EPISODE 10.
暴れん坊坂東太郎の下半身!
第1章 河状係数100!  



「鶴舞う形の群馬県」

 と云えば、群馬県人ならいっせいに四方八方から手が出る『上毛カルタ』。その中で

「利根は坂東一の川」

 と謳われているのが今回我々が挑む利根川である。坂東とは足柄・碓井の坂より東。東国、つまり関東で一番ということだ。全国的に見ても長さにおいて信濃川に次いで二番目である。


残暑厳しい9月でした

 何が一番かというと、先ずは流域面積。千葉は銚子の河口で太平洋に注ぐまでに湯桧曽、赤谷、薄根、片品、吾妻、烏、渡良瀬、鬼怒、小貝と多くの川を呑み込み、一都五県に及ぶその流れはまさに日本一。それに流域に一千万もの人々の生活を支えているというのも日本中のどの河川も及ばない。

 そんなことよりも我々カヌーをやる人間にとって注目しなければならない“坂東一”は、その暴れぶりだ。
 別名『坂東太郎』。日本河川の三兄弟といえば『筑紫二郎』の筑後川、『四国三郎』の吉野川、そして『坂東太郎』のこの利根川。いずれも暴れ川として名を馳せる全国有数の大河である。

 その中にあっても長男である、太郎である。太郎月と言えば一月、丹波太郎といえば巨大な入道雲。要するにその暴れン坊ぶりも一番ということなのである。先日も夏の水際の事故を報じる新聞記事で『河状係数』という数字が紹介されていた。渇水時の水量を分母に増水時の水量を割ったものだそうだが、ちなみに

利根川は『河状係数100』。

 つまり増水時には低水時の100倍の水が流れるということだ。海外の大河の河状係数が3〜4か、せいぜい1ケタなのに対して、日本の川の暴れ様を端的に表している数字と言える。


 そんな脅し文句をちりばめた召集礼状Eメールに果敢に反応してきたいつものメンツ。とくに前回の五十嵐川で基礎講習を受けた女性陣が今回も積極的に参加を表明して来た。メットを購入したり、寝袋を揃えるなど、キャンピング体制も整えての参加表明である。激流、岩場と聞いて

「いやー、今回は遠慮してもいいッスか?」

 
と腰の引けていたササヘーも「男の辞退は許さん!」と強引に連れてきた。さらに2日目からながら炭素・鉱産品課のフーリーが初参加することになっている。総勢8名のほぼフルキャパに近い参加人数である。




 

紅葉渓下流部
 初日。水上峡のさらに上流、紅葉峡を少し下ったところをスタート地点と定め出発準備を進める。今回も前回同様、岩場&激流が予想されるのでファルトは無し、ポリ艇4艇にダッキー2艇で臨む。

 夏の終わりのこの時期は雪解け水の豊富な4、5月に較べると2,3メートルは水位が低いのだろう。到るところにゴロタ岩が水中から顔を出しポリ艇で下るにも中々難渋するコースである。

坂東太郎の暴れン坊ぶりが発揮される春先を彼の絶頂期、青年時代とすれば今日の水量はまだまだ子供、小学生程度と言ったところか。

フンドウズ縁(ゆかり)の
分銅ヘルメットを被って

いきなり岩がらみの瀬

 岩にガツンガツンとぶつかりながら流れをこなして行く我々。所々岩がらみの大きな落込みが待ちうけておりスカウティングもせずに下ってゆくとヒヤっとさせられる。


「うわっ、垂直落下!」(^^; (焦るYAJ)

瀞場でしばしの息抜き〜


 ポリ艇男性軍に較べて、ダッキーの女性陣が岩場での引っかかりが多くかなり憔悴している。

 そこで途中、瀬の下見を兼ねて上陸休憩をした川原で艇を交代することに。

 マッツンとまーこがポリ艇に乗ってここから先の流れに挑戦である。ダッキーに較べるとはるかに安定性が悪く沈脱が困難なプレイボート。が、ダッキーの岩場スタックとどちらを取るかということで、ポリ艇に初挑戦と相成った。


(←岩すれすれ、悲鳴連発のマッツン・まーこコンビ)


 瀞場で5分ほど練習して、いきなり本流突入である。しかも直後に岩がらみの落込み。案の定、まーこが撃沈である。まぁ、ちゃんとスプレースカートを外して沈脱出来ただけでも良しとしよう。 


「こら、世話焼いてないやろ、カータ!」(YAJ)

気合は十分のマッツン

 
 その後の鉄橋下の瀬は2人とも無事にクリアしていった。 

 女性にポリ艇を譲った僕とササヘーはダッキー二人艇に乗り込む。確かにスタックは多くなるが、サッと艇を降りて岩をクリアして行けば、それほど苦労もなく下れる。

 安定感も抜群でボヨヨ〜ンとしたお尻の下の感触も悪くはない。久しぶりの二人舵というのも楽しいものだ。



ひとり舵アッサーも頑張る!

怖いもん無しの、ダッキーコンビ!
「よし右行くぞ―!」

「前方、岩―!」

「ヨーシ、リバース!」

 互いに声を掛け合って瀬を乗り越えるなんとも言えない充実感を久々に味わう。オープンデッキなので艇の上での体勢も思いのまま。背中合わせに座ったりして、仮にクルリと反転しても

「ササヘー、舵、頼む―!」

「ラジャ―!」


 と、息もぴったり。後ろ向きに瀬に突入して行くのはちょっと不安だったけど夫唱夫随で見事に次々と瀬をクリアして行った。


 そうこうしているうちに水上のホテル群が前方に見えてくる。本日の最大難関水上峡へいよいよ突入である。水上峡へ向かう手前の長い瀬ではマッツン、アッサー、カータと次々と岩に艇を取られては後ろ向きに瀬に突入の離れ技をそれぞれ披露して行った。
まーこは、ここでも轟沈を喰らわされて悲鳴をあげていた。艇から身を投げ出され、仰向けからうつ伏せ、また仰向けに、好きなように流れに翻弄され、相手が川だからまだいいようなもので、
それこそ強姦シーンを見ているようである。

 そういえば、先般ダッキーに一人乗りしていたマッツンも、どうバランスを崩したか、もんどり打ちつつ足を160度くらいに開脚しながら赤い艇の下、水中へ没していたっけ。


「なんだ、その新体操みたいな沈は―?」

「マツー、見事におっぴろげ沈だぞ―!」

 と、周りに冷かされながらも

「孔雀が羽を広げたようだったでしょ」

 と、本人は必至に弁明に努めていたが、親御さんが見たらさぞかしお嘆きになろうかという轟沈ぶりであった。


「親御さん、お嘆きシーン まーこ編」
ポインタを画像の上へ。
坂東太郎に弄ばれる様が!

 前回の五十嵐川@でのまーこの沈も川底の岩に下から突き上げられながら悲鳴をあげていたし、とてもとても意中の人には見せたくない姿ではなかろうか。

(もう、お嫁に行けなーい!)という心の叫びが聞こえてきそうな轟沈ぶりなのである。

 まーこはここでポリ艇をギブアップ。僕が面倒見てダッキーでタンデムで下ることにする。

 



@五十嵐川・・・ EP9.参照 三段の瀬の2段目での轟沈

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