンディングに向かって盛り上がる部分、“Ill be travelling with you〜”のバックのコーラスが、このライブの時点では歌われていないことが判る(かすかに聞こえる?)。 逆にこのコーラスが入っていないことで、“Ill be traveling”の掛け合いをタケカワのボーカルと浅野氏のギターでやっているようで、実に興味深い。 公式盤より浅野氏のギターが生き生きとボリュームも大きく聞える。


 ここでMCである。 次の曲は「Dead End〜Love Flowers Prophecy」

 イントロにかぶる観客の嬌声が公式盤と同じであることから、これも公式盤の元音源であろう。 テンポの速いミッキーのピアノソロは、公式盤より野太く聞えてくる。 浅野氏のカッティングを多用したギターも公式盤より印象的だ。 “Mixed up, messed up〜”の部分のコーラスはなく、タケカワのボーカルだけである。 が、ボーカルが差し替えられた様子はなく、これはこのまま公式盤に採用されたということであろう。

 後半のコーラスは、公式盤で聞けるのと同じ。 但しエンディングの派手さは本ライブが断然上である。 公式盤より、3度上のホーンの旋律が耳に残る。

 番組上のMCが入り、小林克也によるゴダイゴの幅広い活躍が紹介される。 イギリスでのアルバムの発売にも話が及び “世界のロック界、音楽界を牛耳ってしまいそうな勢いのゴダイゴ”と語ってくれる。

 続いて、そのワールドワイドな活躍の元になる英語による歌詞に話が及ぶ。 この辺りはさすが『百万人の英語』講師、英語教材『アメリ缶』監修の小林克也だけのことはある。


 さらに、このライブ放送では、奈良橋陽子とタケカワとの出会いのシーンが、陽子自身によるモノローグで紹介されている。 タケカワのデタラメながらも英語詞による、独特のリズム、メロディラインの楽曲に非凡なものを感じたという奈良橋陽子の貴重な証言を聞くことができる。

 タケカワユキヒデがもともと英語の歌でやりたいとう発想で音楽界に入ってきたことは有名な話である。 そしてデタラメであろうとなんだろうと、英語の持つリズム、韻といったものを大切にして曲を作ってきた。 その英語のリズムとタケの持っていたメロディーセンスとの相性が非常に良かったのだと思う。 それまで日本にはなかった、新たな音楽を生み出していったといっても過言ではない。 タケカワと奈良橋陽子との出会いは、まさに日本の音楽界において大きな意味のあるものだったに違いない。

 奈良橋陽子から受け取った英語詞からイメージを膨らませて、素晴らしい曲を生み出してきたタケカワ。 しかし、その感覚は、彼が後天的に会得した感覚であり、日本語での曲作りをやっているうちに、その独特の感性が失われていったような気がしてならない。

 タケカワのメロディには、ひとつの世界観を持ったイメージを与えることが大切なのではないだろうか。 このインタビューでも、そのヒントとなる当時のLP制作の段取りについて、奈良橋陽子が語っている。

 当時のゴダイゴのLPは、言わずと知れたコンセプトアルバムである。 その制作にあたり、ミーティングを重ね、テーマを考え、テーマの流れとしてイメージを捉え、タケカワには1曲1曲ではなく、いっぺんに4、5曲分の詞を渡していたという。 そして、ゴダイゴを含めた全員で、さらにイメージを話し、 「そして彼が作っていく」と。

 タケカワは、そうしたイメージを、曲として表現する才能に非常に優れていたのではなかろうか。

 80年代半ば、タケカワのメロディの良さを奪っていったのではと言われるコンピュータによる作曲に傾倒していた時期も、ミュージカル「Return to Africa」(1986年 Model Production公演)には、素晴らしくバラエティに富んだ楽曲を提供している。  2002年春、その中の1曲が奈良橋陽子の息子である野村祐人のライブでカバーされ(アレンジ、演奏はミッキー吉野だった)、またミュージカルも再演されている。 あるコンセプトを持って創られたタケカワメロディは、十数年の時を経ても色褪せないと再確認させられた瞬間であった

