Live History #05 1979
MAGIC II
● Magic Capsule in Studio



 Live History#04に続いて、タイトル再び[MAGIC]。 なにしろ空前絶後、前人未到の快進撃を繰り広げた1979年である。 それこそ、ゴダイゴの音楽はレコードはもちろん、TV、ラジオ、映画館、あらゆるメディアから鳴り響いていた。
 出版界でも、音楽誌はもとより、一般誌、アイドル雑誌までが頻繁にグラビア特集を組むほど。 ”『明星』『平凡』までいくとは思わなかった。”と後にミッキー吉野は述懐している。
 今で言う”タイアップ”というマーケティング手法を開拓したのもゴダイゴの功績といえる。 メディア戦略については【コラム】のほうでまとめておく。
 学校では、昼休みの放送のリクエストは毎日「銀河鉄道999」、小学生は音楽の授業で「Beautiful Name」、試験では地理の問題にガンダーラの所在地が出題されたり、英語の試験にもその歌詞が使われた学校もあるとか。 ある種の社会現象とまでいわれた1979年。 それゆえ、この年のゴダイゴのライブ演奏は、それこそ取捨選択に困るほど存在する。


 
 しかし、その中でも貴重なものが、この1979年10月の“ステレオ音楽館”の放送内容。 なにしろ演奏曲目が公式ライブ盤『Magic Capsule』とほとんど同じなのだが、なんとそれのスタジオライブ・バージョンである。 あの黄色い歓声や、めったやたらの名前の連呼に辟易としているファンにとっては、ゴダイゴの音楽そのものにじっくりと耳を傾けることの出来る至高のライブ演奏ではないだろうか。

 たった一人の観客になったつもりで、じっくり彼らのサウンドに浸ってみよう。



● たった一人の観客気分


Magic Capsule」

 公式盤を聞き込んだ身としては、まず前奏の部分で入るべき絶叫、どよめきが無いことに、思わず「むむっ?」と体が条件反射してしまう。 これがスタジオライブであることに、早く慣れないといけない。 拍手を送るにも、歓声を上げるにも自分一人しか観客はいないのだから。
 
 公式盤『Magic Capsule』収録バージョンと較べるとややテンポは遅いが、さほど違和感はない。 冒頭トミーのシンセドラムの音が聞こえないことや、ミッキーのキーボードの音が少ないことが気になる程度だ。
 演奏アレンジは公式盤と同じと言っていいだろう。 ただ”A world of songs 〜”のリフレインが多い ”Reach out〜”に入る前にも、このフレーズのリフレインがあるし、エンディング間際のリフレインも1回多い。 逆に、その直前[C G/B Am|Dm D/F# G]のリフが1回しかないことには最初驚くが、この短縮は正解という気がする。


 スティーブ、トミーのリズムコンビも、終始ライブならではのソウルフルかつグル−ブ感あふれる畳み掛けるようなリズムで、演奏全体を底辺から持ち上げている。

Joy」

 あれ?歓声が入らない。 まだ、公式盤の演奏が身に染み込んでいる(笑)。 
 公式盤よりスティーブのスラッピング奏法が野太く聞こえる。 全体的に重い感じがするのは、公式盤ならホーンズと途中までユニゾンで演奏してる浅野氏のギターが聞こえてこないからか?(あるいは弾いていない?)


Where’ll We Go from Now」

 メドレーでこの「Wher'll We Go from Now」への流れは公式盤と同じ。 スタジオなのでアイコンタクトで済ませたのか、予めきっちりきめていたか、トミーのカウントは聞こえてこない。
 「MAGIC I」と違ってこちらはボーカルの処理がされていないので、生々しいコーラスがそのまま聞こえてくる。 特にサビのミッキーのファルセットが活き活きとしている。
 間奏は、ギターの音は控えめで、ホーンズを前面に押し出している。 間奏後も、浅野氏のスタッカートの効いたフレーズが聞こえてこず、ホーンズが目立つアレンジとなっている。
 公式盤、「MAGIC I」、この「MAGIC II」と聴き較べるとなかなか興味深いものがある。


Cherries Were Made for Eating」
 曲の出だしに「House」のメインテーマのフレーズがピアノで奏でられる。 「MAGIC I」で、映画「House」に出演したエピソードを語ってから演奏に入ったことを思うと、このアレンジがそのMCの代わりということか。 シンプルながら実に雄弁な2小節半だ。
 そして、この曲もなんともホーンズが頑張っていて衝撃のイントロだ。 あの印象的なミッキーのピアノの前奏を覆い隠さんばかりに、勢いよいファンファーレが響き渡る。 歌に入ってからもホーンズのオブリガードが曲全体を彩っていると言っていいだろう。


