EPISODE11.
ミレニアム開幕、長瀞スプラッシュ!
第2章 ミャータのライフジャケット 


 花園ICで下車。一路国道140号を景勝地長瀞に向け進路をとる。雲はすっかり消えて無くなり、絶好のカヌー日和。 初夏の陽射しを浴び進むほどに濃くなる緑の奥秩父の山並みを縫って進んで行く。

 秩父鉄道が道路脇を並走し始め、左サイド、切り立った崖の下、荒川の清流が見えてきた。長瀞名物の青白い岩畳の河岸に新緑を映した流れが眼下にきらめいている。

高砂橋下流、ゴール地点を確認し(ここは、ライン下りの遊船の終点でもある)、ここに一台、サンタさんの車を置いて、カータ号で上流スタート地点に向かう。

「んじゃ、早速、この地点をインプットして・・・」

 なにかあるとすぐ、カーナビを操作するカータ。

「カータ、この場所くらい覚えられるやろ・・・」

 すっかり機械に遊ばれているカータであった。

 上流、食堂脇の駐車場。カータは3年前、フンドウズとは別にここ長瀞に挑んだことがある。その時の記憶を頼りにスタート地点を決定する。川原までは少し距離があるが、広々とした駐車場があり、準備がしやすい。

 今回は、ポリ艇3艇、それに初心者サンちゃん用にインフレータブルを1艇用意した。初心者といっても、サンちゃんも亀山湖、相模川などで僕と一緒にファルトを漕いだ経験の持ち主。それこそフンドウズと始める前からなので、開始時期としてはこの中じゃ、私の次に古株である。


高砂橋の上から
 降り注ぐ陽光に裸の上半身をジリジリ焼かれながら準備を進める。

「あっ、ライジャケ忘れた!」

 ミャータが叫ぶ。インチキ・かぬラーの我々でも、さすがにライフジャケット無しではツーリングをするわけにはいかない。 幸い近くにカヌーハウスがあったのでレンタルしてくる。
「500円で命を買ったと思えば安いもんですよ」

 その通り。

 ところで、今回行きの車中、ミャータから、会社を辞めるという衝撃発言を聞いた。激動の世相の中、勝ち組に残るため、本年度、弊社も非情のカンパニー制度を敷いた。各カンパニー毎に稼いでもらい、儲からないカンパニーは容赦無く資本を引き上げ、部署ごと閉じてしまうというものだ。そんな最中、将来に不安を感じたミャータの、この度の英断である。会社のありかたも昨今、大きく変わった。会社勤めが、社会の荒波を乗り越えるライフジャケットという発想は今は、ない。

浮力体を膨らますカータ
 500円でライフジャケットはレンタルできるが、これからの自分の身を守ってくれるライフ(=人生)ジャケットは、己の能力、努力だけということだ

 

 ま、せっかく遊びに来たんだから、そんな暗い話は忘れて(能天気な我々)、駐車場から川原に出てみる。

 広々とした岩がちの川原。すこし上流にはたくさんのパドラーが見える。拡声器からは、大音量でファンキーな音楽とDJっぽい語りがガンガン聞こえてくる。なにか、ロデオの大会をやっているようだ。

「さあ、お次は、エントリーナンバーXX、○○選手! 持ち時間は30秒、この間に・・おおーっと、カートが決まったぁ! ・・ 持ちこたえられるか・・・ まだ、10秒あるぞー!」

ロデオをする上手い人

準備をする下手な人たち
 などと、ヤンヤの放送が聞こえる。 ロデオの大会はなかなか派手で面白い。

 目の前には200メートルほど続く瀬が見える。 我々もちょっと上流に戻ってスタートだ。まずはミャータ。
「シーズン開幕で、いきなりここは、キツイっすねぇ〜」

 と言いながら、愛艇ニシキゴイで瀬に挑む。ふらつきながらも、最後の大波をドカンと食らって無事突破である。

 

 ミャータに下流でのレスキューを頼み、初ツーリングの万年サンタ氏、サンちゃんが瀬に挑む。その昔バレーボールでならした巨体に、ひとり乗りダッキーは窮屈なのか、両足を船舷から投げ出しての漕艇である。
 荒瀬を無事突破したものの、油断したのか瀬を抜けてから反転したところで、粗沈をかます。足がなんかに絡まったのか、アップアップしながら流されていった。瀬遊びをしていたロデオ艇に救助してもらって、かなり下流の向こう岸に打ち上げられていった。

続くカータ艇は、瀬の途中で反転してサーフィンにトライする余裕をみせつつ、クリアしていった。 
 



サンタさんが最初に漕いだ瀬
(こりゃキツイわ〜)

 最後にYAJ艇もリズム良く瀬を越えて、下流のサンちゃんの元へ集合。
「もう、死ぬかと思ったわ!楽しくないゾ!」
アップアップと流されるサンタさん

 いきなりの沈に、サンタさんも面食らったようだ。 沈して、カヌーとパドルの両方をケアして流されるのは、慣れていてもなかなか骨の折れる作業なのである。

荒瀬をクリアしてゆく各艇


大波を食らうミャータ

ダッキーをへし折られるサンタさん

サーフィンする余裕を見せるカータ

軽快にして豪快にYAJ

「今日のコースは、この瀬が最大やから、もう、後はのんびりやから、な、カータ!」

「そうそう、後は、もうダイジョーブっスよ!」

 その昔、初心者2回目のツーリングでこの流れを経験したカータが言うのだから、ダイジョーブだろう。

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