 タケカワ・メロディの復活は、ミュージカルなどの劇伴音楽、あるいは練られたコンセプトアルバムにあるのではないだろうか。 そして、タケカワには、また再び奈良橋陽子などに英語による歌詞を書いてもらい、英語による曲作りの感覚を取り戻してもらいたいというのが、身勝手と言われるだろうが、ファンの願いなのである。



● ヒット曲 オンパレード



 
さて、ライブは後半、今(=当時)のゴダイゴがクローズUPされて行く。

 当時の最新アルバム『Our Decade』(6月25日発売)から、まずは「Progress and Harmony」

 これは公式盤とは別テイク。 歌い出しのテンポも速く、トータル演奏時間も公式盤より10秒ほど短い。 スタジオライブでの演奏(Live History#05 [MAGIC II]収録)より、もちろんアルバム『Our Decade』や武道館ライブのどの演奏よりも、テンポが速く、ライブとして一番ノリのいい演奏といえる。 出だしのアカペラ部分では、スティーブのコーラスより、公式盤ではほとんど聞えない、高音部のトミーのパートがよく聞える。 間奏の浅野氏のギターソロも、公式盤より荒っぽく迫力満点である。


 「Wherell We Go from Now」

 このテイクも公式盤には未収録。 オリジナルと違ってイントロの主旋律パートを浅野氏のギターが奏でている。 なんともノリノリではないか。 当時、大都市以外のライブにはホーンズが同行しなかったため、この手のアレンジが地方公演などでは確認されている。 公式盤のほうにもほぼ同様のフレーズの浅野氏のギターが収録されているが、このライブではややルーズな箇所が聴き取れる。 ソロでディストーションを効かせたものを切り忘れた(あるいは動き回っていて切れなかった)ため、演奏が粗い。 公式盤で小気味よい音を聞かせてくれる間奏後のフレーズを聞き比べるとよく分かる。 基本的にはフレーズは同じである。

 ただ残念なのは、ボーカルがまったく差し替えられ、まるで臨場感のないものになっていること。 しかも、コーラスの声までタケの声ではないか。 これでは、ライブ演奏と思ってこのラジオ放送を聞いているリスナーも肩透かしもいいところ。 もちろん、当時のシングル曲(6月1日発売)だったので、発売前の演奏だっただけに、より完成した状態で聴いて欲しいとの制作サイドの意向も分からないでもないが。 ホーンズも、他の曲での出来と較べると、レコーディングで追加された可能性がある。
 間奏後のサビの部分での浅野氏のギターのバッキングがいいアクセントになっている。 この演奏の救いは浅野氏の個性あふれるギタープレイであろうか。

 番組MCをはさんで「Monkey Magic」

 最初の歓声、拍手の入り方から、また演奏時間(4分35秒)からも公式盤と同音源と思われるが、導入部分の「The Birth of the Odyssey」ではずっと黄色い声が入っている。 公式盤では耳障りということでカットされたのであるろう。
  また、ドラの音の後、トミーの「アチャー!」が聞かれないのは寂しい。 このテイクは、4月26日の群馬県民会館と推測され、79年の春には、まだこのシャウトの演出がなされていなかったのかもしれない(Live History#03【コラム】「モンキー・マジック伝説」参照)。 スティーブのボーカルも、“Monkey Magic”のコーラスも弱い。

 次に公式盤を聞き慣れた体は無意識に「999」の準備をして身構えてしまっているが、トミーのカウントに続いて始まるのはHappiness」である。 これは公式盤と同テイク(タケによるコーラスが追加されてるっぽい)。 次のBeautiful Name」に続く流れも同じである。さらに「Gandhara」とヒット曲が続く。