Steppin’ into Your World」

「Cherries〜」からの流れは公式盤通りで思わずニッコリ。 他のどのライブ演奏でも確認できないが、出だしツインボーカルで始まる。これはミッキーの声だろうか。 スティーブとのツインボーカルとはまた違った風合いがある。 エンディングのボーカル掛け合いはなく、短く終わる。


Lighting Man」

 ミッキーのピアノがイントロを奏でだしたら、さぁ目を閉じて、メロディーに身を委ねよう。 周りの拍手も歓声もない。 そこは、ゴダイゴと自分しかいない至高のステージ。 蝶ネクタイをして、揃いのスーツで決めた5人が目の前にいないだろうか? それは、「Lighting Man」のライブ演奏が唯一映像として放送された「音楽の魔術師」のワン・シーンである(1979年12月30日放送)。 スポットを受け、舞台の階段に腰掛けて歌い出すタケ。 ビデオなんてまだ一般家庭には普及していなかったあの頃。 たった一度見ただけの映像なのに、その後もずっと脳裏に焼き付いて離れなかったというファンも多いのではないだろうか。

 1999年の再結成で、この曲を再び聴けたとき、思わず涙があふれ、自分で驚いてしまった者もいる。 トラウマのひとつひとつをゆっくりと洗い流すかのように、とめどなく涙の雫が頬を伝った。 あふれる涙でぼやけた視界の向こうに20年前の5人の姿が見えたような気がした。 言葉はいらない。 さぁ目を閉じよう。 なにしろまた涙があふれそうだから。

 

● ヒット曲集



 
次に、このライブ演奏は公式盤で言うところの2枚目のB面へ入ってゆく。 もっとも昨今CD世代のファンにとっては、このB面という感覚は判りにくいことと思うが、リアルタイムでゴダイゴを聴いていた我々の世代は、いまだに、あの曲はB面の1曲目、 あのアルバムのA面の最後のあの曲、というような覚え方をしている。 それが身についてしまっているのだから仕方がない。

 近年になって、もっぱらCDでゴダイゴの音源を聴くようになって、徐々にその感覚も薄れつつはあるが、やはりアルバムを通して聴いていると、心の中でレコード盤をひっくり返している自分がいたりしておかしい。 そして、1曲目から通して聴くことが実に似合うドラマティックなアルバムが多かったのもゴダイゴの大きな魅力のひとつだった。 買ってきたアルバムに、初めて針を落とす瞬間の感動は、我々の青春の貴重なひとコマなのである。

 さて、ライブの方は『Our Decade』からの3曲が続けて演奏される。

Progress and Harmony」
「Dragon’s Come Alive」
「Try to Wake up to a Morning」


 どれも目立ったアレンジの差はないようだ。 
 「Progress and Harmony」の最初、ライブでは通常入るキーボードのBbの音が入らないことくらいか(おそらく放送前にタケは音をもらって確認してから歌いだしたのであろう)。 テンポは「MAGIC I」や公式ライブ盤と較べてややゆっくり。やはり観客がいないと微妙に落ち着いた演奏になるものだろうか。

 「Try to 〜」は女声コーラスの入らない、間奏がサックスのバージョンだ。 大人っぽい雰囲気が出ている。 最後の“Heart”をタケが感情たっぷりに伸ばしに伸ばして歌っている。

 この曲は、ミッキーがA面にすべきだったと悔やんだ曲である。‘87年のインタビューで(『ロック大系』収録)、「ガンダーラ」から始まるヒット曲のラインナップについて、
 「「ウェアル・ウィー・ゴー・フロム・ナウ」の時に、やっぱり「トライ・トゥ・ウエイク・アップ・トゥ・ア・モーニング」をA面にすべきだった。途中で両A面になったけど遅いんだよね。」
 と、語っている。 確かに、あの全盛期に1曲、心に染みるバラード曲がシングル曲としてヒットしていれば、世間一般に対するゴダイゴのイメージも変わっていたかもしれない。
 ビートルズが10枚目のシングルとして名バラ−ド「Yesterday」を残したように、ゴダイゴも10枚目のシングルをバラードにしていたらどうなっていたか(偶然にも「Where'll We Go from Now」は「僕のサラダガール」から数えて10枚目である!)。 ビートルズが”yesterday”(過去)を歌ったのに対して、ゴダイゴは”new start”(未来)を歌う・・・出来すぎた話ではあるが。 (余談になるが、佐野元春は、まさに「Yesterday」が10枚目だったという理由で、自身の10枚目のシングルを「グッドバイからはじめよう」(1983)というバラード曲にしたことを、自身のアルバムのライナーで述べている。) 


