EPISODE 10.
暴れん坊坂東太郎の下半身!
第4章 竜ヶ瀬の「沈」三兄弟



 ラフティングコースだけあって、次々と白波が迫る。いきなり最初の瀬でフーリーが撃沈! 無理もない、到着して1時間も経たない間に着替えて、陸上でパドリングをちょっと教わった直後、もう激流に挑まされているのだから。我々が最初ゆっくり犀川を下って2日目に出会った『杭の瀬』のような瀬をいきなり下らされているようなものだ。日差しは強いが水は冷たい利根川上流。ウェットスーツを着ていないフーリー、これで早起きした眠気も一瞬で吹っ飛んだに違いない。



颯爽と瀬を越えてくるササヘー(画像左)に対し、 果敢に初の瀬に挑むプクちゃん(中央)も、結果はご覧のとおり(上)


 モタモタしてると上流から次々とラフトが下ってくる。さあ先を急ごう。

 ものすごい数のラフトが間断無く下っていくここ諏訪峡。先で一艇がスタックしていると、その後にすぐ5、6艇の数珠繋ぎが出来る。まぁ、我々がフーリー沈でスタックしていても、彼らは行儀良く待機していてくれるのはありがたい。その点は同じ川の流れで遊ぶ者のパドラーズ・スピリッツとでも言うところだろうか。釣り人達とはその譲り合いの精神構造が全く違うのだ。


こんな風に岩から飛び込むのも、また楽しや!

YAJとフーリーのダブル回転飛び込み

 ラフティングツアーがそのゲストに提供している岩からのダイブを一緒に楽しみながら渓谷の奥へ奥へと艇を進めて行く我々。笹笛橋を越え、諏訪大橋が前方に見え、難関“竜ヶ瀬”が迫った来た。


殿軍(しんがり)隊長YAJ
 次々と落ち込みながらの瀬が続くものだから下見が欠かせない諏訪峡。僕は沈を繰り返すフーリーをヘルプしていたので、ニシキゴイ・ミャータに先遣隊をお願いする。

 が、ミャータは流れのまま落ち込みの向こう、何の情報ももたらさないまま先遣隊の責を果たすことなく、消えて行ってしまった。

 仕方がないので、その後をカータ、ササヘーが続く。ラストに行くからとフーリーを先に送り出す。

 艇を進めて落込みの先に竜ヶ瀬の全容を見渡せた時、そこには先頭のミャータをはじめ、カータ、そしてフーリーと、腹を浮かべたカヌーの横、白波に揉まれ流されて行く三人がいた。かろうじて生き残っているのはササヘーのみである。その難所ではラフトもスタックしており、みなが団子状態。うちの三人も含め
”ダンゴ四兄弟”と言った、大笑い爆笑絵巻が繰り広げられていた。

 いったい何が起こったのかといった様相である。
 
(ミャータの視点) (カータの視点) (ササヘーの視点) (フーリ-の視点)
「ほな、見てきまっさ」
・・・って、行ってしもたやないけ、ミャータのヤツ。
しゃーない、次行ってみるかぁ!
うわぁ! ラフトが詰まってる!!
どけて、どけてー!


(ドカン!ボヨヨン、ゴボガボガボボボボ・・・
んじゃ、オレも行くか・・・


「・・・・・・」
さ、最悪や〜、ラフトの下敷きや、
「ア〜レ〜・・・・」
あ〜あ、ミャータのアホは、ラフトなんぞに引っかかりおって!
脇をすり抜けていかんか!

「アレ?! うわーー!!」
(ガッツ! ドッカーン!)






うわ、バカ! カータも轟沈じゃねーか?!
どうすんべぇ?!
フーリ-も先に行っていいよ、後続でケアするから」
(by YAJ)

「ほーい」
うわ、流れ速い!
岩に掴まらな・・・
「うわわわわー・・・・・!」




げっ、速いがな、流れ!
うっ、岩ツルツルー!



お、おもろい!
シャッターチャーンス!

・・・・ 最悪ー
フィルム終わってる・・・・
「あれ?あれ?あれ?」
(ドッカーン!)
(フーリ-選手、前の三人とは、まったく無関係に一人撃沈!)
(何とか岸に取り付く)
「ほっ・・・・」


「おっ、ミャータ! 掴まらせてくれー!頼むー!」
「カ、カータ来るな! おまえが掴まったらオレも流される! 来るなー!」


「そ、そんなツレないやんけ〜! あ、あれ、アカン、うわぁ・・・・」




うわぁ、カータ激流にはまってる・・・
ちょっとシャレにならんのとちゃうかぁ〜
YAJさん・・・ どこかな? (背後から響く笑い声)
「ダッハハハハハー!」
(by YAJ)
おいおい、笑ろてるで、あの人・・・・



 と、いうことで私が見た時にはラフトと渾然となって、我がチームの4艇、うち3艇が艇の腹を晒している状態が展開されていたのであった。先頭に「ニシキ鯉太郎」のミャータ、ササヘーの少し先に「ゲンゴロウ二郎」のカータ、その後ろに「初心者プク三郎」のフーリーが仲良くヘルメットだけを水の上に出して流されているのであった。

”竜ヶ瀬の「沈」三兄弟”と呼んであげよう。

流れが蛇行して複雑に川底を削って行く景勝地“竜ヶ瀬”の巨大な岩畳。坂東太郎の隆々とした胸板か腹筋三段筋といったところか。小学生となめていたら、なかなかどうして、昨今の子供の成長の良いこと。大人顔負けの力強さであった。





 竜ヶ瀬を越え、その後も数々の瀬をフーリー選手の粗沈・轟沈を織り交ぜながら下り行く我々。時に諏訪峡の景観に目をやりながら、時にラフトのラダーマン(外人が結構多い)とエールを交歓しながら。

 今回はかなりの難所であるのは明白だ。昨日のマッツン艇をはじめ、今日はカータ艇、ササヘー艇とそれぞれ岩に張りついてのブローチング沈をやっている。

完全に岩に挟まり水没した
カータ・ゲンゴロウ丸
 水量が多ければ人力ではニッチもサッチもゆかず艇を放棄せざるをえない(逆に水が多ければ、それほど岩場でのスタックは無いとも言えるが)。 

 カータの竜ヶ瀬のブローチングもラフトのお兄さんに牽引をヘルプしてもらって、ようやく脱出できたものであった。ホワイトウォーターを攻めるにはそれなりの技量、装備を整えていかねばならないだろうと認識を新たにした出来事であった。

 その後の瀬で轟沈&張り付きから脱出して来たササヘーも

墓場突入寸前のササヘー

「いやー、”カヌーの墓場”ってヤツを見てきましたよ!」

 と、少し冷や汗ものの体験をしつつ流されて来た。いまのところ各難所で1艇、せいぜい2艇の沈で済んでいるのでなんとかバックアップも出来ている。


こんなフーリーの一家離散沈も・・・

主行方不明沈も、みんなでバックアップ

 1年前の我々なら全員が涙ながらに流され続けたことだろう。グレードの高い瀬を攻めるには各人のスキルアップが欠かせないということだ。カヌーの先達の

「装備を云々言う前に、
一番の安全は個々のレベルUPにある」

 という言葉が身に染みる思いである。
 まぁ技術の向上にも努めるが、及ばない点は装備や知識で補ってゆかねばなるまい。我々もそろそろレスキュー講習など機会があれば体験してゆく必要がある。

 
なにしろ「『自由』には『責任』が伴う」のだから。自分の身は自分で守らないと。何事もAt Our Own Riskだ。

 


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