 さて、お待ちかねのThe Galaxy Express 999」

 銀河鉄道にまつわる、ファンとの掛け合いも楽しいMCに続いて始まる演奏は、公式盤とは別テイク。 1番から英語で飛ばす公式盤と違ってこちらは日本語から。 ここでも浅野氏の軽いギターのカッティングが心地好い。 タケやスティーブのボーカルをはじめとして、ホーンズのパートなども、よく公式音源では差し替えられるが、逆に浅野氏のギターはライブでは実に活き活きしていて聞いていて気持ちがいい。 完成度の高い演奏が常に出来るということであろう。 素晴らしいことだ。

 一方、ボーカルについては、シングル曲ということで、またまた手が施されている。 2番以降のサビの“Journey to the Stars”にはタケカワのボーカルがオーバーダビングされている。

  そして、公式盤と異なる短いイントロで始まるCelebration」

 それにしても、このイントロの短さはなんだろう。 1/2の長さではないか。

 面白いのは間奏で演奏のタイミングがあわない箇所がある。 浅野氏のギターが2拍早く「ジャン」と決めに入りズレてしまうが、ここはホーンズのミス。 もっと言ってしまえば、岸本博が、もうひとつ先の、手拍子とボーカルだけになるパートへ行こうとしたのか、音を伸ばしてしまう。 バンドの常で、間違いが目立たないように、間違ったほうへ合わせようと、トミー、ミッキー、スティーブ、他のホーンズの面々もそちらへ合わせた為、正しい間合いで弾いた浅野氏だけが目立ってしまった。 が、なんとか持ち直す。
 このライブですでに、後年聞きなれた、手拍子、アカペラの定番のアレンジが完成しているのがわかる。

 この「Celebration」が、このライブ(おそらく大宮市民会館)のラストの曲だったのであろう。 いつもの、タケのあさっりと元気な”またね、バイバイ“でメンバーは舞台の袖に。 アンコールの拍手が盛り上がるのをバックに、小林克也に紹介されて「威風堂々 Pomp and Circumstance」が始まる。

 
イントロで、バンドが入ってから歌が始まるまでのホーンズの演奏がかなり不安定。 曲の初っぱなからミッキーのピアノが始まる前の安定した演奏と較べると出来が違いすぎる。 おそらく曲の出だしのホーンズは当時会場でもテープを流していたものと思われる。 公式盤『平和組曲』で聞かれるものとまるで同じプレイだからだ。 バンドとしての演奏が始まるのはミッキーのピアノソロからということになる。
 それから思うと、2000年再々結成での披露してくれた、三管ながらも堂々としたイントロは見事であったと言える。

 静かに始まるタケのボーカルは力みもなく清々しい。
2000年の実に朗々とした力のこもった「威風堂々」も筆舌に尽くし難く素晴らしかったが、当時のタケのさらっと歌い上げる前半部分も、なかなかどうして、いいものである。 同年夏の24時間テレビの深夜ライブで披露された「威風堂々」のタケのボーカルも、すぅっと心に染み込んでくるような静かな歌い出しであった。

  “Dont bother me”の部分はコーラスが聞こえにくく、タケのボーカルのみといった感じ。 逆に“Before the race of man burns out”のパートでは、トミーによる聞き慣れないコーラスがハッキリと聴き取れる。 公式盤のほうの演奏では聞き取れない、あるいは、ないコーラスである(後の「中国ライブ」、TV番組「JamJam‘82」 の演奏では、このコーラスを確認できる)。

 最後のミッキーのピアノが公式盤『平和組曲』とは異なり、若干音が多い。 余韻たっぷりに感情のこもった演奏である。 「中国ライブ」、そして「JamJam82」での「威風堂々」と較べても、どれよりも微妙に長く、感動のエンディングである。



参考資料: 「ゴダイゴ・オン・ステージ」@静岡市民文化会館(日本テレビ 1979年9月29日放送
       EP「寒がり天使」(c/w「天使を憐れむ歌」)日活映画「天使のはらわた」主題歌 Polydor Record K17808
       ■FC会報14号

【コラム】 ライブとライブ盤


Live History #05 [MAGIC II]へ続く



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