続けてシングル曲集。

Monkey Magic」
 ドラの音から始まる。「The Birth of The Odyssey」なしバージョン。 ライブ演奏では、レコーディングではいつも控えめな浅野氏のギターが爆発している。 特にこの「Monkey Magic」に代表される深いディストーションをかけたソロパートは浅野氏の演奏における最もハードな一面といえる。 基本的にはimprovisationというよりも、計算されて作り上げられた(作曲された)ペンタトニックソロの代名詞的なロックギター奏法であるが、浅野氏ならではの聞きやすく耳に残るメロディアスな演奏には脱帽である。 また、泣きのギターも得意としており(「Portopia」のエンディングソロなど) 、多くのファンが泣かされたに違いない「涙のチョーキング」については、また別ライナーでも語っていきたい。

「Gandhara」
は1番2番とも日本語。 当時の一般的リスナー向けの演奏か。
サビとサビの間の間奏ない短いバージョン。

「Holy and Bright」


 この
Holy and Bright」が、この放送のひとつの目玉である。
 ホーンズによるイントロ。 歌詞は1番日本語2番英語。 歌い方はシングルと変わらない(ちょっと「闇を照らしているよ」が違うが)。 なんといっても目玉は、最後の輪唱コーラス。 こちらのアレンジでシングルをレコーディングしても良かったのではと思わせる見事なコーラスワークだ。 
 ただ、やや遊びが過ぎるというか、よりいっそう子供っぽくなってしまうという印象もないではない。 結構この曲のファンも多いので、ミッキーが”あまり好きじゃない””あれが失敗”と後々語っているのは少し残念である(もっとも”失敗”というのは、アレンジ云々ではなく、シングル曲のラインナップとして考えた場合という意味合いでである)。 歌い方、コーラスワークで、いくつかバージョン違いが存在するのもそのあたりの気持ちの現れなのかもしれない。


「Beautiful Name」

 歌合戦のないバージョン(当然か)。 歌詞は日本語。 最後もあっさり終わる。 

「The Galaxy Express 999」

 ボーカルにひっぱり感はない。 1番日本語、2番英語のライブ基本パターン。 エンディングはあっさり。


Celebration」

この曲も特に大きなアレンジの違いは感じない。 後半間奏、トミーによる掛け声は、西遊記というより、アマゾン原住民チックである。



● もうひとつのスタジオライブ



 観客一人の贅沢なライブもいよいよ終盤戦。 最後に、別の番組であったが、同じく79年放送のスタジオライブを紹介しておく。 「サウンズクリエイション」という番組で放送されたもの。 「Suite:Genesis」と「Where'll We Go from Now」「The Galaxy Express 999」「Try to Wake up to a Morning」が披露されている。 テレビで「Suite:Genesis」が演奏されたのは、この番組以外に確認されていない。 公開録音だったのであろうか。 演奏の最後に拍手が聞こえる。 上記のライブで演っていない「組曲:新創世紀」について若干触れておく。

 「Suite:Genesis」


 イントロ。 公式盤と同様の演奏で始まるが、ナレーションが入らないことが、またしても違和感をかき立てる。 ナレーションがないため、イントロは短い。

Queen’s Song」のスティーブの声は、またも苦しげだが、歌パートの振り分けは公式盤どおり。 やれば出来る?

Mother and Son」 “warmed the loneliness in my heart”のコーラスはやはり無い。 “That was a long long time ago〜”の部分、ベースの響きは重厚に響いてGood。
Buddah’s Song」 間奏から後半、ミッキーのシンセが入る。 普通ならJupitor-4と考えられるが、やや音が太い気がする。 ひょっとしたらこのスタジオセッション用にSH-5を持ち込んだのかもしれない。 そのシンセの演奏が他の曲と較べると、ミッキーのアドリブタッチが目立つ。 
 通してみて、全体的にアレンジは公式盤とほぼ同じである。

 『Magic Capsule』のスタジオ演奏バージョンと言ってもいいライブはこれにて終了。 たった一人で、5人の演奏を独り占めしたわけだから、心の中でおしみない拍手を贈りたい。


 こうして大ブレイクを巻き起こした怒涛の1979年は足早に過ぎ去っていく。 一気に頂点を極め、その勢いのまま時代を駆け抜けようとする彼らを待ち受けているものは!?

 Nineteen Eighty Soon!


参考資料: ■日曜特番「音楽の魔術師ハッピーアイドルゴダイゴのすべて」@日本武道館(TBS 1979年12月30日) 
        ■ 『日本ロック大系1957-1979[下]』(月刊『ON STAGE』特別編集) @白夜書房


【コラム】 ゴダイゴ革命


Live History #06 [CROSSROADS]へ続く



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