EPISODE 10.
暴れん坊坂東太郎の下半身!
第3章 At Your Own Risk



 今回このツーリング前に掲げたテーマは「正しい川原キャンプの実践」である。というのも、この夏は不幸な水難事故が起こったからだ。異様に暑かった今年の夏。その一方で集中的な豪雨があり、各地で水難事故が頻発した。我々にとって衝撃的だったのは、やはり玄倉川での事故であろう。川の中州でキャンプをしていた数家族が一夜の集中豪雨によって濁流に呑まれ幼い子供を含む多くの命が奪われた。常日頃流れを遊びのフィールドとし、川原を憩いの場所として川と接してきた我々にとってショッキングであり、他山の石とするにはあまりにも悲惨な悲しむべき出来事であった。


 ニュースでコメントする日本キャンプ協会の方の

「『安全』対策に『万全』はない」

「『自由』には『責任』が伴う」

 といった言葉を謙虚に受け止めて今後の活動の基本姿勢としてゆかねばならないだろう。

 しかし、ここで川原でのアウトドアを自粛したり、最悪なケースとして地方の自治体などから規制が入ることには断固として反対せねばなるまい。そういった外部からの干渉が自然と対峙するキャンパー達の自己判断力を鈍らせ、他人任せの無責任人間を産むことにならないか。危険を察知出来ない人間は、自然を相手に遊ぶなと言うことだ。

 自分の力で自分(を含む同伴の家族など)を守れない者は、せいぜい囲いで被われたキャンプ場で自然を擬似体験していればいい。そうして野趣溢れるフィールドには大人の判断力と価値観を持った真のアウトドアマンが集うことになる。それが一番望ましいことである。
全て At Your Own Risk の精神だ。

 ということで、今回は万全を期して川原から一段高い地点にテントを張り、心のゆとりスペースとしてタ―プも広げる。

 料理は極上牛の肉塊にニンニクを詰め、ローズマリーや粒コショウ、クレイジーソルトで味付け炭火の遠赤外線で焼き上げる。それをメインに数種類のパスタにサラダ、ビールにワイン。滴り落ちる肉汁が食欲をそそる。

 そしてキャンプファイヤを囲んでギターに歌。これぞキャンプの定番を取り揃え、ランタンの光の向こうの漆黒の闇、そして満天の星空を心ゆくまで堪能した。ギターの奏でる想い出の曲に話も弾む。

「カータの初体験、打ち明け話―!」

「えー、あれは16の頃・・・アホー、言わすなぁ!」 

 懐かしのバラードをエンディングにそれぞれテントにもぐりこんでいく。続きは川のせせらぎをBGMに夢の中へ・・・。











 2日目、前日にも増して熱気を孕んだ快晴の1日が明けた。

 8月の下旬は朝夕も涼しくなり、ページを一枚、一枚とめくるように夏の気配が自分の周りから知らず知らずのうちに姿を消していっていた。が、文庫本を読んでいる時、ふと先程読み進んできた箇所を確かめるように2、3ページ戻って読み返すことがある。自然も時々過ぎ去った季節のページを戻すように、その前の季節をリピートすることがある。今日はまさにそんな一日だ。今年の夏が暑かったことを、もう一度思い起こさせるような。

 朝一番、東京を出て来たフーリー選手が合流する。
 何回か前のツーリングから参加表明があったものの、日程が合わず涙を飲んでいた彼だが、今回はいよいよ我慢しきれず一日だけでも参加するとやって来た。経験あるスポーツは水泳。スイマーらしいがっしりとした肩幅、これなら多少の轟沈でもへこたれまい。なにより水に対する順応性があるのが安心できる。

 今日挑む水上利根川の後半戦は諏訪峡という風光明媚な・・・そんなことは我々にはどうでもいい、要は渓谷、結構な激流が待ち受けているということである。また全国でも有数のラフティングポイントでもあり、朝から次々とラフトが運ばれて来て、川原は30隻ほどのラフトボートと百人を越す乗員とインストラクター達で、あっと言う間に埋め尽くされていった。水量の少ない小学生の坂東太郎も上流部と違って、
その下半身は、なかなかの暴れん坊ということだ。

 と、いうこともあり今日この後半戦は女性陣には陸上で待機してもらうこととする。行きたい気持ちもたっぷりだったようだが、
辞退する勇気 を示した女性陣には心より敬意を表したいと思う。それに暴れン坊坂東太郎の下半身に蹂躙されては、いよいよもってお嫁には行けなくなってしまうかもしれないのだ。温泉にでもつかってゆっくりくつろいでいて頂きたい。

 女性3人の見送りを受けて船出する男衆。初心者フーリーはダッキーの一人艇に。ミャータは五十嵐川からのニューパートナー、通称“ニシキゴイ”を乗りこなすべくパドルを振るっている。
 カータが前回ゲットした新艇、ミャータ同様ダガー社のアウトバーストに。黒を基調とした船体から本人は“ブラックファルコン”などと命名していたが、ササヘーと二人で

「虫がひっくり返ったみたいっスね、あの水ン中にいる・・・」


「ゲンゴロウか、ふむ、んじゃ“ゲンゴロウ丸”だな、ありゃ」

 と、こき下ろしていた。

 
 そのササヘーはTOMより拝借してきた“ゴリ・バナナボート”。メットとライジャケもTOMの装備を借りてきており、いっぱしのパドラー風情ではある(相変わらず被り物は似合わないAと噂されているが・・・)。そして私は愛艇“クロスファイヤー”で諏訪峡に挑む。
 

 次々と出発して行くラフティング船団の合間を縫うように我々も進軍して行く。夏の名残りの陽光と弾け飛ぶホワイトウォーターを浴びながら、

いざ挑まん、坂東太郎の下半身!

 


相変わらず被り物は似合わない・・・

Episode6.多摩川で見せた「ミョ-に頭のでかいキャディーさん」は思い出すだけで笑える姿であった。

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